1 BNFLが、劣化ウラン弾を製造していた BNFLはイギリス「ガーディアン」紙のインタビューに答えて「湾岸戦争の間、劣化ウラン弾の部品を国防省に供給していた」と認めた[1月12日付ガーディアン]。 米国・英国は、湾岸戦争で、さらにバルカン諸国に対して、大量の劣化ウラン弾を使用した。米国の帰還兵や欧州の兵士達、さらにはイラク等の子供や住民達に、白血病・ガン、先天性欠損、免疫不全等々多くの放射能被害が発生している。 BNFLは、実際に使用された劣化ウラン弾=核兵器の製造にたずさわった。まさに、死の商人である。 2 BNFLは湾岸戦争以降も劣化ウラン弾を製造している
それを裏付けるのが、米国NRCが発給した劣化ウラン輸出ライセンスである[資料参照]。私達はこの資料をグリーン・アクションとともに入手した。 1993年9月のライセンスXSOU8725では、BNFLの米国子会社であるBNFLInc.から、イギリスのBNFLへ120,203.2kg(約120d)の劣化ウランの輸出が承認されている。120トンの劣化ウランは、2万4千発の劣化ウラン弾に相当する。 このライセンスでは、劣化ウランの供給者として米エネルギー省の名前が挙げられている。輸出される劣化ウランの用途について、95%が砲弾等の軍事製品用であり、5%が航空機や船舶のバラスト等の民生用であると規定されている。 BNFLの手に渡った劣化ウランは、ランカシャー、プレストンにあるBNFLのスプリングフィールド工場で、イギリス軍の戦車(チャレンジャー)に使う、120mm砲弾の部品に加工される。その後、加工されたその砲弾は、仕上げとテストのために、英国銃砲特殊金属(Royal Ordnance Speciality Metals Ltd.)と英国銃砲会社(Royal Ordnance PLC)に引き渡される。 BNFLは、このライセンス以前にも、劣化ウラン弾製造のために、3つの劣化ウラン輸入ライセンスを取得している。 3 死の商人=BNFLといっさい手を切れ! BNFLのビジネスは、MOX燃料・核燃料の加工・製造、再処理事業といった放射能汚染をたれ流す「民生分野」にとどまらず、劣化ウラン弾の製造という「核の軍事利用」にまで及んでいる。 MOX燃料のデータねつ造、その後も続く安全無視の数々。その上に、劣化ウラン弾の製造。こんな企業と取引を続けることは、もはや許されない。関電はMOX製造の新契約を行うな! プルサーマル計画を中止せよ!再処理契約を破棄せよ! |
イギリスの劣化ウラン弾演習再開許せない イギリスは独自の劣化ウラン弾配備計画を持っており※1、1984年のマルビナス−フォークランド戦争では、艦船搭載機関砲(ファランクス)の弾として劣化ウラン弾を使用、1991年の湾岸戦争では米軍と共に劣化ウラン弾の大量使用をおこなった。イギリスはアメリカに次ぐ、劣化ウラン弾使用国である。昨年末からの一連のバルカンシンドローム論争でも、いち早く、被害否定の側に回り、事態沈静化の先頭に立ってきた※2。さらに英国は、多くの抗議の声を踏みにじり、2月20日、再び劣化ウラン弾の演習を再開した。BNFLは劣化ウラン弾を製造し、「低強度核戦争※3」の直接の加担者である。 ※1:セラフィールドの近く、西カンブリア沿岸にある、Eskmeals 演習場では、湾岸戦争後の数年間を含む、1981年から1995年まで、劣化ウラン弾のテストプログラムが実施されている。南西スコットランドのKirkudbridge演習場では、1982年にテストプログラムが始まり、今日まで続いている。両演習場でのテストは、国防省からDERA(Defence Evaluation and Research Agency)に委託されたものである。−WISE(Amsterdam) ※2:アメリカとNATOは事態の沈静化に必死である。彼らは口を揃えて「こんなに早く白血病が出るはずはない、劣化ウラン弾が帰還兵の死の原因ではない」と主張している。かつて、どこかで聞いたようなフレーズである。チェルノブイリの時も、「こんなに早く甲状腺ガンが発生するはずはない」と、IAEAは現実に起こっている被害を否定しようとした。「理論的にありえない」これが常に持ち出される被曝被害否定のための論理である。広島・長崎の被害と、チェルノブイリの被害、そして劣化ウラン弾の被害、各々の放出核種の違いや、放出形態の相違、体内への取り込まれ方や、被曝の状況等々の違いに応じて、被害の発生の形態もテンポも様々な多様性を示すというのが、実際の経験が示す被曝の真実の姿である。現実に起こっている事態に即して、放射能の人体影響を再評価する、現実に即して、これまでの知見を改めるというのが真に科学的な態度のはずである。 今回の劣化ウランによる深刻な被害は、ゴフマンをはじめとする良心的で戦闘的な科学者・研究者達が、従来から主張し続けてきたアルファ線=プルトニウムやウランなどのアルファ線放射体の危険性、特に内部被曝の特別の危険性を裏付けることになるだろう。1990年代以降、細胞レベルの実験ではあるが、アルファ線や中性子線等、高LET放射線の突然変異を引き起こす力が、ガンマ線の20倍というような単純なものではなく、もっと複雑なプロセスで生体に影響を与え、その効果はこれまで考えられていたよりもはるかに大きいという研究結果も出始めている。 アメリカとNATOに、現に起こっている被害を認めさせ、徹底した調査を行わせなければならない。すべての被害者に対する補償と、環境の復旧をおこなわせなければならない。 劣化ウランの問題は、プルトニウムやウランの内部被曝による被害という点で、セラフィールド、ラアーグ等、再処理工場周辺での白血病等の被害、アメリカやオーストラリア、インドなど、ウラン鉱山周辺での被害、人形峠での被害の解明にもつながってゆく問題である。 それだけではない。劣化ウランの問題は、東海臨界事故の被曝影響評価とも結びついている。なぜなら、中性子線は、体内を貫通し、その時跳ね飛ばされた陽子は、アルファ線と同様の影響を生体に及ぼす。外部被曝であっても、アルファ線の内部被曝と類似の効果を引き起こす。これが中性子線の特徴であるからである。 ※3:「ジェーンズ」によれば、イギリスの核兵器製造をおこなっているのは政府管轄のAWE(Atomic Wepon Establishment)で、その構成メンバーはBNFLとロッキード・マーチンである。COGEMAと同様、BNFLが核兵器の製造そのものにも深く関与している可能性は高い。("Market Review - Jane's Nuclear, Biological and Chemical Defence 2000-2001" July 2000) |