原子力安全・保安院への要望と質問
大飯3号機原子炉容器出口管台溶接部の傷に関する安全判断について


原子力安全・保安院長  薦田 康久 様
地域原子力安全統括管理官 原山 正明 様

2008年10月27日
提出8団体

 関西電力(以下、関電)の大飯3号機では、心臓部というべき原子炉容器出口管台に予想もしなかった深さ約20oもの傷が生じました。その傷の深さは検査で同定できず、その傷が生じ進展した原因は把握されておらず、さらに、従来の復旧対策も今回は先送りされて大きな研削穴があいたままです。そのような状態で11ヶ月運転に入ることに、私たちは強い懸念を抱いています。
 ところが、この深い傷に関する関電の原因判断や対策等ついて、貴院は10月13日の福井県原子力安全専門委員会において、資料No.2-1(以下、資料2-1として引用)で妥当なものとの見解を示しています。しかし、その判断の法的根拠が示されていません(9月29日の原子力安全委員会に提出された資料でも同様です)。
 そのため、まず下記の要望事項に応えてください。さらに、貴院の見解について以下に質問しますので文書で回答をしていただくよう要請します。法的根拠についてはその該当法規の条項ばかりでなく、いわゆる学協会規格の該当条項をもコピーして渡してくださるよう要請します。


要  望  事  項

 関電の「原因と対策」を妥当とした貴院の評価を撤回し、くぼみのある状態のままで11月に運転再開することを容認しないでください。

質    事  項

1.技術基準に基づく板厚について

(1)技術基準に基づく現在の板厚は53mmとなっており、これを変更する予定はないと関電は明言しています。しかし他方では「53mmを割り込んでもすぐに問題が起こるわけではない」(関電本社10月8日、関西電力原子力広報)という姿勢を示しているので、これがコンプライアンスの実態かと私たちは強く懸念しています。
 貴院としては、現行53mmは守るべきだとの立場から、関電のこの誤った姿勢を糺すよう指導すべきではありませんか。

(2)現在の実際の板厚は53.6mmなので、53mmまでわずか0.6mmしかありません。11ヶ月の運転中に割り込む可能性が高いと思われますが、その点はどう判断しているのですか。

(3)運転中に53mmを割り込めば、電気事業法第39、40条に規定される技術基準への適合に違反すると考えていいですか。

2.資料2-1の1頁「保安院の見解@ 推定原因」について

(1)PWSCCが発生するまでの時間は、従来関電は20万時間(約23年)程度だとの判断でした。それより著しく短い時間で発生したことについてはどう考えますか。

(2)2001年度に深さが同定できなかったほどの傷がわずか7年で20.3mmにも及んだという傷の進展速度についてはどう評価していますか。

3.資料2-1の2頁「保安院の見解A 対策」について

(1)ウォータージェットピーニング(WJP)については「応力の緩和効果が期待され」と書かれているとおり、この措置は傷が存在する場合にはそれを無くするものではないとの評価でよろしいですか。

(2)次回定検時に690系ニッケル合金で溶接することを「PWSCCに対する予防保全対策として妥当」だと判断していますが、なぜ運転開始までにこの対策を行うよう指導しないのですか。たとえば、8月27日付高浜3号機の蒸気発生器入口管台内表面の欠陥に関する貴院の見解では、「予防保全対策として内表面全周の切削部分について、より耐食性に優れた690系ニッケル合金溶接により復旧している」と評価しています。なぜ大飯3号機でも運転開始までに復旧するよう指導しないのですか。

4.資料2-1の3〜7頁「工事計画届出」及びその審査について

(1)関電は5月13日に板厚を70mmから64mmに変更し、そのわずか2ヶ月半後の7月30日には全体的には70mmに戻しながら、傷部分については53mmにしています。この経緯は、
@傷の進展に応じて工事計画届出の板厚を変えたこと、
A全周で53mmにしたのでは許容応力を上回るために局所的な板厚にしたこと
を示していると思われますが、そのとおりですか。

(2)このような板厚評価で妥当と判断した根拠となる法規を学協会規格レベルまで含めすべて示してください。

(3)工事計画届出の板厚が同一部位に2種類存在するようになりましたが、それが許される法的根拠を示してください。

(4)資料2-1の6頁の表に書かれている弾塑性解析について説明してください。弾塑性解析で妥当であればよいという判断の根拠となる法規を示してください。それはインコネル600溶接部に即した規定ですか。

(5)資料2-1の4頁(参考)にも指摘されているように、「技術基準を定める省令」第9条八イでは「全体的な変形を弾性域に抑えること」と書かれています。この規定との整合性について説明してください。

5.資料2-1の13頁「当院のスタンス」について

(1)「事業者は傷の深さが評価できなかったことを踏まえ、検出能力の向上による深さ評価技術の知見の拡充を図っていくこととしており」などとして、検査技術の向上を図っていくことを貴院のスタンスとしています。
確かに、今回の大飯3号の傷の深さは検査によっては把握できず、研削に研削を重ねることによってようやく全貌が把握できたものです。このことからいま早急に必要なのは、他にも同様の深い傷を見逃していないかどうかを詳細に調査することではないでしょうか。すなわち、今回の教訓を踏まえた水平展開となる検査を直ちに実施するよう、新たな指示を出すべきではありませんか。



提出8団体
くらしを見つめるひととき/グリーン・アクション/原発の危険性を考える宝塚の会/さよならウラン連絡会/脱原発へ!関電株主行動の会/日本消費者連盟関西グループ/毎月26日のランチタイムに関電前に集まる女たち/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会


連絡先
グリーン・アクション(代表:アイリーン・美緒子・スミス)
  〒606-8203 京都市左京区田中関田町22-75-103
  TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(代表:小山英之)
  〒530-0047 大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3F
  TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(08/10/30UP)