通報の遅れ、7月からの冷却水漏れ放置等、住民の命を軽視する姿勢糾弾! 全てのBWR原発の運転を即刻停止し、該当部分を徹底検査せよ! 浜岡原発1号炉は廃炉に! 事故に関する資料を全面公開せよ! 下請け労働者を被曝させるな! 経済性最優先の定検短縮・手抜き検査をやめよ! 老朽原発の延命反対!老朽原発の停止から、脱原発へ転換せよ! |
11月7日、浜岡1号炉のECCS系配管で大規模な破断事故が起こった。さらに2日後の9日には、圧力容器の底にある制御棒駆動装置からの冷却水漏れが明らかになった。炉心に直結する心臓部で、立て続けに重大な事故が発生した。 ECCS系配管の破断は、もしこれが事故時に起これば、炉心溶融という最悪の事態に直結する。冷却水漏れは、原子炉から、しかも制御棒の駆動系統から、直接水が漏れるという起こってはならない深刻な事態であり、BWR原発の構造的欠陥が老朽化によって顕在化したものである。国自身も「非常に重大なトラブル」と言わざるを得なくなり、中部電力が浜岡2号炉を止めざるを得なかった所に、今回の事故の深刻性が現れている。浜岡1号炉は廃炉にすべきである。同型のBWR原発については即刻止めて、該当部分を徹底検査すべきである。しかし電事連の南会長(東京電力社長)は、「運転を止めずに安全確認ができる」と表明し、浜岡2号以外のBWR原発については、あくまでも運転を強行している。今回の事故に即せば、運転を停止せずにどうやって安全確認ができるというのか。これだけの事故を起こしてしまったにもかかわらず、国・電力は危険なBWR原発の運転をあくまでも続けようとしている。断じて許すことができない。 通報の遅れ、冷却水漏れ放置等、住民の生命と安全を軽視する中電 通報の遅れや、7月からの冷却水漏れの放置など、住民の生命を軽視するような中電の姿勢が厳しく糾弾されなければならない。配管破断事故の通報は約6時間も遅れた。住民は、テレビニュースによって、はじめて事故の発生を知らされた。さらに破断事故での通報の遅れが批判された直後であるにもかかわらず、冷却水漏れという重大な事実を約8時間も公表しなかった。国ですら「同じ1号機の水漏れであり、連絡は早くしてほしい」と言わざるを得ない程のひどさである。確信犯的な事故隠しという他ない。さらに中電が一部住民に対して「緊急事故説明会」を開いたのは、事故発生から5日もたってからである。しかも、この説明会で「事故が起きた時点での一報を」という住民の要求を「現場の状況を把握するのに時間がかかった。放射能が外に漏れたわけではない」と切り捨てた。 中電は当初、「炉水漏れはこれまでなかった」と言明していた。しかし報道関係者に追及されて初めて、15日に、「漏水は7月ごろから」という事実を公表した。経産省の原子力安全・保安院は「漏れはこれまでなかった」を鵜呑みにするていたらくである。中電は、毎日70リットル以上の冷却水を4ヶ月以上に渡って漏らし続けていたのである。冷却水漏れを示す水量の増大を知りながら、「夏特有の傾向」として、冷却水漏れの可能性を一切検討せず、何の調査も実施してこなかった。破断事故後の点検によって偶然見つかったから良いようなものの、そのまま放置していれば、もっと深刻な事態に至った可能性もある。 ECCS系配管の破断は極めて重大−事故時であればECCSが働かず大惨事へ 今回の破断事故は、緊急炉心冷却装置(ECCS)の蒸気配管につながる、余熱除去系配管で起こった。熱交換器側の弁手前のエルボを二つ重ねてつくった段差部分が破断箇所である。外径約16.5p、厚さ約1.1pの炭素鋼管が、内側から破裂したように破壊。熱交換器側では上側のエルボから約90cmの水平に延びた配管の一部が吹き飛んだ。破壊時の勢いで、事故部につながっていた原子炉側の配管は、大きく曲がってしまった。 この配管は、高圧注入系(HPCI)のポンプ起動用の蒸気配管とつながっている。中電は、弁を段階的に開け、高圧注入系の起動試験を行っている最中に事故が発生したとしている。ECCSは、炉心の空だきを防ぐ最後の命綱であり、ECCS系の配管における破断事故は、極めて重大である。 浜岡原発は、東海地震の危険性が再三再四指摘されてきた地震多発地帯に建てられている。この破断が試験中ではなく、地震による事故時に起こっていたらどうなっていたか。蒸気が抜ければ、ECCSのポンプを駆動するタービンが動かせない。そうなれば、炉内に冷却水を送りこむことができず、炉心溶融に至るのである。チェルノブイリ事故のような最悪の事態を招いた可能性も否定できない。中電は、ECCSが動かない状態で原発の運転を続けてきたことになる。首都圏を含む多くの住民を重大事故の危険にさらしてきたのである。「放射能が外に漏れたわけではない」ではすまされない。 破断事故の要因の一つとして、蒸気と水の2相状態による熱疲労の可能性が浮上 破断の原因は当初、ウォーターハンマーによる衝撃だとされていたが、破断部分が蒸気と水の二相にさらされる箇所であったことから、熱疲労によるものとの見解が浮上している。破断した配管部は、蒸気凝縮モードライン配管と呼ばれる箇所で、まっすぐだった配管を水を貯まりやすくするため、93年にわざわざL字型に交換したものである。報道によれば段差の「上側は約280度の高温蒸気で満たされ、下側は数十度低い温度の水で満たされていた」とのこと。この2相の境界線が上下することによって、熱疲労が蓄積し、疲労亀裂が広がっていたというのは、自然な見方である。破断面の詳細な調査結果を公表させ、亀裂や減肉、腐蝕等の状態を明らかにさせなければならない。 ウォーターハンマー現象は起こったのか? しかし、熱疲労によって生じたクラックが70気圧という内外圧力差のみで破断したのか、あるいはやはり、ウォーターハンマーのような衝撃があったのか等は、不明である。ウォーターハンマーは、例えば美浜3号の主蒸気管で定検中に起こっているが、熱い蒸気が冷たい水に触れ凝縮して圧力が急減し、そこに水が押し寄せることによって起こる現象である。もしこれが起こったとすれば、考えられるのは、熱交換器側のバルブが操作ミスなど何らかの理由で半開きになり、L字部に貯まっていた水が減ってそこに熱い蒸気が押し寄せたことである。これとは別に、高圧注入系のバルブを開いたためにL字部が減圧し、減圧沸騰したことも考えられるが、この場合にそれほど爆発的な力が起こるものだろうか。いずれにせよ、これまでの試験では起こらなかったほどの強い破壊力がなぜ働いたのかが問題になる。これらの疑問に答えるために必要な情報は明らかになっていない。バルブの操作手順や、配管内や温度の変化等、起動試験の詳細なデータを明らかにさせなければならない。 現行の定期検査では、熱疲労等による事故の前兆を発見することはできない。 経済性最優先の定検短縮・手抜き検査をやめよ! 事故を起こした配管は交換から8年で破断した。老朽化というよりも、想定を超えるような、激しい疲労が蓄積したという側面が強い。少なくとも水蒸気と水の2相状態による熱疲労は一つの大きな要因としてあったことは間違いない。国の原子力保安院は9日、同種構造の配管を持つ、浜岡1号以外のBWR原発14基の点検を指示した。しかし、熱疲労が原因だとすれば、蒸気凝縮モードライン配管だけでなく、水と水蒸気の2相状態が存在しうる可能性のある部位すべてが問題になる。また破断部は、定検でも検査項目に入れられておらず、配管に巻かれた保温材の上からの目視確認だけで、超音波による探傷検査も何もしていなかったのである。これでは、疲労亀裂などの前兆現象を発見することは絶対にできない。現行のずさんな手抜き検査が事故の一因である。蒸気凝縮モードライン配管および、水がたまるような配管を持つ全BWR原発を即刻止めて、当該配管を徹底検査すべきである。 わざわざ熱疲労の起こりやすい形状に配管を変更した理由は何か? 事故に関する資料を全面公開せよ! しかしなぜ、まっすぐな配管を、熱疲労が起こりやすいような蒸気凝縮モードライン配管に取り替える必要があったのか。これが大きな問題である。浜岡1号だけでなく、15基のBWRが1991〜2001年の間に高圧注入系と原子炉隔離時冷却系の配管を蒸気凝縮モードを持つものに交換するか、あるいは当初から採用している。直接の目的は、熱交換器を隔離している弁が蒸気の温度によって「たわみ、何度か蒸気が反対側に漏れた」ので、これを防ぐためと中電は説明している。段差によって水貯めを作り、弁を閉めた状態では、蒸気が直接弁に触れない仕組みに変えたのである。 しかし、単なる蒸気漏れ程度の問題が、各原発で次々と配管を取り替えなければならなかった原因であるとは考えにくい。「熱疲労」を起こす危険を冒してまで、交換せざるを得なかったもっと深い理由があるはずである。蒸気漏れが激しく、ECCSの注水能力を維持できないほど蒸気圧が低下するという問題があったのか、あるいは、中電が「定期検査ごとに弁を分解して破損などを点検する必要が出た」としているように、定険時間の短縮と費用の削減がその理由なのか。あるいは、もっと重大な別の理由なのか。 そこにはBWR原発の構造的な欠陥に根ざした、何か重大な理由が隠されている可能性がある。そうだとすれば、そこには設計ミスがあったということになる。その設計ミスを許した責任、こっそりと変更することを許した責任も問われることになる。なぜわざわざ熱疲労が発生しやすいような配管を使わなければならなかったのか、その理由がすべて明らかにされなければならない。破断面の調査結果、起動試験の詳細なデータも含め、事故に関するすべての資料を公開させなければならない。 原子炉・制御棒系統からの直接の水漏れは、老朽化によるBWR原発の構造的欠陥の顕在化 炉底部からの冷却水漏れは、原子炉からの直接の水漏れであり、「深層防護」という原発の安全性を根底から覆すような重大な事態である。圧力容器の底に穴をあけ、そこから制御棒を差し込むという、BWR原発の構造的欠陥が老朽化によって顕在化したものであり、老朽原発の末期的状態を示すものである。国の原子力保安院は、「想定していなかった事態で、非常に重大なトラブル」と言わざるをえなくなっている。駆動装置ハウジングが圧力容器を貫通する部位で水漏れが発生しているとし、老朽化による応力腐食割れの可能性を認めている。容器と支持管の溶接部、支持管と案内管の溶接部、案内管自体のいずれか、あるいは複数の部分での応力腐蝕割れであることはほぼ間違いない。 しかし、どのような形で割れているのか等、詳しいことはまったく不明である。これからカメラを入れて、漏洩箇所を調べるという段階であり、国の原子力保安院は、破断事故も含めて、「原因究明に数ヶ月はかかる」としている。 1988年の炉内計測装置からの冷却水漏れ事故を軽視した中電 浜岡原発1号は、1988年にも圧力容器の底にある炉内計測装置の取り付け部分に亀裂が生じ、冷却水の漏洩を引き起こしている。今回の事故とまったく同じ性質の事故である。この時、住民側は、制御棒駆動装置でも同種の事故が起こる危険性を指摘したが、中電は「制御棒駆動装置は口径が大きく残留応力が小さいため亀裂は入らない」と否定した。すでに1988年の事故が今回の事故の予兆であったのに、それを全く軽視し、浜岡1号炉を動かし続けてきた。1988年の事故の軽視が今回の事故につながっている。 浜岡1号炉は廃炉にせよ!同年代のBWR原発を即刻止めて、該当部分を検査せよ! 今回の場合は、大規模な漏水ではなかったが、炉底からの貫通部で、もっと大きな破断や破壊が起こる可能性はないのか。直径約15pの制御棒駆動装置の支持管部分が破断してすっぽり穴があき、そこから大量の冷却水が漏れるような事態は本当に起こらないのか。その時同時にECCS系配管での破断が起こればどうなるのか。 炉底の溶接部の亀裂など、事前に検査することはできない。事故が起こって始めて分かるのである。 原子炉の底が腐り始め、冷却水が漏れている。もはや末期的症状である。浜岡1号炉は廃炉にすべきである。同年代のBWR原発については即刻止めて、該当部分を検査すべきである。また、炉内計装に関してはPWRにも同様の問題があることを指摘しておきたい。 下請け労働者を被曝させるな! 浜岡原発の圧力容器の底部は、白血病を発症し、若くして亡くなった嶋橋伸之さんが、過酷な被曝労働を強要された場所でもある。88年に炉水漏れ事故を起こした中性子計測装置の保守点検が彼の仕事だった。彼の放管手帳は定検の度に被曝量が増大していったことを示している。原発の老朽化にともなって確実に汚染の増大があったことを示す記録であり、また88年、89年に最大となる嶋橋さんの被曝記録は、88年の事故の汚染の酷さを示すものである。 事故の原因調査と同型炉の検査にあたっては、これ以上、下請け労働者を被曝させてはならない。 国・中電は事故に関する情報を適宜・全面公開せよ 今回の事故の重大さは、浜岡原発1号炉のみにとどまらない。当該部分に同じL字型配管を持つ原発、熱疲労が起こりやすい蒸気凝縮モードライン配管をもつ原発、老朽炉BWR原発、全てのBWR原発の安全性を根底から問うものである。さらに、経済性最優先の定検短縮・手抜き検査と原発の老朽化が事故の危険を高めていることを示している。こちらはBWRだけの問題ではない。PWRでは、温度の違う水が混在する境界付近での熱疲労破壊が頻発しており、原子炉容器の蓋に取り付けられた制御棒案内管のひび割も頻発している。老朽化はBWRだけでなくすべての原発に関する現実的な差し迫った問題となっているのである。 だからこそ、電力会社は、今回の事故が他の原発に波及することを最も恐れている。中電は、地元の怒りと、海山町住民投票を前にして浜岡2号炉の運転を停止せざるを得なかった。電事連会長は、「運転を止めずに安全確認できる」と発言し、波及をくい止めようとしている。国の原子力保安院は、自らが原因調査を指揮するという異例の措置を取り、情報を一手に握ろうとしている。 事故の原因究明はこれからであり相当な日数を要すると言われている。事故に関する情報を適宜・全面公開するよう要求しよう。住民の命の軽視糾弾!浜岡原発1号炉は廃炉に!全てのBWR原発の運転を即刻停止し、該当部分を徹底検査せよ!老朽原発の延命反対!の声を、国・中部電力・電力会社に対してあげていこう。 |