■耐震設計の2.5倍の揺れ−柏崎刈羽原発の耐震安全性は破綻 柏崎刈羽原発を全号機閉鎖せよ 保安院の「耐震安全性を確認せよ」は、運転再開の条件作り ■7号機の排気筒からヨウ素等の放射能放出−燃料棒は破損していないのか 東電は全てのデータ・情報を公表せよ ■海への放射能放出−「影響なし」は本当か 海に放出された放射能濃度が、床の漏えい水濃度の360分の1になっているのはなぜか |
□耐震設計の約2.5倍の揺れ−原発では最大 7月16日午前10時13分頃に起きた中越沖地震によって、稼働中の4機の原発は緊急停止した(3機は定検で停止中)。今回の地震で、柏崎刈羽原発の設計時の耐震基準を約2.5倍も上回る揺れが観測された。下記の東電発表資料によれば、1号機の原子炉建屋最下階で、東西方向で680ガル(設計値273ガル)、上下方向408ガル(設計値235ガル)が測定された。観測された全てで(1箇所以外)設計値を大幅に上回っている。このことは、柏崎刈羽原発の耐震安全性が破綻したことを如実に示している。 参考) 各号機の観測記録の取得されている位置における設計時の加速度応答(設計値、単位:ガル)は、以下の通りです。 ※上下動については、()内の値を静的設計で用いている。 東電hpより 今回の地震は耐震評価に二重の問題があることを示した。第1に、今回のような震源域が申請書の中でまったく想定されていなかったことである(東電申請書の活断層図参照)。第2に、観測された加速度が設計上の想定値を最大で2.5倍も上回ったことで、この事実は地震動の評価方法にも問題があることを強く示唆している。このような二重の意味で耐震性は破綻したのである。 ところが、原子力安全・保安院は、16日付文書で東電に対し、地震観測データの分析と「今回の地震に対する安全上重要な設備の耐震安全性の確認」を要求している。原発設計時の基準を超えているにもかかわらず、「耐震安全性を確認」するとはどういうことか。それは、設計時の基準を超える揺れだったが、設備には影響がないということを確認することになる。これではまるで、設計時の耐震基準そのものがあってなきが如くである。甘利経産大臣は、東電社長に対し、「すぐに運転再開はしないよう」指示したという。しかし、この保安院の「耐震安全性の確認」は、ほとぼりがさめた頃に運転再開するための条件を整備するよう求めているのと同じことだ。 今回の地震で示された想定外の揺れの測定という事実に基づけば、柏崎刈羽原発は閉鎖する以外にない。 □ 7号機の主排気筒からヨウ素等の放射能が放出されていた−燃料棒は破損してないのか 地震から1日たって、東電は7号機の主排気筒からヨウ素131、同133、クロム51、コバルト60の放射性物質が検出されたと、柏崎市災害対策本部に連絡したという[下記記事参照]。まったく許せないことだ。16日の夕方には、テレビ局の電話インタビューに対して、「排気筒からの放射能をモニタしているが異常はない」と答えた声が全国に放映された。これは全くウソだったということになる。 ヨウ素133は半減期がわずか21時間である。7号機は稼働中だった。地震による緊急停止で制御棒が挿入されたときに燃料棒が破損して、ヨウ素が放出された可能性もある。これらの点について、東電は全ての事実を明らかにすべきだ。 ◎排気筒から放射性物質検出=廃棄物棟ではドラム缶倒れる−油漏れも・柏崎刈羽原発 7月17日16時1分配信 時事通信 □6号機での放射能漏れ−「環境に影響なし」は本当か 今回の地震によって、定検で停止中の6号機では、原子炉建屋の3階と中3階の床に放射性物質を含む漏えい水が確認された。東電は、16日の午後10時になってはじめて、放射能が海に放出されたと発表した。原子炉建屋4階にある燃料取り替用のプールの水が、激しい揺れによって飛び散り、それが階下に漏れたと想定している。それらがどうやって排出管を通って海に放出されたのか等については調査中という。しかし、「安全上問題はない」「環境への影響はない」と繰り返している。しかしこの「影響なし」は本当なのだろうか。 ◎東電がいう「影響なし」の根拠について、確認しておく必要がある。[7月17日付保安院文書] ・東電が保安院に報告した数値は ・3階で確認された漏えい量0.6リットルに含まれている放射能量2.8×10の2乗Bq ・中3階 〃 0.9リットル 〃 1.6×10の4乗Bq ・海に放出された量 約1.2トン 〃 約6.0×10の4乗Bq ・東電の「影響なし」の根拠 ・「希釈によって3月間あたりの周辺監視区域外の濃度として2×10マイナス10乗Bq以下と推定」 ・これは法令で定められている「放出濃度限度である0.2Bq/p3を十分下回る」 ◎話を分かりやすくするために、単位をリットルにそろえてみると下記のようになる。 ・3階で確認された漏えいの1リットル中の放射能濃度 約470Bq/リットル ・中3階 〃 約18,000Bq/リットル ・海に放出された 〃 約50Bq/リットル 中3階で確認された放射能濃度18,000に対し、海に放出された50は、360分の1に薄まっている。東電は「漏えい水が発電所内の排水経路を通じて海に放出されたことを確認した」として、上記数値をあげている。漏えい水の放射能濃度に比べて海に放出した分の放射能濃度がこんなにも違うのはなぜか。海に放出した1.2トンには、他の水などが含まれていたのか等、東電は明らかにすべきである。 そして、この50Bq/リットルは、(1)海で薄められ、(2)さらに法令で定められている報告は3ヶ月平均なので、3ヶ月に薄めることができるため、法令で定められている濃度限度(200Bq/リットル)以下だとして「影響なし」と言っているのである。 これに対し保安院は、「東京電力鰍フ推定が妥当であることを確認しました」と発表し、問題なしとしてしまっている。 東電は、建屋内で確認された放射能濃度に比べ、海に放出した放射能濃度があまりにも低いことについて、具体的に明らかにすべきだ。 □原発のモニタは地震発生から約1日半も働かなかった 柏崎刈羽原発から放出されている放射能について、モニタの数値がインターネットでも常時見ることができるようになっている。新潟県の環境放射線監視システムで、確認できる。モニタは、空気中の空間線量、排気筒モニタ、海水モニタ、発電機出力、風向き、風速のデータが表示される。しかし、地震発生直後から、これらモニタは一斉に表示されなくなり、17日午後になってやっと表示されるようになった。 下図は、17日の午後4時10分のモニタ値が表示されているが、地震直後後は数値が空欄のままだった。 モニタは、地震等によって原発に異常が生じていないか、放射能が大気や海に放出されていないかを知るために重要なものである。そのモニタが「伝送異常」のためとして約1日半も働かなかったことは全く異常である。重要なモニタ値が表示されないということは、一体どれだけの放射能が地震直後に放出されたのか等を確認する手だてがないということでもある。地震などの異常時にこそ働かなければならないモニタが全く働かなかったのはなぜなのか、東電は明らかにしなければならない。 □東電は全ての情報・データを即刻公開せよ 東電は、都合の悪い情報を隠している。海への放射能放出も午後10時になってはじめて発表するという始末だ。稼働中だった3号機の変圧器の火災については、原因も明らかになっていない。さらに、今日になって、排気筒からヨウ素等の放射能放出が報道されはじめている。 また、7号機の固体廃棄物棟内のドラム缶約100本が転倒し、2〜3本の蓋が開いていたという。さらに、昨日の発表では、1・2号機の使用済み核燃料貯蔵プールで、プール水を循環させるポンプが停止し、水位低下の警報が出た。ポンプで水を循環できなければ、熱を発している使用済み核燃料棒が高温になり、危険な事態にもなる。余震の影響と考えられるが、3号機の原子炉建屋に設置されている圧力逃し窓(ブローアウトパネル)も破損されているという。また、原発敷地内の道路には大きな亀裂が入り、敷地内の土砂が崩れている生々しい様子がテレビや新聞で報道されている。 ◎地震で敷地の一部に亀裂が走る柏崎刈羽原子力発電所=16日午後1時57分、本社ヘリから内林克行撮影(毎日新聞) ◎敷地内の土砂崩れの写真[同上] しかし東電は、具体的な情報をいっさい公表していない。マスコミの報道によって、断片的な情報が流れているだけだ。このような状況では、もっと危険なことが原発内で起きているのではないかと疑うのが当たり前だ。7機の原発の冷却は保たれているのか、大気と海に放出した放射能はどれほどなのか等々、具体的な情報とデータを即刻明らかにすべきだ。 柏崎刈羽原発で発電される電気は全て首都圏に送られている。新潟県は東北電力の管内であり県民は柏崎刈羽原発の電気を使っていない。にもかかわらず、震災と原発による放射能汚染、すなわち原発震災を被るのは地元の人々だ。 今回の地震で柏崎刈羽原発の7機全てが止まっても、首都圏で大規模な停電等は起きていない。このことは、7機全ての原発を止めても、節電などの徹底によって、電力需要はまかなえることを示しているし、まかなえるようトータルな節電・省エネをやる以外にないことを示している。 (07/07/17UP) |