柏崎原発反対地元三団体の新潟県知事への申入れ書


2007.7.25

新潟県知事 泉田裕彦 様

柏崎原発反対地元三団体

新潟県中越沖地震を踏まえて柏崎刈羽原子力発電所に関する新潟県知事への申し入れ

 新潟県の地震災害対策に感謝します。

 7月16日に発生した新潟県中越沖地震で、柏崎刈羽原発は敷地地盤も機器も重大な損傷を受けている。

 損傷調査は目視点検でしかないが、連日新たな事実が判明している。

 柏崎刈羽原発の耐震設計では、S1地震動で300ガル15.6カイン、S2地震動で450ガル、22.0カインである。300ガルで損傷がないこと、300以上450ガル未満は塑性変形があっても破断やリークがないことで設計され運転されている。言い換えれば、300ガル未満は再使用可能であるが300ガル以上は再使用せず廃棄することを前提に設置許可を得たものである。

 新潟県中越沖地震では水平最大680ガルが観測された。この値は想定したS2地震を大きく超える。

 東京電力が主張し国が認めた地震想定の甘さは、私たちが、1974年8月以来、33年間、指摘し続けたことである。私たちの指摘が現実のものとなっただけで、想定外のことではない。東京電力と国だけが建設経費を削減するために甘い地震想定をしていたにすぎない。

 中越沖地震の発生で、柏崎刈羽原発の設置許可の前提の地震想定の誤りが証明され、許可は無意味となった。

 私たちは、柏崎刈羽原発は、論理的には新たな基準に基づく新規立地はあり得ても、小さな地震想定で建設し、中越沖地震で、機器や建屋が塑性変形した可能性を否定できない現在の施設の再使用はあり得ないと考える。

 しかし、東京電力等は「いい体験として世界一安心、安全な原発を再構築したい」「復旧を急ぐ」等の主張を繰り返し、国の調査対策委員長は「運転再開」を発言していると報じている。

 こうした主張は、事態の本質を見誤るものだと考える。

 地震調査委員会は長岡平野西縁断層帯の大地震を警告しており、中越地震、中越沖地震を経験した県民は重大な関心を持って事態を見守っている。

 中越沖地震がもたらした柏崎刈羽原発への影響は、設計を越える強震動だけではない。私たちは、敷地内の施設直下に多数存在する、基盤の西山層とともに安田層を切る断層の再活動を指摘してきた。中越沖地震で、敷地内では崖崩れや広範囲の陥没・隆起が見られ、敷地内の地殻構造運動(αβやF系・V系等の直下断層の活動)が示唆されている。

 現在、国や東電がなすべきことは、放射能の完全隔離と機器の損傷実態の詳細把握のみであり、運転再開の準備や復旧工事ではない。

 よって、新潟県に対して以下事項を求める。

【記】

1.放射能の環境流出に万全の対策を講じること。
1.設置許可の前提が損なわれた事実を踏まえ国に設置許可の取消、東電に設置許可の返上を求めること。
1.県民感情を逆なでする「運転再開」や「復旧」「原発の再建」発言をさせないこと。
1.東電や国が、結果的に正しかった市民の指摘を無視し続けた原子力制度の欠陥を是正し、地域の原子力行政に反映させること。

(07/07/27UP)