六ヶ所再処理工場はガラス固化体を作れない?!
ガラス固化溶融炉は白金属元素でフン詰まり
高レベル放射性廃液が溜まり続ける危険性


 六ヶ所再処理工場のガラス固化溶融炉は、高レベル廃液から析出する白金族元素のためノズルが詰まってしまうという技術的欠陥を抱えている。ガラス固化体貯蔵建屋改造工事の安全評価問題のその向こうには、そもそも固化体をまともに製造することができないで廃液状態で溜まるという重大な問題が待ちかまえている。アクティブ試験に進むことのできる状況では到底ない。
 六ヶ所にあるガラス固化溶融炉の開発を行っているのは核燃サイクル開発機構であるが、驚くべきことに同機構自身、自らのガラス固化技術が未完成であることを認めている。サイクル機構は2003年9月、ガラス固化溶融炉の開発の進捗を評価するため、機構内に設置された研究開発課題評価委員会に中間評価を諮問した。同評価委員会は2004年1月に答申を出したが、その中では次のような意見が述べられている。「高レベル廃棄物の処分に関しては、高レベル廃棄物をガラス固化体にして、深地層に埋没することは国民にも知られている。しかし、そのガラス固化体を製造する過程の技術開発がまだ十分に開発されていないことを、評価委員になって始めて知った。大変重要な技術開発であるので、人員を適切に配置して、研究の成果が少なくとも5年以内に実ることを心から願っている」。サイクル機構の評価委員は、ガラス固化溶融炉の技術が未だ確立されていないので、今後5年間(2009年まで)かけて何とか解決の目途を立てて欲しいと提言しているのである。

フン詰まりを起こすガラス固化溶融炉−年間140本のはずが7年間でたった130本の実績
 六ヶ所再処理工場は基本的に仏コジェマ社の再処理工場(UP3)をモデルに作られている。しかし、なぜかガラス固化溶融炉については英仏と異なり、世界でもあまり実績のないドイツの技術をベースに核燃サイクル機構が開発したLFCM法と呼ばれる方式のものが使われている(英仏の溶融炉はAVM法)。LFCM法は、ガラスと廃液を混ぜたものに直接電流を流して加熱溶融させる方式である(右図)。ところが、この方式では、廃液中の白金族が析出して溶融炉の底に堆積する。そのため電流が白金族の方に流れてしまってガラスを加熱することができず、固化体容器に注入するノズルが詰まってしまうという欠陥を抱えている。また白金族だけでなく、溶融炉を形づくる耐火レンガから出たレンガ屑が炉底に溜まって目詰まりを起こすという問題もある。
 核燃サイクル機構は茨城県東海村で、六ヶ所に導入する溶融炉のパイロットモデルとなる溶融炉(TVF1号炉−六ヶ所の溶融炉の1/4の大きさ)を1995年から2001年にかけて稼働させたが、その運転実績は惨憺たるものであった。当初サイクル機構は、ガラス固化体を年間140本製造することができるとしていたが、運転開始直後、3体目の固化体を製造する途中ですでに目詰まりを起こした。その後も固化体の製造は計画通り進まなかった。アスファルト固化施設爆発事故によって97〜98年度は運転停止を余儀なくされたとはいえ、結局7年の稼働期間中にたった130本の固化体しか作れなかったのである。

フン詰まりは未解決のまま研究開発と並行してアクティブ試験・本格運転を行うというデタラメ
 核燃サイクル機構はTVF1号炉の運転結果を踏まえ、六ヶ所溶融炉と同規模の溶融炉を使った試験を6回行っている(第1次〜第6次モックアップ=実物大=試験)。これらの試験は炉の規模こそ六ヶ所のものと同等だが、放射性物質を用いない模擬試験であった。この一連の試験でも、白金族元素の堆積やガラス流動性の悪さ等、様々な問題が明らかとなった。
 またサイクル機構は、研究開発課題評価委員会の中間評価を受け、2004年7月に「研究開発課題評価(中間評価)の実施結果とその対応について」を公表した。これを見ると、今後5年かけて(2009年まで)試験を継続、「今後の溶融炉開発に向けたデータ収集を行」い、「白金族元素の堆積にいたるメカニズムを把握」するとしている。このスケジュールに従い核燃サイクル機構は、TVF2号炉を東海村再処理工場内に作り、「白金族元素対応技術実証」のための試験を2004年夏に始めたところである。日本の溶融炉開発は、白金族元素への基礎的な対応すら未だできていない段階にある。
 ところが、核燃サイクル機構の研究開発スケジュールによれば、東海村のTVF2号炉での実証試験と並行して六ヶ所再処理工場の実機溶融炉を使うアクティブ試験を行うことになっている(右図)。その後、2006年度からは営業運転に入るとされている。驚いたことに、東海村では試験運転と研究開発が続けられることになっているのに、その結果が出る前に、六ヶ所が営業運転に入るのである。
 もし仮にTVF2号炉の試験がうまくいったとしても、その内容が六ヶ所に反映されるのは、早くとも2009年以降になる。さらに、TVF2号炉は六ヶ所溶融炉の1/4の容積しかないため、その試験結果が、六ヶ所溶融炉にそのまま適用できるかどうかもまったくの未知数である。つまり六ヶ所のガラス固化溶融炉はまったく実証も何もされていない代物といってよい。アクティブ試験がぶっつけ本番となる。問題があっても六ヶ所溶融炉は見切り発車で動かす。プルトニウムの抽出が最優先、廃液処理については2の次3の次というのが推進側の基本姿勢である。


ガラス固化できなければ危険な高レベル放射性廃液が溜まり続ける
 ガラス固化体を製造できなければ、高レベル廃液は常に漏洩の危険性が伴う液体状態で溜めこまれることになる。六ヶ所再処理工場が本格稼働すれば、国内の原発が1年間に生み出した使用済み核燃料900dの9割に当たる800dが処理され、約400立方bの高レベル廃液が生み出される。この高レベル廃液には、日本中の原発から生み出された死の灰が凝縮されている。ほんのわずかでも環境中に漏れ出せば重大な放射能汚染が引き起こされる。
 アクティブ試験では約430dの使用済み核燃料が使われる。しかし、六ヶ所再処理工場のガラス固化溶融炉がまともに動く保証はない。アクティブ試験に入れば、危険な高レベル廃液が処理されず溜まり続ける危険性がある。通常ならば、430dの使用済みから215立方bの高レベル廃液ができることになる。イギリスNII(原子力施設検査局)はセラフィールド再処理工場における高レベル廃液の蓄積量を2015年までに200立方bに制限する決定を下している。イギリスの基準では、六ヶ所を動かすことなどできない状況だ。アクティブ試験に進むことは許されない。