10月7日の政府交渉を踏まえた 福井県への要望書 |
配管破損を否定する保安院の福島原発事故シナリオでは事実を説明できません |
地震によって配管が破損した可能性を調査・検証するべきです |
国の判断基準なしの形ばかりのストレステストは無意味です |
大飯3号の運転再開を認めないでください |
福井県知事 西川 一誠 様 2011年11月2日 3月11日の福島第一原発事故の後、定期検査で停止した原発の再稼働がどうなるかが現在の焦点になっています。関西電力は10月28日、大飯3号のストレステスト結果を全国で最も早く原子力安全・保安院に提出し、原発の早期運転再開を図ろうとしています。貴職は9月15日に枝野経済産業大臣に対し、「全立地地域の安全・安心を図る観点から」要請書を提出されました。その前文で、「最も重要なことは、福島第一原発事故を教訓としてその知見を安全対策に十分活かすこと」と指摘されています。定検で停止中プラントの再稼働については、「福島原発事故の原因を他原発の安全対策に活かす知見については、・・・十分示されておらず」との認識が示され、「国が暫定的に新たな安全基準を設定」することを要請されています。また、ストレステストについては、「電力事業者のテスト結果については、国が責任をもって厳格なチェックを行い、その結果について立地地域に丁寧に説明すること」を求められています。また、10月19日には、細野内閣府特命担当大臣に対して同様の要請書を提出されています。 まさにここに示された観点と密接に関連する問題について、私たちは10月7日に全国22団体で国と交渉をもち、国の見解をただしてきました。福島第一原発事故の原因や知見は、なによりもその事故の実態が把握され検証されることが前提となって明らかになるものだと考えます。しかし現在では、東京電力や原子力安全・保安院の事故解析シナリオ・想定が実態に代わるものとして一人歩きしています。そのシナリオ・想定は、地震によって重要な機器や配管の破損はなかったとの仮定に立っています。10月7日の交渉では、特にこの点に焦点を当ててその真偽を問いただしました。その結果を貴職にもお伝えし、それを踏まえて後記の2点を要望いたします。 まず、10月7日交渉の結果について、以下にかいつまんで箇条書きにします(詳細は別紙)。 (1)原発の運転再開の条件は、 [1]ストレステストに合格すること、 [2]「福島と同様のことは起こらないことを地元に説明し了解を得ること」 ただし、ストレステストの合格基準は保安院も原子力安全委員会もまだもたず、「福島と同様のこと」の「福島」が何かは、今後検討するとのことでした。要するに福島事故の実態が把握・検証されていないため、事故の原因や知見も当然明らかになっていないと考えられます。 (2)地震で配管が破損したのではないかという問題については、 [1]地震で配管が破損した可能性は全面否定しているわけではなく、「現地の調査が必要だ」。 [2]1号機で早くも17時50分に原子炉建屋(格納容器外)に放射能が充満していた問題は、保安院の解析シナリオでは説明できないこと、逃し安全弁が開いた証拠は何もないことを認めました。この場合、保安院の想定とは別の放射能放出ルートが存在するはずで、たとえば非常用復水器(IC)系配管の破損していた可能性が浮上してきます。 [3]3号機の高圧注水(HPCI)系配管について、「HPCI系統からの蒸気流出の可能性がある」と6月7日付IAEAへの報告書に記載したことについては、撤回していないとのことなので、配管破損の可能性は生きているということです。 他方、東電の7月28日付耐震解析では、1号機と3号機の配管は3月11日の地震動ではけっして壊れないという結果になっています。そうすると、もし本当に配管が破損していれば、この耐震解析は破綻します。そうなると、他の原発の耐震解析の信頼性にも問題は波及します。ストレステストでは地震と津波の重畳効果を調べることになっており、耐震解析が破綻していればそれに基づくストレステストなど無意味となります。 また、加圧水型炉の緊急安全対策では、全交流電源喪失のもとでタービン動補助給水ポンプを用いて炉の冷却を行うことになっています。そのタービン動補助給水系の配管破損が重なれば、解析するまでもなく確実に炉心溶融に至ります。しかし現状の緊急安全対策では地震による配管破損はいっさいないものと仮定しています。福島事故の実態が把握され、配管が破損していることが明らかになれば、緊急安全対策は破綻します。 関電が10月14日の福井県安全対策検証委員会(第4回)に提出した説明資料では、「まとめ」において、「安全性向上対策については、緊急対策を完了し福島第一原子力発電所と同様の事象が発生しても、原子炉や使用済燃料ピット内の燃料を安全に冷却できることを確認しております」と述べています。しかし、「同様の事象」とは、配管等の破損は起こらないとの仮定に立っているため、その安全性判断は福島第一原発事故の実態に依拠しています。 事故の実態を踏まえない、判断基準も未だないストレステストなどで原発の再稼働を判断することなどけっして許されるべきではありません。まずはストレステストで先行する大飯3号の理不尽な運転再開を認めないことが重要になります。このような考えに立って、以下を要望します。 要 望 事 項 1.地震によって配管が破損した可能性を実態に基づいて調査・検証するよう国に働きかけてください。福島第一原発1号機と3号機では、地震による配管破損の疑いが浮上しています。1号機の初期の挙動について保安院の解析シナリオでは説明できず、そのことは配管の破損を強く示唆しています。3号機について政府は「HPCI系統からの蒸気流出の可能性がある」と6月7日付IAEAへの報告書で認めています。 2.福島第一原発事故の実態把握と原因究明なしに、形ばかりのストレステストで、大飯3号機の再稼働をすることはけっして認めないでください。 2011年11月2日 提出団体 原発設置反対小浜市民の会 プルサーマルを心配するふつうの若狭の民の会 琵琶湖の水がみんなのいのち・さらなら原発ネットワーク(関西13団体) NPO地球とともに/(株)よつ葉ホームデリバリー京滋/京都・水俣病を告発する会/グリーン・アクション/コープ自然派京都/コープ自然派奈良/コープ自然派ピュア大阪/脱原発へ!関電株主行動の会/脱原発わかやま/日本熊森協会滋賀県支部/毎月26日のランチタイムに関電前に集まる女たち/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/若狭の原発を案じる京都府民 |
(11/11/02UP) |