東海村臨界被ばく事故裁判 6/22第13回法廷 いよいよ裁判は新たな段階へ−次回法廷(9/7)で原告側証人決定 |
「次の法廷で一括して証人採用を決定し、尋問の時間と順番を決めたい」。裁判長の声が法廷内に響く。傍聴席の堅い椅子の上で安堵の息を漏らした。いよいよ証人尋問が始まる。裁判は新しい段階に入る。強い実感が湧いてきた。東海村臨界被ばく事故裁判の提訴からほぼ3年。今回で13回目の法廷である。傍聴席は裁判を支援する人々で埋まった。 これまで、原告側はJCOと書面での争いを続けてきた。その過程で、争点が徐々に煮詰まってきた。原告の身体症状が事故後悪化したこと。その身体症状の悪化が被ばくに起因すること。また、事故を原因としてPTSDを発症したこと。JCOが主張する「しきい線量」は被害を否定する根拠とはなり得ないこと。JCOが依拠する国の線量評価は過小評価であること。中性子線の人体影響が従来考えられてきたものよりも大きいこと。等である。争点は明確になった。そこで今後は、証人を立てて立証する本格的な過程に入っていくのである。 原告側は、主治医、皮膚科の専門医、放射線関係の研究者、PTSDの専門家、計8名の証人を申請している。これに対して裁判所は、前回4月13日の法廷で原告側証人を基本的に採用する方向を示唆した。そして今回、次回法廷で証人を確定し、今後の審理計画の大筋を立てることを決定したのである。続いて裁判所と原告側の海渡弁護士・伊東弁護士との間で、次回法廷までに出す証人の陳述書について打ち合わせが行われ、次回法廷の期日は9月7日に決定した。 被告JCOは、準備書面(7)および同(8)の2つの準備書面を出し、原告が立てた証人全員に対して、証言は不要との主張をおこなっている。特にJCOは、原告の受けた被ばく線量と中性子線に関しての証人である山内知也氏(神戸大学海事科学部助教授)と、低線量被ばくの生物影響に関する証人である市川定夫氏(埼玉大学名誉教授)に集中的な攻撃を加えている。が、内容は何もない。JCOの主張は次のようなものだ。放射線被ばくに関する科学的知見とは、国際的な原子力関係の組織や研究機関によって受け容れられているものだけである。それ以外はすべて信用できない。だから裁判で取り上げるべきではない。JCOは原告側が出している尋問計画に即した具体的な反論は何もおこなわず、このような一般論を繰り返しているに過ぎない。原告側証人の陳述書を受け、JCOは再び「証言は不要」との主張をおこなってくるだろう。しかし裁判の流れはJCOの思惑とは裏腹に、原告側証人を基本的に採用する方向で進みつつある。なお、JCOは前回の法廷に引き続き今回も証人申請を行わなかった。 法廷終了後、場所を移して弁護士から簡単なレクチャーを受けた。また、JCOは準備書面(7)で「佐々木見解は裁判所において採用すべきものではない」との論を数頁にわたって長々と主張しているが、このことについて意見交換をおこなった。放射線医学の専門家である佐々木正夫氏は、臨界事故で被ばくした作業員や周辺住民を調査し、中性子線による被ばく影響について、旧科技庁が通知した線量よりも危険性が5倍〜6倍大きいことを認めている。原告側はその調査結果を、「原告の被ばく線量は6.5mSvであり影響はありえない」という被告JCOの主張に対する有力な反証として挙げている。これに対してJCOは「採用するな」と噛みついてきたのである。佐々木氏の調査結果がJCOの弱点の一つになっているということだ。議論を通して、その意義を確認しあった。 今後も、JCOの加害責任を問う裁判に対し支援を行っていきたい。(H) |