大飯3・4号再稼働をめぐる政府交渉 質問事項

1.大飯3・4号だけを新規制庁の発足前に動かそうとしていることについて
(1) 大飯3・4号以外は新規制庁が発足してから再稼働について審査すると担当閣僚が述べているが、その場合、他の原発については新たな審査指針に基づいて審査するということか。

(2) 逆に、大飯3・4号は審査指針が事実上存在しない状態で再稼働させることになるのか。

2.大飯3・4号の基準地震動と耐震安全評価について
(1) FoB−FoA−熊川断層が連動した場合、断層モデルの結果は、ある周期の範囲で基準地震動を超えている。安全を確保するためにはそれらを全て包絡するような基準地震動を決め直すべきではないか。

(2) FoB−FoAの2連動の場合でも、関電の出した結果を見ると断層モデルの結果は基準地震動Ss−1(700ガル)を超えている。本来なら、それらの基準地震動を超えた値をすべて包みこむような新たな包絡線を引いて基準地震動を策定し直すべきではないか。

(3) たとえば美浜発電所の場合、2009年3月時点では、耐専スペクトルと断層モデルの双方を包絡するように基準地震動が策定されている。ところが、同年秋には、その基準地震動を超える断層モデルの事例については、それらの事例の一つひとつを基準地震動とする措置がとられている。
 このような方策はいつどこで決められたのか。なぜすべてを包絡するように基準地震動を決め直すようにしないのか。

(4) FoB−FoA−熊川断層が連動した場合の安全評価を行う必要があると保安院は述べている。(a)その安全評価はいつ出るのか。(b)その結果、制御棒の挿入時間が評価基準値2.2秒を超える可能性があるのではないか。その場合、安全評価がなされる前には、大飯3・4号の運転はできないのではないか。(c)以上を確定する前に運転再開をしようとする理由は何か。この確認は、運転が安全に出来るかどうかの判断に必要なのではないか。

3.避難ルートについて
(1) 大飯原発では、原発からの避難道路は1本しかない。多くの町民がこのことを心配している。4月26日の町民説明会の前に行われた柳澤副大臣と町議会議員との意見交換でも、議員からこの問題について、「国の責任ある対応」を求めた。
 これに対して副大臣は、「ルートの複線化を図る道路整備、これも平成24年度で15億円の予算を計上」したと述べた。しかし、15億円は設計調査費で、道路の複線化が完成するのはまだまだ先である。再稼働については少なくとも、避難道路の複線化が完成してから議論するべきではないか。

(2) さらに副大臣は、「更に通信機器だとか防護服だとかそのようなものも国の方で交付金としてきちんと確保していくという取り組みも進めさせていただきたい」と述べた。(a)これらは、いつまでに、どのように具体化するのか。(b)何故運転再開を検討する前にしないのか。

(3) 大飯原発のある大島半島にかかる青戸大橋は、1973年に作られ老朽化が進み、最新の耐震基準を満たしていない。耐震補強工事の予算が今年度つけられ、工事完了までに3年間を要するといわれている。再稼働については少なくとも、橋の補強工事が完成し、耐震安全性が確認されてから議論するべきではないか。そうでないのなら、その理由を説明していただきたい。

(4) (a)大飯原発で事故が起こった場合の避難指示や住民への情報伝達は誰が責任をもつのか。(b)放射能の拡散方向は誰が把握し、どう住民に伝達されるのか。(c)そのような訓練は誰が責任をもって行うのか。政府と自治体とはどのような関係になるのか。

(5) (a)避難の範囲は福井県だけに限られるのか。(b)京都府や滋賀県等も含めた広域的な避難先の確定は誰が責任をもって行うのか。(c)30キロ以内の防災計画が完成する前に何故運転再開するのか。

(6) 大事故が起こった際の避難の範囲や避難先を地元が認識、計画するために必要な放射能拡散の予測についての情報を福井県もおおい町も提供されていない。SPEEDIおよびMACCS2による拡散シミュレーションは誰がいつ行い、どの地域に提供する計画か。

4.原発の停止に伴う雇用や生活の支援・補償について
(1) これまで原発で働いたり、原発関連の施設や宿泊施設等で働いて生活の糧を得ていた人たちの生活は、原発の停止に伴って非常に困難になっている。私たち市民団体が行った戸別訪問アンケート結果で、事故の不安と雇用の不安の両方を心配されている人が多いことにも示されている。副大臣と町議会議員との意見交換会でも深刻な状況が語られている。
 このような状況は、おおい町だけでなく、全国の原発が停止している中で、全国の立地町が抱える問題でもある。住民が再稼働について判断を行う上で、雇用不安のない状況で、真に安全性について、町の将来について考える基盤を作っていくためにも考慮すべき問題である。
 立地町の生活困難や雇用不安などの状態は、直接には、政府がこれまで誤った「安全神話」によって原発を推進し、福島原発事故を引き起こしたことに由来している。
 それゆえ、原発の停止によって困難になった雇用や生活の支援・補償をする義務が政府にあると考える。
 同時にその基礎には、原発に地域経済が依存する状況が作り出されてきたことがあり、また、原発が誘致されることにより、それ以前から地域にあった産業がすたれてしまった面もある。
 政府自体が「脱原発依存」を唱えている以上、将来にわたる立地点の人々の生活をどう構築するのかについても責任をもつべきではないか。
 これらの点についてどう考えているか。

(2) 4月26日の副大臣との意見交換会で、町議からは「国の一元管理責任において(原発が)停止中の経済・財政面における救済措置について早急に具体策を講じていただきたい」との要求が出されている。
 これに対する副大臣の具体的回答は、電源立地交付金について、停止中も稼働中とみなして交付金を出すということだった。「現在、雇用調整助成金のような制度もあり、そうした制度をフル活用して省庁の枠を超えてできるだけの努力をさせていただきたい」と述べながらも、具体的方途は示されなかった。
 具体的に、雇用と地域経済に対する支援や補償をいつまで、どのように行うのか。

(3) 現在の原子力発電施設の電源立地対策交付金の制度そのものを見直し「脱原発依存」のための地域経済支援政策およびその実現のための法整備・予算を検討すべきではないか。


5.再稼働についての地元合意について
(1) 小浜市で開かれた国の説明会では、市議会議員や参加した市民から、再稼働に反対する厳しい意見が相次いだ。また、政府は滋賀県・京都府知事に3回の説明を行ったが、「被害地元」という立場から、両知事等は再稼働を了解せず、安全性の問題などについて厳しい姿勢を示している。さらに、岐阜県では、自民党会派提出による意見書が全会一致で可決され、安全性をないがしろにした「政治判断」や地元・周辺自治体の意思を無視した政府の再稼働の動きを厳しく批判している。
 大飯の再稼働に関する地元合意の「地元」対象として、これらの市・府県の意見を尊重するという姿勢か


<追加質問>
6.大飯原発の周辺斜面の安全性について
 福井県原子力安全専門委員会において、委員から出された質問に対して関西電力は「原子炉建屋の背面斜面は、大変堅固な岩盤でできており、その面では、水害については影響ないと考えている」(4月25日議事概要)と答えている。また、文書回答(5月8日)では、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針の改訂に伴い、耐震バックチェックにより基準地震動Ssに対して、周辺斜面の安定性について評価し、問題ないことを確認している」と答えている。
 保安院が2006年に事業者に出した指示に基づく原発周辺斜面の安全評価は、大飯原発については終了しているのか。その詳細を示されたい。また、他の原発についてはどうか。


(12/05/12UP)