要   望   書

福井県が重視している福島原発事故の実態と原因は未だ解明されていません
老朽化の影響、活断層の連動評価、津波跡の詳細調査はまだこれからです
国会の事故調査委員会による調査結果を重視すべきです
小浜市等の「立地並み」安全協定締結が優先されるべきです

大飯原発3・4号の運転再開を認めないでください

福井県知事 西川 一誠 様

 政府は、大飯原発3・4号の運転再開に向けた準備を急ピッチで進めています。1月18日の「ストレステストの意見聴取会」では、傍聴者を閉め出し、そのことに反対する委員が出席しない中、11名中わずか4名の委員だけの出席で、大飯原発3・4号のストレステストについて「妥当」との評価を出しました。31日にはIAEA(国際原子力機関)が評価を発表、その後、原子力安全委員会の評価、総理を含めた4大臣の政治判断と、「運転再開ありき」のスケジュールが進められています。私たちは、このような状況に強い危惧を抱いています。
 貴職は、「ストレステストは机上のシミュレーションでしかない」こと、「原発の再稼動等について、最も重要なことは、福島第一原発事故を教訓としてその知見を安全対策に十分活かすこと」を強調されています。一方、枝野経産相は、今月上旬にも、ストレステストの審査結果を地元に説明する見通しを示しています。しかし、福島原発事故の知見を明らかにする上で必要不可欠である事故の実態の把握は未だなされていません。
 私たちは全国の市民団体とともに、運転再開に関して、昨年12月19日と1月26日に、原子力安全・保安院や安全委員会と交渉を行いました。そこで確認してきた点等についてお伝えし、大飯3・4号の運転再開を認めないよう要望します。

 とりわけ本県では、福島原発事故後に住民の不安の声は高まっています。県民の安全を第一にした立場を貫いてください。また、ストレステスト後の初の運転再開の動きについて、関西はもとより全国の人々が、運転再開に反対するよう貴職の判断を注視しています。

◆福島原発事故の実態と原因、事故の影響などはまだ解明されていません

(1)津波の前に地震で配管が破損した可能性が高まっています
 1月26日の交渉で保安院は、福島第一原発事故において、事故の実態と原因はまだ未解明であり、地震による1号機での非常用復水器(IC)系配管破損の可能性、3号機での高圧注水系(HPCI)配管破損の可能性は否定できないとの考えを示しました。配管が破損したかどうかを確認するには、現地調査が必要であることを認めました。
 また、保安院は、大飯原発3・4号のストレステストの評価にあたっては、福島原発事故で配管が破損した可能性、老朽化の影響、また活断層の連動については考慮していません。現在までに確認されている知見に限られていることを認めました。

(2)「福島原発事故に老朽化の影響なし」とする保安院の見解は多くの委員から批判が出ています。
 老朽化については、1月18日の「高経年化技術評価に関する意見聴取会」において、保安院が出した「高経年化による劣化事象が福島第一原子力発電所事故の発生・拡大の要因になったことは無いと考えられる」との評価案に対して、「想定で影響が無かったと結論づけている」等、多くの委員から厳しい批判が出され、保安院の「老朽化影響なし」は事実上否定され、審議が続いています。

(3)5q以上離れた活断層を連動して評価することになりました。ストレステストではこのことは考慮されていません。
 活断層の連動評価については、保安院は1月27日に、5q以上離れた活断層も連動することを考慮して評価し直すことを電力各社に求め、2月中に報告するよう指示を出しました。このことは、私たちがこれまで何度も県や関西電力に求めてきたことです。大飯原発のストレステストで考慮している活断層は、海側のFo-BとFo-A断層の連動だけで、熊川断層との連動を否定してきました。また、和布−干飯崎沖断層から柳ケ瀬断層、関ヶ原断層の100qにわたる活断層の連動も拒否してきました。これらを十分に検討し、耐震安全性の見直しがなされるべきです。

(4)関電などの津波跡調査では不十分となり、これから詳細調査が行われます。
 また、関西電力などが行ったわずか9箇所の津波跡調査は、国の意見聴取会でも不十分だとの結論となり、再度の詳細調査が求められています。またこの9箇所は敦賀・美浜・三方地区に限られ、大飯や高浜周辺の津波跡調査とは言えません。さらに、京都府は国に対して、宮津、舞鶴など若狭湾での過去の大津波について調査するよう要請しています

(5)国会の事故調査委員会では本格的な調査が開始されました。この委員会の調査結果を待つべきです。
 現在、国会に「福島原発事故調査委員会」が設置され、事故の調査・検証が進められています。一昨日には双葉町長と町民からのヒアリングが行われました。町長は、「このような調査は初めてであり、本来あるべき姿だ」「政府の事故検証委員会が以前に町長室に来たことがあるが、それとは全く異なる」と述べています。ヒアリングに参加した町民からは「3歳児以下の子ども達の内部被ばく検査は一切やられていない」等々、事故と事故後の生々しい状況が語られました。国会の事故調査委員会は、政府の原子力災害対策本部等の議事録が作られていなかったこと等から、当初6月に予定していた報告書の作成にはまだ時間がかかるとの意向も示しています。このように、福島事故に関する調査は現在精力的に進められており、これらの未解明の問題が明らかになるまで運転再開を認めるべきではありません。

◆小浜市をはじめ準立地協議会が求める、「立地並み」の安全協定改定に向けて尽力してください。運転再開の問題については、大飯原発から20q圏内の小浜市民の声を尊重してください。
 福島原発事故は、立地点の枠を超えて非常に広い範囲に深刻な被害が及ぶことを如実に示しました。そのため防災範囲の拡大が現に国によって認められ、それに関連して電気事業者との立地並み安全協定の締結が小浜市など隣接市町やさらには隣接府県から、切実な要求として出されています。しかし、関電は未だそれに応えようとする態度を何も示していません。
 とりわけ大飯原発から10q圏内の住民分布の約7割を小浜市民が占め、20q圏内には市民の全てが含まれる小浜市では、立地並みの安全協定を求める声が強まっています。小浜市民の声を聞くこともなく、おおい町と県の判断だけで運転再開が決まるとすれば、これほど理不尽なことはありません。小浜市ならびに若狭町など準立地協議会の意向を尊重し、「立地並み」の安全協定改定に向けて、貴職が尽力されることを強く要望します。
 また、1月26日の交渉において保安院は、「要望があれば、原発からの距離に関係なく説明に行く。再稼働については、住民の理解を得る必要がある」との考えを自ら積極的に述べました。これを活かすよう、福島事故をめぐる問題点を広く明らかにする公開の場を設定することを要望します。

 また、関電が、福井県の「暴力団排除条例」に違反して、暴力団と関係している会社と契約を結び、その会社が大飯原発の工事で偽装請負をしていたことが明らかになりました。しかし、関電は未だこの問題について自らの社会的責任を明らかにしていません。そのような関電に、原発の運転再開を語る資格はありません。貴職は、同条例に違反した関電に厳しい措置を取るべきです。

要 望 事 項

1.地震による配管破損の可能性を含め、福島第一原発事故の実態把握と原因究明なしに、大飯原発3・4号の運転再開を決して認めないでください。

2.活断層の連動評価、津波跡の詳細調査はまだこれからです。これらの調査結果を踏まえて、じっくり検討すべきです。

3.国会設置の事故調査委員会の調査結果を重視してください。

4.運転再開前に、小浜市など隣接市町が立地並みの安全協定を締結できるように、立会人として、積極的に協議を進めてください。

5.運転再開にあたっては、おおい町だけでなく、広く県民の理解を得る必要があることを表明し、県内各地で公開説明会を開催することを国に求めてください。

2012年2月1日

原発設置反対小浜市民の会
プルサーマルを心配するふつうの若狭の民の会
大飯原発3・4号の運転再開を止めよう!2月4日 関西びわこ集会実行委員会

  集会実行委員会の連絡先団体:
    暮らしを考える会 滋賀県野洲市小堤184-1 TEL:077-586-0623 FAX:077-586-1403
    グリーン・アクション 
       京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
    美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 
       大阪市北区西天満4-3-3星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(12/02/01 UP)