政府・与党は7月4日、衆院本会議で「イラク特措法」を多くの市民の反対を押し切り可決しました。私たちはこの暴挙に強く抗議します。 国会審議の過程で驚くべき事が明らかになりました。「米国に対して、イラク戦争での劣化ウラン弾使用状況を明らかにさせるべきだ」との社民党議員の質問に対し、川口外相は「アメリカは使ったとは言っていない」「国際機関の調査でも人体に対する影響はほとんどない。調査の動向は注視する」との答弁をわざわざ何回も繰り返したのです。世界中が米英軍のイラクでの劣化ウラン弾使用を知り、抗議の声をあげ、その被害を心配しています。川口外相だけが米国を擁護するためだけに「使ったと言っていない」「米国に問い合わせない」と言い張っています。一体どこの国の外相なのでしょうか。広島・長崎の被爆地を持つ日本の外相が、放射能被害の危険がある兵器の使用を隠し、被害を押し付けることなど許せません。 「劣化ウラン弾は優れているから使う」と宣言した3月14日の米国国防総省のブリーフィング、「使っているものについては安全だと信じている」と言った3月26日中央軍・ブリックス准将のブリーフィング、4月30日には中央軍・空軍がA−10攻撃機が劣化ウラン弾31万発(78トン)を発射したという文書まで公表しています。米軍自身が認めているのです。 バグダッドを初めイラク各地には劣化ウラン弾の残骸がごろごろ転がっています。子どもがその周りで遊んでいるのです。そのことは藤田祐幸氏、豊田直巳氏、広河隆一氏、森住卓氏など専門家やジャーナリスト、内外のマスコミ、広島の森瀧春子氏など市民グループの調査活動で明らかです。こんな誰の目にも明らかなことを川口外相・政府はなぜごまかして米軍を擁護しようとするのでしょうか。91年の湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾のために、イラクの人々、とりわけ多くの子供たちは深刻な健康被害に今も苦しんでいます。今回また、一層の被害が出ることは明らかです。 川口外相や小泉首相が引用する国際機関は、政府とは全く逆のことを言っています。実質的には危険性を認めています。例えばUNEPのボスニア・ヘルツェゴビナ調査団は「劣化ウラン弾を集めて処理すること」「汚染地点はアスファルトかきれいな土で覆う」「汚染地点の地図を作る」「健康被害を調査する」などを勧告しているのです。アメリカに劣化ウラン弾使用地点・使用量を明らかにさせることこそ必要なのです。 外相や日本政府の態度は、米国の戦争犯罪・非人道的な姿勢を擁護するための犯罪的なものです。現地入りするNGOの人々はおろか、肝心要のイラクの人々を危険にさらし続ける許し難い対応です。外相と政府の対応は、今回の劣化ウラン弾使用で生じるであろう多くの深刻な被害に頬被りするものです。私たちは川口外相と政府に要求します。米国を擁護するためだけの不真面目な答弁を直ちに撤回すること。アメリカ政府に、劣化ウラン弾の使用量、使用場所、使用兵器の種類などを明らかにするよう要求すること。アメリカ政府に自分の責任で劣化ウランの撤去を行わせること。イラクにおける劣化ウラン弾による健康被害をアメリカに全面的に補償させること。 これらの声を各地からあげ、米軍の劣化ウラン弾使用を認めない川口外相と日本政府を追及しましょう。 2003年7月5日 劣化ウランの危険性とアメリカでの反対運動 7/5ルーレン・モレさん講演会参加者一同 |