日本原電・敦賀2号機(PWR)における格納容器漏えい率検査の偽装
原子力安全・保安院は直ちに運転停止措置をとれ


 日本原電は1997年7月、敦賀2号機(PWR)の原子炉格納容器漏えい率検査において、偽装工作を行って国の検査を妨害していた。この検査では、事故時を模擬するように格納容器内圧力を高めたとき、外部への漏れ率が限界値以下であることを確認する。ところが原電は、漏れ率が高かったため、図のように漏れている弁の外側に「閉止板」をとりつけて漏れを低くするよう偽装し、立ち会った国の検査官を欺いていた。
 4月20日の保安院評価では、この件は定期検査の妨害で電気事業法54条違反、保安規定49条違反だと認め、最も重い9プラント・11件の中に入れている。これはやはり閉止板をとりつけるなどして、2002年に1年間の運転停止処分を受けた東電の福島第一1号機の場合と同じ偽装である。しかし今回は、運転停止処分はなく、ただ経営責任者に直ちに報告する体制を構築するなどの保安規定の改定を行政処分として命じたなどだけである。原電は法令に違反しても何も罰を受けていない。
 東電の件について、2002年10月22日の原子力安全委員長談話は次のように述べている。「この原子炉格納容器は、・・・万一の事故が発生した場合に環境中への放出を抑制するための重要な機器であり、安全確保の根幹に関わる機器である。また、定期検査は、国が行う安全確認のうちで最も重要な手段である。したがって、本試験はこの定期検査の中でも、国の検査官が直接立ち会いで行うという、高度の厳密性が要求される試験である。しかるに、本件は、原子力発電所の安全確保の一義的な責務を有する事業者である東京電力(株)が、国の定期検査を欺くことを意図して、検査を請け負った(株)日立製作所に対して不正を依頼するという、国の安全確保行為を欺くものであり、断じて許されないことである」。「本件は、意図的に法律違反を行うという、これまでの一連の事案に比べて極めて悪質なものであり、言語道断という他はない」。この判断がどうしてそのまま今回の原電に当てはまらないのだろうか。
この件の法的判断について、原子力安全・保安院は2002年12月24日付で、保安規定違反であると指摘した上で、「本件については、放射性物質の放出など環境への影響があったものではないが、原子炉の安全機能上、極めて重要な部分において意図的な偽装が行われるという前例のないものであり、11月22日に聴聞の実施等、所要の手続きを経て、11月29日に1年間の原子炉運転停止処分を行った」。これは「前例のない」を除いてそのまま今回の原電に当てはまる。
このとき保安院は2002年10月25日付で、この偽装事件を踏まえた「総点検追加指示」を出し、原電は過去10年間まで遡った点検を行い、その結果を2003年3月15日に最終報告している。この点検期間に1997年の偽装工作は入っていたにもかかわらず、何も問題はないと報告している。これでは「前例のない」場合より、ずっと罪が重い。
前記安全委員長談話は保安院に対しても次のようにいう。「また、原子力安全・保安院においても、このような不正を見抜くことができなかったことについて、率直に反省するとともに、・・・著しく損なわれた原子力安全に対する国民の信頼回復について、万全を期すこととされたい」。今回、保安院は自らの責任を完全に棚上げにしている。保安院としては、まずは敦賀2号に対する運転停止処分を直ちにとることで、その批判に応えるべきである。