アレバNC社の安全管理体制に重大な欠陥
仏MOX工場で続くINESレベルの事故
メロックス工場でのMOX製造契約を破棄させよう


 現在、日本のプルサーマル用MOX燃料はすべてフランスのアレバNC社(旧コジェマ社)のメロックス工場で製造されるよう準備が進められているが、そこに重大な問題が発生している。
 関西電力は、2004年3月にメロックス工場でMOX燃料を製造する基本(仮)契約を結び、7月12日に監査報告書を国に提出したが、本契約を前にした8月9日の美浜3号機事故によってプルサーマル計画は棚上げ状態になった。しかし、今年2月9日の美浜3号機の営業運転再開を節目に、再び計画を浮上させようとしている。九州、四国、中部の各電力会社はすでにメロックス工場で製造する本契約を2006年に締結し、MOX燃料製造に向けた準備を進めている(中部電力の浜岡4号はまだ政府の許可がおりていない)。
 プルサーマルを阻止する運動にとって、現在の焦点は、アレバNC社とメロックス工場の品質保証の不備・欠陥を具体的に明らかにし、日本向けMOX燃料の製造に強いけん制をかけることである。まさにそのアレバNC社の体質・品質保証に強い疑問を抱かせるような事態が発生していることを以下で紹介したい。

MOX工場の事故が示すアレバNC社のズサンな安全管理体制
 日本の電力会社がMOX燃料の製造を委託しようとしているアレバNC社は、昨秋のMOX燃料製造工場(ATPu)※1での事故により、フランス原子力安全規制当局(ASN)から品質管理と安全文化を見直すべく改善計画の履行を求められている。
 事故はカダラシュにあるATPu工場のMOX燃料スクラップを粉砕する工程※2で起きた。事故の約8ヶ月前の2006年3月、粉砕装置に核分裂性物質を投入する際に使われる計量装置が故障し、それ以来、物質取扱い手順を非公式に作成し、無認可で利用していた。
 そして、2006年11月7日、すでにMOXスクラップが投入されていた粉砕装置に重ねてMOXスクラップが投入された。勤務交替後の運転チームに、計量装置の故障情報が伝わっていなかったためである。粉砕装置には許可量を超える核分裂性物質が装填されたことになり、臨界状態に至るおそれがあった。今回は臨界状態には至らなかったものの、アレバNC社のズサンな核物質の管理体制が明らかになった。

※1:ATPu工場は仏原子力庁(CEA)所有のもと1964年に操業を開始し、高速炉用のMOX燃料を製造していた。1991年に旧コジェマ社が買収し、通常の原発用MOX燃料製造に転換し、2003年7月に商業用の製造を中止した。2005年に、米国PWR炉向けに余剰軍事プルトニウムを使ったMOX導入試験用のMOX燃料棒4体分が製造された。その後は、カダラシュ・サイトから発生するMOXスクラップからの仕様外燃料棒を製造していた。
※2:MOXスクラップは粉砕装置で粉状にされ、ATPu工場内で仕様外のMOX燃料棒に加工され、最終的にラ・アーグ再処理工場で再処理される。

仏規制当局は「安全文化に重大な欠陥」と指摘し、事故を「INESレベル2」と認定
 仏規制当局ASNは、ATPu工場の事故について「事業者の安全文化における重大な欠陥が明らかであり、品質管理における人的誤りや失敗の蓄積を確認した」と指摘し、2007年1月9日、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル2の事故に分類した。また、ASNは、「運転とメンテナンスの手順及び関連する制御の適用に関する遵守」「核物質管理」「運転班配属の追跡及び指示の伝達」に「重大な機能不全」があると評価している。さらに、ASNへの事故報告に72時間かかったことは「容認できない遅れ」であり、どんな場合でも48時間以内に知らせるべきだと指摘した。
 INESレベル2の事故は、一般的にフランスにおいて公に注目されるレベルの事故である。日本では、美浜2号機蒸気発生器細管破断事故(1991)がレベル2に分類されている。もんじゅ事故(1995)や美浜3号機二次系破損事故(2004)でさえレベル1なのだ。アレバNC社はこれほど深刻な事故を起こしているのである。

関電が実施した2004年6月の監査は無効
メロックス工場では監査期間中にINESレベル1、監査報告直後にレベル2のトラブル

 日本の電力会社がMOX燃料を製造しようとしているアレバNC社のメロックス工場でも、施設内の放射能汚染、作業員の許容線量を超える被ばく、放射能管理の失敗が相次ぎ、INESレベルの事故が頻発している。
 関西電力は、2004年6月15日から21日にかけてメロックス工場の監査を実施している。そして、2004年7月12日の報告書でアレバNC社の「品質保証活動は良好」と結論付けた。
 しかし、関電がまさに監査を行っていた最中の2004年6月16日に、メロックス工場ではINESレベル1のトラブルが発生している。廃棄物貯蔵建屋に許可された以上のプルトニウムを含む廃棄物が持ち込まれるという技術基準違反のトラブルが起きていた。関電の監査報告書にはこのトラブルについての記述は一切ない。また、その報告後間なしの2004年7月26日には、グローブボックス内で作業員が怪我をし、許容線量を超える被ばくをし、INESレベル2の事故と認定されている。
 2月15日の関電交渉では、関電は2004年6月のトラブルについて「知らない」と答え、監査時点で把握していたかどうかについて、まともに回答しなかった。アレバ社の重大なトラブルを検討せずに問題なしとした2004年の関電の監査報告は、メロックス工場の品質保証体制を証明したことにはならず、無効である。関電は、昨年のATPu工場での事故についても「情報誌で読む以外何も知らない」、「アレバ社に一々事情を聴取することもない」と無責任な態度であった。
 仏規制当局から「安全文化に重大な欠陥」があると指摘され、改善計画を要求されているアレバNC社の品質保証体制を信用することはできない。こんなアレバNC社とのMOX燃料製造の基本契約をただちに破棄するよう関電を追及していこう。

メロックス工場では他にも重大なトラブルが・・・・
2000年11月 MOXペレット研削作業場のエアロック装置内が放射能汚染。旧コジェマ社が事故の原因分析と調査の実施を怠った。(レベル1)
2001年 3月 MOXペレットの製造作業から生じる粉塵を集めていた除塵フィルタから許可量を超えるプルトニウムが検出された。同様の事故が1999年9月にも発生している。 (レベル1)
2004年10月 グローブボックス外で作業員が手に怪我をして被ばく。(レベル1)
2005年 9月 作業員が年間許容線量の4分の1にあたる放射能をたった1ヶ月で受けていた。 (レベル1)
2005年12月 出荷される新燃料集合体を管理している区画の入口の気圧が基準を超えた。同様のトラブルが2005年3月にも発生していた。(レベル1)