本の紹介
新装・新刊『闇に消される原発被曝者』
「原発被曝労働者の問題は古くて新しい問題」
著者:樋口健二 出版:御茶の水書房 2003年5月20日発行 2400円


 真っ赤な防護服に半面マスクの男が、息苦しそうな顔をしてこちらをみつめている。
 御茶の水書房から新刊本として発行された樋口健二氏の『闇に消される原発被曝者』の表紙である。見慣れていたはずのこの写真が、カラー版で本の表紙となると、改めてその迫力に吸い寄せられる。
 この本が三一書房から出版されたのは1981年だった。20年以上の歳月を経て、新装・新刊として発行された。この新刊本では、原発労働によって慢性骨髄性白血病で亡くなった嶋橋伸之さんのお母さんの証言、そして樋口氏が駆けつけた臨界事故翌日の東海村の様子が、新たに付け加えられている。
 新刊の「まえがき」で樋口氏はこう述べている。「私の追及した原発被曝労働者の問題は古くて新しい問題である」。被曝労働の問題は、原発の運転当初からの古い問題であり、そして未だ解決されない新しい問題である。そして、この「古くて新しい問題」は、一般的意味においてだけでなく、今、新たな闘いとして、その姿を現している。
 1977〜1982年の間、福島原発等で被曝労働に従事した長尾さん(大阪在住)が、今年に入って労災認定を申請された。長尾さんは約4年間で70mSvもの被曝を強要された。白血病の労災認定基準の3倍を超える被曝量である。1998年には多発性骨髄腫と診断された。樋口氏は長尾さんのもとを訪れ、新たな闘いを始めた彼の姿を写真等で紹介している(雑誌『自然と人間』6月号参照http://www.n-and-h.co.jp/index.htm)。
 長尾さんが被曝労働に従事したのとちょうど同じ頃、樋口氏は福島原発で働く下請け労働者達の実態を追っていた。それが、『闇に消される原発被曝者』に克明に綴られている。彼の20数年前の仕事が、新たに労災認定を闘う人を勇気づけている。また私達は、福島現地をはじめ全国の反原発団体と協力して、内部告発に端を発した、当時の福島原発でのアルファ汚染・被曝問題を追及している。反原発運動の力を一つにして、長尾さんの労災認定を勝ち取るために、連携しよう。
 闇に消される被曝労働者達の実態を世に問う本書から、今改めて、多くを学びたい。