10月7日の政府交渉での確認点
原子力安全・保安院の事故シナリオは破綻
★地震によって配管の破損がなかったとは断定していない。
★保安院の放射能放出シナリオでは、17:50の放射能漏えいを説明できない。
★保安院の事故シナリオで前提になっている「逃がし安全弁が開いた」証拠はない。

2011.10.11

 10月7日、参議院議員会館B107号室で「原発の運転再開を止めよう!」政府交渉を行った。9月27日に全国の22団体で提出していた質問・要請書にそってやりとりが行われた。7日当日は、佐賀、愛媛、新潟、静岡、宮城、青森の立地県からの参加者を含め約90名の市民が参加した。政府側は、原子力安全・保安院、原子力安全委員会などから8名が出席した(政府側出席者の詳細は末尾参照)。この交渉は、福島みずほ議員の尽力によって実現し、福島みずほ議員も交渉に参加された。

 2時間40分にわたる交渉の中で、下記が確認された。これまで政府は、「津波による全電源喪失」のみを福島原発事故の原因としてきた。立地県での説明などでは、地震による配管破損の影響については一切語らず、ストレステストと小手先の津波対策による「緊急安全対策」で原発の運転再開に関する安全判断を行おうとしていた。
 しかし、下記に示すように、10月7日の政府交渉では、保安院の事故シナリオが破綻したことが明らかになった。地震による配管破損があり得たことは否定せず、今後調査を進めると述べた。政府交渉での確認点を、運転再開を止めるための根拠として、立地県への申し入れや、全国的な運動の中で活用していこう。
なお、10月11日付で、交渉を踏まえて、ストレステストの中止、やらせ問題の調査やり直しを求める質問・要請書を提出した(別紙参照)。政府の事故調査・検証委員会の「中間報告」は12月26日に出るとのことだった。

政府交渉での確認点

1.地震によって配管の破損がなかったとは断定していない、と原子力安全・保安院が表明。
 「地震によって配管破損がなかったとは断定していない」「地震で配管などが破損したことを全て否定してはいない」「地震による配管破損については、今後調査を進める予定」
「配管がどうなっているかは、現場を見ないと分からない」「現場に入って配管等に損傷がないかどうか確認する必要がある」 

2.1号機−保安院の放射能放出シナリオでは、17:50の放射能漏えいを説明できないと認める。
 保安院の放射能放出のシナリオ
  逃がし安全弁が開き、そこから放射能を含む蒸気が格納容器に流出→原子炉水位が低下→燃料が損傷→格納容器の圧力が高まり、格納容器外(原子炉建屋)へ流出。

(1)逃がし安全弁が開くことがシナリオの前提になっているが、逃がし安全弁が開いた証拠はない。
(2)18:00には格納容器の圧力は1気圧で、外の原子炉建屋と同じ。そのため、17:50に格納容器から放射能を含む蒸気が放出することはない。
(3)17:50に原子炉建屋で放射能が検出されたことについては、どの系統からどこを通って出たのか確定できていない。いまのところ報告書に記載されていない。
(4)IC系で配管破断信号が出た件については、「今後の調査が必要」

3.3号機−HPCI系配管が地震で破損した可能性はいまも堅持。
(1)6月7日付のIAEA報告書の記載「『HPCI系統からの蒸気流出の可能性がある』は撤回していない」
(2)東電は7月28日付報告書で、HPCI系統の配管が破損した場合を否定する見解を出しており、保安院はその見解を持ち出して説明したが、東電はその資料を記者に配っただけで国には報告していないと言っている。保安院はこれを受け取ったかどうかについて答えられなかった。
 報告を受け取ったかどうかもはっきりしないのに、回答ではあたかも正式文書として受け取ったかのような発言を行ったことについて、「まさに癒着」と厳しく批判。

4.保安院として、ストレステスト結果の判断基準はない。
(1)「ストレステスト結果の判断基準は持っていない」。
(2)保安院は、ストレステストで「福島と同様のことが起こらないことを地元に説明する必要がある」と述べたが、他方、その場合の「福島」が何かは今後の問題だとした。福島原発事故の実態−地震で配管が破損していた可能性について−も今後調査すると認めている。
「福島と同様のことが起こらないような判断基準」は存在しない。

(3)運転再開については、4者(首相、官房長官、経産大臣、原子力担当相)の政治判断による。政治判断の基準は地元の理解など総合的な判断になるのではないか。

5.原子力安全委員会は、ストレステストのダブルチェックは行わない。評価についての判断基準は持っていない。
(1)「ストレステストは法の外にあるので、ダブルチェックの対象ではない。」

(2)安全委員会は、「保安院の報告についてストレステスト結果の妥当性は確認するが、独自の判断基準はもっていない」。

6.やらせ問題については、参加者一同で再度の調査を求める。
・やらせの動機については、参加者が少なく会場に空席が目立たないように等「外観を重視し」、シンポジウムの目的を間違えていたと繰り返した。
 しかし、浜岡のシンポジウムでは募集期間はわずか一週間で、参加者を広く集めるという努力はしていない。「外観重視」など全くウソだと、具体的事実を示して市民側は批判した。

・第三者委員会の「最終報告書」では、41件の調査対象の内、32件について判断は直接には書いていないが、やらせはなかったと判断している。しかし、これでは「やらせなし」の判断根拠も全く分からない。

・調査内容を公表するよう求める市民の声に対しては、「調査内容を公開するためにやっているのではないので、調査の具体的内容は公開しない」と形式的に回答するだけだった。

※政府側の出席者
原子力安全・保安院
 ・耐震安全審査室 御田俊一郎 上席安全審査官
 ・原子力安全基盤課 田口達也 課長補佐
 ・原子力防災課 事故故障対策室 浅田尚久 事故故障第一係長

原子力安全委員会事務局
 ・審査指針課 安全調査副監理官 長谷川清光
 ・審査指針課 安全調査官 柏村博之
 ・規制調査課 規制第一係長 薮本順一

経済産業省大臣官房秘書課(やらせ問題の第三者調査担当)
 ・青木 洋純

内閣官房 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会
 ・塩澤 健一 参事官補佐

2011.10.11
[9月27日付 質問・要請書提出:22団体]
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(11/10/11UP)