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阻止!玄海原発プルサーマル!
からつ環境ネットワーク代表 唐津市議 三浦正之


 九州電力のプルサーマル計画に対し、いよいよ古川県知事は年頭の挨拶で「早い時期に判断したい」と発言しました。プルサーマル最前線、九州の西北部・冷たい北風と浪荒れる玄界灘に面する玄海原子力発電所からの報告をお届けします。

 問われる「地域」
 2005年1月1日市町村合併により誕生した唐津市(グレー部分)は、玄海原子力発電所の「立地」自治体ではありません。しかし原発対岸には炉心から600メートルを切る集落もあります。
 また、地理的にも唐津市は玄海町をぐるりと取り囲んでいる上に、七つの離島を抱え、万が一の非常時・事故時の避難経路やその被害等について、決して無関係ではいられません。
 また、2004年には、合併した8町村のうち鎮西町・肥前町・七山村の3町村、原発南西に浮かぶ長崎県鷹島町で、プルサーマル計画反対の意見書がそれぞれの議会で採択されました。(七山村も2006年1月、唐津市に合併しました。)隣接町が反対意見書を提出するという動きは「市町村合併」があったからこそ、地域の最後の主張をとの想いで実現できたのだろうと考えています。
 特に唐津市と合併した九町村には、私たちの市民運動で「核燃料サイクルとプルサーマルに反対する」意見書採択の陳情を行い、ほぼ原文どおりもしくは核燃料サイクルを除いた内容の採択でした。当初、10の市町村で協議が進んでいた市町村合併から、玄海町が中途で離脱したことも採択に際し「感情的」に作用したようです。しかしこの意見書があったからこそ、合併後の唐津市の声がより大きく響くようになったと思います。
地理的状況からも、重要な判断の蚊帳の外にいるわけにはいかないのだという主張は広く共有されています。プルサーマル計画が浮上して以来、唐津市議会では「市民」の意思の取り扱いについて議論が続き、2005年12月議会では、全市議参加の「プルサーマルに係る特別委員会」がつくられ、議論がすすんでいます。この特別委員会が「判断」を示さない限り、先に佐賀県が判断を示すことはないだろうというところまで、知事に地域の存在を示すことが出来たと考えています。

 当初から県知事は、県議会や記者会見でも「唐津市の意見は尊重する。反映する。」と発言してきましたが、「意見書を採択した町村はもうない」「手続き上は唐津市の判断は不要」などとも議会で答弁しました。このような発言に対して、唐津市議会は意見を尊重するよう強く求める意見書を緊急採択し、唐津市長とともに県知事に届けました。知事は「言葉足らずだった」と陳謝しましたが、未だに唐津市民の意思を問う方法、判断に反映させる方法は具体化されていません。
 そのために9月の唐津市議会において、安全協定の締結を求める一般質問を受けた唐津市長は「前向きに検討」を進め、他市の事例などを研究してます。
 浜岡や泊原発でも原子力関連施設の運転に関して、安全協定が「隣接」自治体とも結ばれていますが、地域防災や産業への影響など、隣接自治体にも、情報提供や防災対策・地域住民への理解活動など、様々な施策の拡充が必要だという認識が強く広がってきています。
 しかし、安全協定に基づいた手続き上「事前了解願い」が玄海町と佐賀県には出されるのに、協定を結んでいない唐津市には一切その意思が反映される機会は保障されていません。しかも、古川康佐賀県知事は「唐津市を含めて県である」としています。九州電力も佐賀県がどう判断するか、ということで唐津市との安全協定の締結を否定しています。
 また、唐津市という地域が主体的に住民を守るためにも、唐津市にも強い意思表示をすべきという点では、市民・県民の思いは共通しています。これは朝日新聞社のアンケートで8割を超える県民が「プルサーマルは唐津市の意思を問うべき」と答えたことで裏付けられました。

 プルサーマル阻止へ
 唐津におけるプルサーマルの阻止運動は、県知事に公開討論会開催を求めてきました。30万人を超えるプルサーマル反対署名の取り組みや市民主催の討論会(九電・国が出席を拒否した)や学習会も繰り返してきました。
・2005年3月長崎県鷹島町議会にてプルサーマルに関する意見書(中止を要望)可決
・意見書請願(郡部の町村)
・2004年6月旧唐津市議会、市への説明に消極的な国・九電等に対し「核燃料サイクルとプルサーマル計画に対する説明責任を求める意見書」を可決
・伊万里市議会、唐津市同様の説明責任を求める意見書可決
・2004年、反対意見書が相次いで可決。鎮西町・七山村議会(6月)肥前町議会(7月反対派を講師に議会勉強会、12月可決)
・2005年1月市民主催公開討論会→国・九電出席せず
・2月九電主催公開討論会
・3月唐津市長は議会答弁で「唐津市には中間貯蔵施設等は慣行や農業へのイメージを損なうなどの理由から今後も誘致する考えは無い」と答弁
・5月・9月漁民海上デモ
・10月国主催公開討論会
・12月プルサーマルに関する特別委員会の設置
・12月佐賀県主催公開討論会開催
 結果、昨年からの九州電力・国・県と、それぞれが主催しての3回の公開討論会を実施させることが出来ました。これらの運動は全国の市民運動、グリーンコープ生協さが、そして労働組合や平和運動センターの皆さんとともにつくられてきたものです。高木さんにご協力いただいたマンガパンフは、そういった署名活動や街頭での活動でなくてはならないものです。また、年末から多額のカンパを頂いて、「新聞一面意見広告」もほぼ全新聞に掲載することができ、反対運動への呼びかけに様々な反響が返ってきています。共産党系の団体もプルサーマル計画に反対する運動を続けてきています。また昨年、玄海町をのぞく唐津地区の四漁協による「反対海上デモ」が2回実施されたり、地域をあげてプルサーマル計画に反対するといった動きも出てきており、プルサーマル計画に対する関心が広がってきました。
 九州電力は、日本人初の宇宙飛行士毛利衛氏をCMに起用し、一日中ラジオやテレビ・町のミニコミ誌などいたるところで「いっしょに考えませんか?プルサーマル」とやさしく語りかけていますが、関心が高まるにつれて、反対の声もしっかりと見えるようになってきました。
 現在、県知事は、「必要性は理解した」「安全性について理解が進んだ」「論点は出尽くした」として、「討論会はもう開催しない」「今年早い時期に判断したい」と年頭に発言しました。玄海町長は、あとは「町民の理解」があればという段階のようです。まずは、今年の6月までに県知事に「YES」を言わせない運動をつくることが目標です。最終的には唐津地域での住民投票を提案・実現し、確実にプルサーマル計画を中止に追い込みます。そこでやはり、鍵を握るのが唐津市議会です。
 「プルサーマル特別委員会」は、突然、保守系会派(全45議席中37人の大会派)から提案されて、12月議会で設置されました。まずは3月までの「集中審議」として佐賀県主催の公開討論会への参加、九電の説明、国の説明、と続いています。今後どのような形で「判断」するのかは現状では全くわかりません。しかし唐津市には「集中審議」として判断を急ぐ理由はどこにもないはずです。3月議会までに「多数決」で賛否を問うということが行われないよう、慎重に審議する必要があると思います。
 さて、これまでにも佐賀県内だけではなく、全国的な「反対」の声・力の連帯を頂きながら、運動を続けることができました。特に安全協定や技術的な問題などではたくさんの情報を共有させていただいたおかげで、九州電力や国などと対峙することが出来ました。
 小山さんには何度も何度も足を運んでいただき、公開討論会のパネラーとしても私たち市民の声を声高に訴えて頂きました。そして、全国の脱・反原発運動に連帯する研究者・市民の皆さん、いつもありがとうございます!
 六ヶ所村での使用済みウラン燃料を使ったアクティブ試験で最初に使われるのは九電の使用済みウラン燃料です。九電のプルサーマルが動き出すことが、六ヶ所村の再処理工場を動かし、国内でプルトニウムを生産し続けることに直結するだけに、責任重大!がんばります!プルサーマル阻止にむけて!