市民に対し、あまりにも低劣な態度をとっている
関西電力への指導を要望します



経済産業省大臣 平沼赳夫 様

 私達は、プルサーマル問題等で関西電力と交渉を行っている関西の市民団体です。
 ご存知のように、関西電力は、1999年高浜3・4号用MOX燃料データねつ造事件を引き起こしました。この問題については、当時の通産大臣から、関西電力のデータ隠しに対して、厳重注意がなされました。しかし、その後、関西電力の情報公開の姿勢は、よくなるどころか一層悪化しています。以下に述べる、交渉の過程で明らかになった関西電力の問題意識の欠如は、自浄能力がないことを示しています。今後も大きな原子力事故を起こすのではとの危惧がふくらむばかりです。私達は、がまんにがまんを重ねてきましたが、これ以上現在の状況を放置することはできないと考え、貴職へ要望書を出すことにしました。
 貴職は、プルサーマルについて「国民の合意形成のために努力する」と何度も述べられ、電力会社に対してもそのように指導されています。そのため、あまりにもみじめな関西電力の実態をお知らせし、貴職が監督官庁として、関西電力に厳重注意を行い、市民に対して、せめてもう少しましな対応をするよう指導されることを強く要望します。



関西電力に対して、以下の点を指導してください

1.市民の質問に回答するときは、最低限言葉の意味を把握し、さらに何が問題になっているかを理解して、回答をし、受け答えすること。
2.交渉を円滑に進めるため、交渉内容に関係する担当部署の人を同席させること。
3.質問に対する回答は、口頭だけでなく、文書でも出すこと。


 直近の関西電力との交渉は、8月3日でした。関電からの出席者は広報グループから、小松輝雄マネージャー、岩崎一郎マネージャー(こちらの方は今回が初めて)の2人です。ずっと以前から、毎回の交渉には、広報グループの2人だけが出席します。
 私達は、交渉を終えるたびに、その日の交渉で回答がなかった点、および新たに問題となった点につき、文書で質問書を作成し、関電に提出します。その質問書に基づいて、次回の交渉を行うという形式で、交渉を重ねてきました。例えば、8月3日の交渉は、前回の6月21日の交渉に基づき、7月2日に質問書を提出しています(今回は、7月3日と7月9日に追加質問を出しています)。こうして約1ヶ月の回答期限のあと、8月3日に交渉を行いました。

1.何が問題になっているか、言葉さえも理解していない
 関西電力のみじめさの最大のものは、何が問題になっているかはおろか、質問事項にある言葉さえも理解していないことです。このことは、関電として、最も重要な、高浜4号MOX燃料データねつ造問題でもそうでした。広報の2人は、高浜4号MOXデータに関して、何が公開されており、何が非公開になっているのかすら理解していませんでした。それどころか、公開を要求しているのは何のデータかと聞いても、沈黙したままというひどい状態でした。
 やりとりはこうです。1ヶ月前に提出している質問書では、「全数データについては上・中・下のデータが公開されているのに、抜取データだけなぜ開示制限なのか」。回答は、「本来全て公開すべきではないが、上・中・下データのみBNFLの判断で公開した」というものでした。質問している「抜取データだけなぜ開示制限なのか」には答えていないと何度聞いても、「上・中・下データのみ公開」を繰り返すだけです。そこで、「何が公開されていて、何が非公開なのか分かっているのか」と聞くと、じーっと黙ったままです。ご存知のように、非公開になっているのは、「MOX燃料ペレットに関する抜取検査データの上・中・下データ」です。ただ単に担当部署から聞いたメモを読み上げるだけ、何を聞いてもそれを何度も繰り返すだけ、これでは子供の使いを相手にしているに等しいのです。

2.国に提出した文書の記録も残していない
 次に、前回の交渉で、この抜取検査の上・中・下データを通産省の原子力発電安全管理課に1999年12月中旬に提出したとの回答がありました。そのため今回、国に提出したのは「12月何日か」と質問をしました。回答は、「12月中旬頃です。具体的な日にちについては、国に出した文書の記録が残っていないため不明」というものでした。
 データねつ造問題は国会でも大問題となりました。通常は非開示制限がついているが、わざわざ「規制当局には第三者非開示の条件でお渡しすることでBNFLから了解を得た」データであったわけです。そのような重要なものであるにもかかわらず、「国に出した記録が残っていない」とは、関電の管理能力の程度が計れるというものです。この回答の真贋は、私達には現在知るすべもありません。しかし正式の回答として「国に出した文書の記録がない」と言いはるのですから、ずさんな管理体制という外ありません。

3.当然公開できる情報も公開しない
 今年6月16日に、関西電力は高浜原発1・2号から六ヶ所村へ使用済み燃料を初めて搬出しました。この搬出に関して、今回の質問書で「福井県・高浜町にはいつの時点で伝えたのか、その日時と内容を明らかにすること」を要求しました。回答は「事前に連絡しております」と言うだけでした。日時を聞かれているのに「事前に」を繰り返すだけです。
 当日、関電は、事前に搬出の日時等を公開してはならないことの根拠として「平成9年8月22日付 科学技術庁原子力安全局 核物質の輸送情報の取扱について」という通達を出してきました。関電が出してきたその通達の中には、「2.輸送終了後の情報 輸送経路及び警備体制、施錠・封印等核物質防護措置に関する情報を除き、公開可能」と記載されています。
 私達が質問したのは、輸送後に「福井県・高浜町にいつの時点で搬出を知らせたのか」というものです。この科技庁の通達から言っても、当然「公開可能」な情報です。
 同じ日の交渉の中で、一方では「公開可能」の通達を出しながら、回答では日時は答えられないというのです。関電は、自分達がどのような資料を出しているのか、そして自らが出した資料と回答に整合性がないということすら理解できないのでしょうか。ほんとうに困ったものです。

4.「会社としての回答です」
 このようなみじめな状況は、単に担当している広報員のパーソナリティの問題ではありません。事実彼らは、上記のようなトンチンカンな回答を「社としての回答です」「社を代表して回答しています」と、やけに力んで答えるのです。
 また、広報員は、「担当部署に作ってもらった」という回答文書を握りしめ、ただひたすら、そこに書かれている文言を繰り返すのみです。回答の意味が分かりにくいためその内容を質問しても、じーっと黙った後、やはり同じ文言を繰り返すのです。そのため私達は、何度も「担当部署の人を交渉に同席させるよう」要求していますが、未だに聞き入れられていません。
 なお、回答はいつも口頭です。そのため私達は毎回、速記の練習をしているようなものです。JCO事故等に関して、国に質問書を出せば、文書で回答が返ってきます。関電は、回答を文書で用意しているのですから、少なくとも、その文書を私達にも配布し、時間を有効に使うべきです。

 上記は、あまりにもみじめな関西電力の実態のほんの一端です。プルサーマルの問題等について、私達と関電の見解が異なっていることは十分承知のことです。だからこそ、交渉を行っているわけであり、今回私達が問題にしているのは、内容以前の、市民への対応のいわばイロハの問題です。
 聞くところによれば、市民と東京電力との交渉では、東電側は、少なくとも担当部署の技術者等が同席されているとのことです。

 貴職が、監督官庁の責任で、上記のような関電の姿勢に対して厳重なる注意を行い、私達の上記要望事項にそって、具体的に指導されることを要望します。

 また、今回の私達の要望に対して、どのような措置を関西電力に対してとられたかについて8月23日までにお知らせ下さい。

 なお、事柄の重要性に鑑み、この要望書はホームページ等で公開いたします。
                                                      2001年8月8日
  8月3日関電交渉参加者一同
  連絡先
    グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
     京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
    美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
     大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル1階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581



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