[I]「中間貯蔵」施設について ■「候補地点に御坊市は入っていない」(4月28日交渉) 「候補地点に御坊市が入っているかどうかは言えない」(7月14日交渉) 前回4月28日の交渉で関電は、「候補地点は複数あるが、その中に御坊市は含まれていない」と言明した。そこで私たちは、6月11日付質問書で、この発言の確認を求めていた。これに対して関電は、今回の交渉で「立地活動への影響もあるため、中間貯蔵施設の具体的な候補地点に関する事項については回答できない」と、以前の発言を覆し、御坊市が候補地点に入っていないかどうか明確にしないという姿勢に転じた。 また、候補地点を「4地点」とする関電社長のコメント(2001年4月)が、いつの時点で「複数地点」となったのかという質問に対しても、地点数を明らかにしなくなった理由に「他意はない」としながらも、「時期については回答できない」の一点張り。「他意がない」のに、なぜこんな簡単な質問にすら答えることができないのか。 御坊市でおこなわれた市議等主催による中間貯蔵施設についての学習会に講師として呼ばれた関電職員が、その場で「御坊市は計画に入っていない」と説明したのかどうか、質問書では聞いている。これに対して関電は、「立地の計画はないという話をした」上で、中間貯蔵とはどのようなものか、その安全性等、一般的な話をしたのだと答えた。(しかし、実際には、まだ決まってもいない中間貯蔵に対する交付金の話をしていたのである。) 立地計画はないにもかかわらず、候補地点に入っているかどうかについて言えないとは、極めて矛盾した態度である。「候補地点に入っている可能性はある」ということではないのかと追及すると、明確に答えることができない。「候補地点に関しては回答できない」と繰り返すのみである。とにかく、「中間貯蔵」施設の立地に関しては一切答えないという姿勢を頑なに固持した。 「候補地点の中に御坊市は含まれていない」との前回交渉での断言ぶりとは大きな違いである。前回交渉での「御坊市は含まれていない」という発言に対して、御坊市の推進派市議等、現地の誘致派から関電へクレームが入ったに違いない。前回の交渉で「御坊市は含まれていない」と断言した広報室課長が、突然異動となり、今回の交渉には姿を見せなかったのも、そのことが関係しているのかも知れない。 御坊市について、候補地点に入っているかどうかを関電が秘匿する以上、水面下で立地活動が行われていると考えざるを得ない。事実、前回交渉からの態度の豹変ぶりは、「候補地点に含まれていない」という発言が、実際に進められている御坊市での「立地活動へ影響」をもたらしたことを示したものではないか。 ■関電は福井県での立地についても明確に否定しなかった。事実、福井県小浜市では誘致活動が活発化している。 さらに関西電力は、前回交渉では「福井県に建設することはない」と明言していたにもかかわらず、今回の交渉では「福井県外の立地に向けて鋭意取り組んでいる所」と態度を変えた。言外には、県外に立地できない場合には福井県内に立地する場合もありうるという意味が含まれている。事実、福井県小浜市では誘致活動が進められており、このところ、急速に動きが活発化している。先月、小浜市の建設業界は「誘致を表明して積極的な取り組み」を求める陳情書を市議会議長に提出した。さらに自民党小浜支部は「一歩進んだ議論」を要求している。これらの動きを受け、小浜市会は7月18日の全員協議会で、「原子力問題対策委員会」を設置することを決定。中間貯蔵施設誘致の是非等について話し合うとしている。これら急速な誘致活動の活発化に対し、逆の動きも出始めている。小浜物産協会は、「中間貯蔵」施設誘致は「風評被害につなが」るとし、市長と市議会議長あてに慎重な姿勢を取るよう要望書を提出した(7月16日)。 ■関電は、再処理費用や中間貯蔵の費用等、バックエンド費用についての算定と、公金等による資金充当の制度作りを電力業界として進めていることを認めた。 また、2045年までの再処理費用のうち、9兆1千億円分が資金手当の目途がついていないとされる電事連試算についても関電にただした。新聞で報じられた電事連試算では、9兆1千億円の内訳として、中間貯蔵費、MOX燃料の加工費、海外から返還される放射性廃棄物の貯蔵管理費等があげられている。これに対して関電は、「電事連として今回報道されたような内容を発表した事実はなく一切答えられない」と一言断った上で、「バックエンド費用については広く皆さんからいただくということも考えている」と、公金による補填、あるいは電気料金への転嫁等、制度作りを進めていることを公然と認めた。また、「現段階では具体的な金額を申し上げる状況にはない」と留保をつけたが、電力業界としてバックエンド費用についての算定作業を進めているという事実についても認めた。 ■アメリカで大きな問題となっている使用済み核燃料の輸送・貯蔵キャスクの欠陥問題については「一切知らない」。 アメリカでは、使用済み核燃料の輸送と貯蔵に用いられるキャスクの安全性について重大な問題が持ち上がっている。事の発端となったエクセロン社の元検査官の内部告発によれば、すでに5つの州で使用されているホルテック社製のキャスクには、違法な溶接、中性子遮へい材の損傷、品質保証書のねつ造等9つの問題が存在し、長期にわたる保管期間中にキャスクの健全性が保てなくなる危険性があるという。この問題は、関電の「中間貯蔵」計画に直接に波及する。三井造船はホルテック社と契約を結び、PWR向けの中間貯蔵用コンクリートキャスクを製造し、国内向けに販売するとしている。PWRの「中間貯蔵」としては、販売先は関電しか考えられない。 「アメリカでキャスクに重大な欠陥が見つかっているという事実そのものは把握しているのか」と関電に聞くと、関電は「そのような事実は一切知らない」と答えた。また、ホルテック社の技術を導入した三井造船のキャスクを使うのかどうかについても、「まだ何も決まっていないから答えられない」という。まったく無責任きわまりない。アメリカで現実にキャスクに重大な欠陥があると言われており、大きく報道されている。しかも、同じ会社の技術で作られたキャスクを使用するかも知れないのである。関電として、「知らない」ではすまされないはずである。早急に事実関係を調査の上、関電として、米でのキャスク欠陥問題についての見解を明らかにするよう要求した。 [II]関電の劣化ウランの劣化ウラン弾転用疑惑について ■「確認書」とは実は単なる手紙だった。 前回4月28日の交渉および5月20日の電話回答で関電は、アメリカUSEC社との間に関電の劣化ウランが「劣化ウラン弾に使用されていない」旨記載された「確認書」を交わしていると答えてきた。しかし、関電が「確認書」「確認書」と錦の御旗のように連呼してきたものが、実は単なる手紙だったことが、今回の交渉の結果明らかになった。 関電によれば、国から「質問主意書」が出ているという情報提供があったので、確認のためにUSEC社に問い合わせたという。2001年6月に北川れん子衆議院議員が提出した質問主意書のことである。この関電の問い合わせに対して、7月6日付の返答の手紙が、USEC社から郵送されてきたと関電は説明した。つまり、関電が呼んでいた「確認書」とはこの手紙のことだったのである。参加者一同唖然とした。「確認書」とは、通常当事者双方が署名等し、書面の内容を正式に保証するものである。しかし、関電の言う「確認書」とは、単なる手紙に過ぎなかったのである。 関電は、USEC社からの手紙を受領したのは何日かは分からないとしているが、航空便が約3日程度であると考えれば、7月9日に受け取ったことになる。政府答弁書が出たのが7月10日であるから、日程的にはぴたりとくる。 関電は、自社の劣化ウランが兵器に転用されているかどうか、何の関心も持っていなかった。しかし国の指示を受けたため、大慌てでUSEC社に確認をおこなった。返事を受け取ってすぐに政府に送達、これを受け政府が答弁書を出したという構図であろう。 関電の劣化ウランが兵器に転用されていない「保証」は「確認書」とは到底呼べないような、一片の手紙のみ。質問主意書で追及され、取り繕うために大慌てで問い合わせたものに対する返事に過ぎない。経緯からしても極めていい加減なものである。しかも、手紙の内容は非公開である。いくら追及しても、「契約内容に係わるため公開できない」の一点張りである。内容も明らかにできないような一片の手紙のみで、劣化ウラン弾に使われていないことをどうやって信じろというのか。 ■アメリカでの管理については「承知しておらない」。 さらに、劣化ウラン弾に使われていないことが、どのように保証されているのか、USEC社の管理がどのように行われているか確認しているのかと聞いても、「具体的な管理については当社は承知していない」と繰り返すばかりである。 「確認書」は単なる手紙。その上、アメリカでの管理については一切「承知していない」。これでは、関電の劣化ウランが劣化ウラン弾に使われていないための具体的保証は一切ないも同然である。自社の劣化ウランが兵器に転用されている疑惑があるにもかかわらず、関電は頬被りを決め込んでいる。このような関電の無責任極まりない態度に対して、参加者から怒りの声があがった。 [III]炉内計装筒管台および上蓋管台の検査精度について ■ECTの検出性能は向上しているとしながらも、ECTの検出性能は10年前の3mmのまま。 炉内計装筒管台および上蓋管台のECT検査の精度について、今回の交渉でも引き続き追及した。前回4月28日の交渉では、炉内計装筒管台の実機条件でのECTの検出性能については「分からない」ということだったので、まずその点を明らかにするよう、今回の交渉では追及した。その結果、関電は炉内計装筒管台の実機条件での検出性能は「3mm」だと答えた。これは明らかにおかしな回答である。炉内計装筒管台に使用されるプラスポイント型のECTは、10年前に上蓋管台で使われていた従来型のECTよりも高性能なはずである。前回の交渉で関電は、プラスポイント型のECTの検出性能は向上していると何度も繰り返した。それにもかかわらず、プラスポイント型のECTの実機条件での検出性能は、従来型ECTを用いた上蓋での実機条件の検出性能と同じ3mmだというのである。「検出性能が向上したと言いながら、なぜ10年前と同じ3mmなのか」と関電を追及した。関電は、「比較的雑音の少ない所では性能が良いということ」などという、苦し紛れの回答に終始し、まともに答えることができなかった。 今回の交渉の結果、はっきりしたことは、実際のECTの精度がどうであれ、3mm以上でないと「傷」と認めないということである。関電の主張するECTの検出性能は、検査機器の精度から決められたものではなく、恣意的に決められたものなのである。 ■ウォータージェットピーニングで「SCCは問題にならなくなり」「新品以上になった」のであれば、なぜ上蓋を交換する必要があったのか。 炉内計装筒管台は上蓋管台よりも応力が大きいため、上蓋管台よりもSCCが発生しやすい。今回の交渉で関電は、この点について明確に認めた。しかし関電は、ウォータージェットピーニング(WJP)によって、「引っ張り応力が完全に緩和されたのでSCCは問題にならない」のだとの説明を繰り返した。「WJPによってSCC発生までの時間はどれほど延びたのか」と聞くと、ほとんど無限に近いと言う。では、「新品同然になったということか」と聞くと「いや、新品以上だ」と答える。しかし、これは奇妙な答えである。上蓋管台については、SCC対策として7基については上蓋ごと取り替えるというコストも時間もかかる大がかりな措置を取っている。4基については、炉頂部の温度低減化を行うためにノズル径を拡張する工事を実施している。関電が言うようにWJPによって「SCCは問題にならな」くなるのであれば、わざわざ上蓋を交換したり、温度低減化工事を行う必要はなく、よりコストも手間も少なくてすむWJPで十分だったはずである。関電が認めるように、計装筒管台よりも上蓋管台の方が、応力が小さく相対的にSCC発生の条件は緩いのであるから、よりWJPが有効に効くはずである。そこで「WJPで十分ならば、なぜ上蓋を交換する必要があったのか」と追及すると、関電は答えられず押し黙ってしまった。調査の上、回答するとのことである。 WJPは表面の応力を取り除くだけの応急措置に過ぎない。結局、上蓋については交換ができたが、炉底の計装筒管台は取り外すことができないので、WJP以外の措置が取れなかったというのが実相だろう。関電の「WJPによってSCCは問題にならなくなった」という主張は明らかな虚偽であろう。関電の原発は炉底の管台部に、SCC発生の危険性を抱え続けているに違いない。 アメリカの南テキサス1号炉でも炉底の管台部で損傷が見つかっている。炉底管台部でのSCC発生は、原子炉容器そのものの健全性に直結する極めて深刻な事態である。大規模な一次冷却材漏洩から重大事故へと進展する可能性は否定できない。関電は、炉底計装筒管台でのSCC発生の危険性を認め、徹底した検査を即刻実施すべきである。 [IV]プルサーマル計画−年度内のMOX燃料加工契約締結について ■COGEMA社の燃料製造中止の件については一切無視。関電の「品質保証体制の強化・改善」計画は、自分の責任については頬被り。 MOX燃料加工契約問題に差し掛かると、関電は準備していた「プルサーマル推進会議」会議報告のプレス発表文を参加者に配り、「品質保証体制の強化・改善」に向けた社内検討について説明を始めた。配付資料の検討項目には、BNFLの名前はあがっているが、COGEMA社の燃料製造中止の件はどこにもない(※)。 そこで「なぜCOGEMA社について一切書いていないのか」と追及した。要領を得ない返答しか帰ってこない。「関電は悪くない、輸入燃料体検査を通さない国が悪いとでも思っているのではないか」と聞くと、「確かにこの辺ではブーブー言ってたかも知れません」と机の下で手を回す。表面上は国の決定に従ったが、社内的には不満一杯だったというジェスチャーである。 関電としては、COGEMA社のケースについては国が悪いのであって、自らに責任はないと言っているのだ。では、国に責任があるのかというと、「国の決定に不服でも、プルサーマル全体のことを考えればしかたがないということで、国の判断をお受けした」と逃げを打つ。結局、どこにも責任がないことにしてしまっている。しかし関電は現に、COGEMA社に対して60億円もの損害賠償金を支払っている。自分の非を事実でもって認めているのである。 それにもかかわらず、関電は「品質保証体制の強化・改善」の検討において、COGEMA社の件に関しては、事実関係も責任の所在についても、一切無視している。賠償金60億円はすべて電気料金として消費者に転嫁しているにもかかわらず、自社の責任については頬被りしたまま、新たな燃料製造契約を推し進めようとしているのである。まったく許し難い。自らの責任すら明確にできない関電に、責任をもって「品質保証」などできるはずもない。関電は、MOX燃料加工契約もプルサーマル計画も、即刻中止すべきである。 ※:関電は、仏COGEMA社メロックス工場に依頼していたMOX燃料の製造を2001年12月に中止した。表向きの理由は、関電自らが事前監査を行わなかった等の手続き上の問題で経産省の許可が出ないというものだが、実際にはαスポット等燃料の品質問題や関電が違法行為を犯していた疑いがある。この件で関電は、60億円もの損害賠償をCOGEMA社に支払っている。 ■「第三者機関(ロイド社)によるISO9001の観点からの助言」を繰り返す関電。しかし、BNFLもISO9001取得企業。しかも、不正事件の後でもISO9001は剥奪されていない。 さらに関電は、MOX燃料製造契約に向けたスケジュールを以下のように説明した。(1)社内にプルサーマル推進会議を設置し、これまで5回の会議を開催。品質保証体制の強化・改善について検討を進めてきた。(2)その検討結果について今後、第三者機関にISO9001の観点から助言を求める。(3)第三者機関からの確認を得た上で、国・福井県および関係諸機関から承認を得る。(4)さらに地元をはじめとする住民に説明し理解を得る。(5)そして、今年度末に契約を結ぶ。関電によれば、「品質保証体制の強化・改善」に向けた社内検討はほぼ終了し、現在は(2)の「ステップにある」という。 第三者機関とは具体的にどこなのかと聞くと、「英ロイド社の日本法人の方に品質保証体制についてISO9001の観点から助言をいただく予定」と関電は答えた。「ISO9001」「イソ9001」と、あたかも呪文のごとく、唱えれば不正など起こりえないかのように関電は繰り返す。しかし、ISO9001など形式的なものに過ぎない。意図的な不正行為を防ぐことはできない。事実、BNFLもISO9001の取得企業である。しかもBNFLは、MOX燃料データ不正事件の後でもISO9001を剥奪されなかったのである。ISO9001など何の保証にもならないことは明らかだ。「あれだけの不正を働きながら剥奪されないISO9001など何の役に立つというのか」「ロイド社にBNFLのような故意の不正をどうやって見抜けるのか」「不正が起きないという具体的保証はどこにもないではないか」、参加者から次々と追及の声があがる。関電は、「ISO9001は一応、国際的にはきちんと認められた一つの基準ですから」と弱々しく抗弁するだけ。第三者機関であるロイド社については「監査の社会では立派な会社ですから」と繰り返すのみである。 しかし関電は、年度末のMOX燃料燃料加工契約に向け、第三者機関の「助言」、国と福井県への「説明と了解」を行う段階へと、着々と歩を進めようとしている。関電の言う「品質保証体制の強化・改善」など、MOX燃料燃料加工契約に向けたアリバイ的なものに過ぎない。厳しく関電を追及し、MOX燃料加工契約を阻止しよう。 |