「(技術基準の)53oを割り込んでもすぐに問題が起こるわけではない」(関電広報10月8日)
あれほど繰り返した「コンプライアンス」の姿勢などみじんもありません


大飯3号機の原子炉容器出口管台溶接部の
深さ約20oもの大きなくぼみを残したままでの運転を認めないでください
要  望  書

福井県知事 西川一誠 様
福井県原子力安全専門委員会 委員各位様

2008年10月10日

 関西電力は、大飯3号機の原子炉容器出口管台溶接部で見つかった深さ20.3oにも及ぶ応力腐食割れについて、研削後のくぼみを補修することなく、11月上旬にも運転を再開すると表明しています。
 私たちは、このような前代未聞の補修なしの運転再開について、なんと危険な運転をするのかと驚嘆すると同時に、このような運転が許されてはならないと強く感じています。
 私たちは10月8日に、大阪市内で関西電力と交渉を持ち、この大飯3号機の問題をとりあげました。関西電力の資料では、くぼみ部分の肉厚は53.6oで、この部分の必要最小肉厚は53oとなっており、技術基準を割り込むまでにわずか0.6oしかありません。11ヶ月の運転中に、ひび割れが発生・進展し、技術基準を割り込む可能性を否定することはできません。
 関西電力は、「ウォータージェットピーニングを実施するので、傷の発生は防げると思う」と希望的観測を述べるばかりでした。しかし、大飯3号機の約20oにもおよぶ傷を、関電は当初「傷の深さが評価できない非常に浅いもの」と評価していたように、UT(超音波探傷検査)の性能には限界があります。関西電力の評価では、UTでは約3o以上の傷でなければ確認できないこと、さらにECT(渦電流探傷検査)でも0.5o以上の傷でなければ傷の有無を確認できないとしています。このことは、既に現在でも溶接部には微少な傷が存在する可能性を示しています。「ウォータージェットピーニングを実施」しても、微少な傷の発生・成長を完全にくい止めることはできません。
 わずか0.6o以上に傷が進展すれば、技術基準に違反した違法な運転となります。そのような可能性があるにもかかわらず、運転を再開するなどもってのほかです。関電は交渉の場で、「(技術基準の)53oを割り込んでもすぐに問題が起こるわけではない」などと語り、あれほど繰り返していた「コンプライアンス」(法令順守)の姿勢など、みじんもありません。
 大飯3号機のひび割れは、原発の心臓部である原子炉容器の管台溶接部で生じているものです。放射線も強いため補修は困難を極め、下請け労働者に多大な被曝を強要します。補修方法そのものも確立していないため、補修を次回定検に先延ばしにしていますが、補修方法やそのための工具が1年で確立されるという確たる見通しはありません。
 ただただ原発の稼働率を上げるためだけに、くぼみを残したままでの危険な運転を強行しようとしています。美浜3号機事故、鉄塔倒壊事故により死者まで出した関電の姿勢は、やはり現在も、安全性をないがしろにするものです。補修や取替が不可能な場合は、国の技術基準を満足することはできず、運転を停止するべきです。
 そもそもこの大飯3号機は異例ずくめです。削っても削ってもひび割れが続いていたため、技術基準に基づく必要肉厚を薄く変更し、さらに、それでも傷が深いため、傷の部分だけさらに必要肉厚を薄く変更し、一つの部位で2つも必要肉厚が存在するという強引な手法をとりました。このようなやり方自体が国内では初めてのことです。このまま大飯3号機の運転再開を認めれば、この異例の手法が常套手段と化し、危険な運転が平然と行われる事態になることが強く懸念されます。
 国内PWR原発では、インコネル600製部材の一次系配管・溶接部で応力腐食割れが多数発生しています。今回、大飯3号機でくぼみを残したままでの運転を認めれば、今後、他の原発でも同様の危険な運転が繰り返されることが懸念されます。
 大飯3号機は2004年の美浜3号機事故直前に、原子炉容器上蓋管台(インコネル600製)で貫通割れが生じていました。この貫通割れ事故で、インコネル600製の他の部位を検査しておれば、当時でも今回の傷は発見できたはずです。その意味でも、関電の安全管理の責任が問われるべきです。
 そもそも、なぜ大飯3号機のAループで深刻な応力腐食割れが生じたのか、その肝心の原因が特定されていません。関西電力がまずやるべきことは、徹底した原因究明です。

要  望  事  項

大飯3号機の原子炉容器出口管台溶接部の
深さ約20oもの大きなくぼみを残したままでの運転を認めないでください。


2008年10月10日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(08/10/10UP)