本日(4月20日)、甘利経産大臣と原子力安全・保安院長は、電力会社の不正報告に対し、なんら実効力ある処分をおこなわないと発表した。臨界事故を引き起こし8年間も隠ぺいしてきた北陸電力の場合、保安規定違反は明らかであり、設置許可取消処分に該当するにもかかわらず、1年間の運転停止命令さえ出さなかった。実効力のある処分は封印し、免罪符だけを乱発した。私たちは、このことに強く抗議する。 電力各社の社長が一同に会して頭を垂れ、甘利経産大臣から運転停止などの処分がないことを聞いた。報道陣のマイクの前で、電事連会長の東電社長は「非常に重い処分」と語り、臨界事故を引き起こし隠ぺいを続けてきた北陸電力の社長も「厳しい処分」と語った。まったくの茶番劇だ。 国は「発電設備の総点検に関する評価と今後の対応について」を発表した。不正報告に対する「評価」では、11の事案に対して原子炉等規制法などに抵触していると自ら評価を下しながら、運転停止命令さえ出さなかった。「今後の対応」としては、北陸電力、東京電力、中国電力、日本原子力発電の4社・9基の原発※に対し、保安規定の変更命令と定検を数週間延長するというだけである。 志賀原発の臨界事故等は明らかに保安規定違反であるにもかかわらず、この違反に対しては完全に目をつむり、今後「重大事故が経営責任者に直ちに報告がなされる体制を構築するなどの保安規定の変更」を求めただけだ。定検の数週間の延長による「特別な検査」とは、「直近の定検」に対してだけであり、一度きりの措置だ。 この異様な状況は、国が見逃してきた臨界事故や1万件以上におよぶ違法やデータ改ざん等々に対し、厳しい措置をとらないことで、国自らの無責任極まりない姿勢をさらけ出したのである。同時に、地域独占に守られた傲慢な電力会社の安全性軽視と隠ぺい体質を育成してきたのもまた国であることを自ら示すこととなった。 志賀原発の臨界事故や福島第1原発3号機での7時間半に及ぶ臨界事故等については、「操作手順の問題」として片付けようとしている。安全審査で1本の引き抜けしか想定していない点についても見直しを放棄した。しかし、志賀原発の臨界事故が示したものは、臨界防止のために取らざるをえない制御棒の隔離操作によって、逆に制御棒の引き抜けが起こり臨界事故にまでいたるという根本的な矛盾である。多数の原発で起きていた制御棒引き抜けは、複雑な隔離操作と水圧による微妙な調整によってしか制御棒を制御できないという、BWR原発に固有の制御棒駆動系の構造的欠陥を顕在化させた。事実、北陸電力の報告書では、制御棒引き抜けが今後も起こることを前提にして、作業員がバルブを閉めてまわる順番を考慮するという対策しか出せていない。このままでは、制御棒引き抜けと臨界事故は繰り返される。 国の安全規制には大穴があいている。電力各社は、今後ますます老朽化が進む原発で、経済性最優先の運転を狙っている。綱の下に張られたネットに大穴があいた状態で、一層危険な核の綱わたりが始まろうとしている。 国と電力会社、原子力メーカは一体となって、定検の短縮や電力各社が自ら作成する「保全プログラム」に沿った定検の手抜き等を狙っている。原子力の海外進出を狙った「原子力立国」のためにも、原発の高い稼働率等の実績をあげようとしている。 しかし、誰も責任を取らない電力会社と、国の責任放棄という醜態は、「過去を清算した」「身ぎれいになった」という国・電力の思惑とは裏腹に、多くの人々の中に怒りと不信、不安の念を生み出していくに違いない。 私たちは、全国の運動と連携し、国と電力会社の責任を厳しく追及していく。 原発の停止を求めて、運動を強めていく。 2007年4月20日 北陸電力:志賀1 東京電力:福島T−3、福島U−4、柏崎刈羽1 中国電力:島根1、島根2 日本原電:敦賀1、敦賀2(3件)、東海第2 |