福井県知事 西川一誠 様 原子力安全・保安院は4月20日に、総点検結果に対する評価と措置を公表しました。しかしその措置は下記で述べるように余りにも電力会社寄りで甘く、これではとても福井県民をはじめ人々の安全が守れないと私たちは深く憂慮します。そのため、日本原電と関西電力に対し、福井県として国とは独自の監視体制を強めていただくよう要望いたします。 ◆日本原電・敦賀2号の格納容器検査妨害の問題について 日本原電が1997年7月に敦賀2号機で行った原子炉格納容器漏えい率検査の偽装工作に対しては、4月20日の原子力安全・保安院評価では、定期検査の妨害により電気事業法54条違反および保安規定49条違反だと認めています。この場合、過去の事例に照らせば、当然1年間の運転停止処分がなされるべきです。事実、東電の福島第一1号機では、閉止板をとりつけるなどして偽装工作をしたことに対し、2002年に1年間の運転停止処分を受けています。 しかし、今回の敦賀2号機に運転停止処分はなく、保安院は、ただ保安規定の改定(経営責任者に直ちに報告する体制を構築すること)などを命じただけです。 原電の場合、さらに厳しい処分を受けて当然だという二つの事実を指摘することができます。まず、2002年の福島第一1号機の運転停止処分に伴う保安院の点検指示を受けて、原電は過去10年間にわたって不正の有無を調査しています。ところが、1997年の検査偽装はこの点検期間に入っているにも関わらず、原電はこれを見逃していました。さらに、今回の保安院の評価で最も罪が重いという分類に入っている案件が11件ありますが、そのうちの5件もが原電の原発で起こっています。 法令に違反しても罰を受けないような監督方式で安全が守られるでしょうか。 ◆関西電力に対する保安院の措置について 関西電力は、美浜1号機において電気事業法に違反して溶接事業者検査を受けないまま配管を使用していました。しかし4月20日の保安院評価では、単に「既に所要の手続きが実施済み」と記述しているだけで、電気事業方違反にはまったく触れていません。これでは、溶接のやり直しが行われたという事実をただそのまま認めているだけです。 大飯3号機ではキャビティ水位のデータ改ざんなどが行われながら、このことが当直課長引継簿に記入されなかったという明らかな保安規定違反がありました。ところが保安院は、これは保安規定違反ではないという関電の見解をただそのまま認めています。 さらに大飯3・4号機では、温排水の温度に明らかなデータ改ざんがありながら、改ざんではないという関電の主張に、保安院は何も異論を唱えていません。 関電は今回明らかになった不正問題の原因を現場のせいにして、会社そのものの管理体制に原因があることを認めていません。また、Dランクについてはすべて安全協定違反ではないとの見解をとっています。 今回明らかになった関電の問題・姿勢を見れば、美浜3号機の運転再開が認められた前提が崩れているのは明らかです。また美浜1号機では、別にキャビティ水の深刻な水漏れがおこるなど、明らかに老朽化が進んでいます。これではいつまた大きな事故が起こっても不思議ではない状態です。まずは美浜1号機と3号機は閉鎖すべきだと考えます。 ◆実効力ある規制を放棄した国の姿勢で、老朽炉の危険を防げるでしょうか 国の今回の姿勢は2002年当時と明らかに異なっています。今回停止処分等を出さないのは、直接にはこれ以上の原発利用率の低下を防ぎ、「原子力立国」の看板が足元から揺らぐことを避けるためでしょう。 2003年の法改正により、原発機器の具体的劣化を見ることより、電力の自己責任による品質保証体制の確認(コンプライアンスなど)の方に重点が置かれる傾向が強まっています。しかし、現実には原発の老劣化は進み、いたるところで事故や故障が頻発しています。コンプライアンスを何度唱えても、老朽化の実態が改善されるわけではありません。さらに今後、電力の「自主保全」を基礎にした定検の短縮等により、原発の危険性がいっそう高まるのは必然です。 国の管理監督に信頼の置けないことが今回如実に明らかになりました。福井県の独自の監視が非常に重要になってきていると私たちは考えます。そのため以下の点を要望いたします。 要 望 事 項 1.敦賀2号に対して運転停止処分をするよう国に働きかけてください。2.老朽原発に関する関西電力の管理体制を厳しく監視するとともに、美浜1号機と美浜3号機は閉鎖するよう関電に要求してください。 2007年5月8日 グリーン・アクション(代表:アイリーン・美緒子・スミス) |