美浜の会ニュース No.78


 関電はついに5名もの死者を出す国内最悪の事故を引き起こした。運転開始以来1度も検査を行わないという安全性無視、人命無視の、関電に深く染みついた体質が引き起こした事故である。老朽原発にムチ打つ経済性最優先の危険な運転が生み出した事故である。
 事故から2週間がたった現在、まだ4基の老朽原発が運転を続けている。関電は、「過去の検査結果で安全」と繰り返し、いつ運転を止めるのかすら明らかにしていない。しかし、これら4基の原発で配管がどれだけ薄くなっているのか、現在の実態は関電にも分かっていない。
 現在の運動の焦点は、まだ動いている4基の原発を停止させ、現実の危険をとにかく取り除くことにある。さらに、事故を引き起こした関電と国の責任を徹底して追及していくことにある。事故の真相と検査に関する情報を公開させよう。
 原子力発電に反対する福井県民会議は、20日に「美浜3号死傷事故抗議集会」を開き、事故の責任を追及している。
 事故そのものと、関電の無責任極まりない姿が、福井県民をはじめ多くの人々の中に新たな怒りを生み出している。この怒りの声を集約し、福井と関西、全国の運動が連帯し、関電の老朽原発を止めていく新たな運動を開始しよう。
 関電プルサーマルはまたも挫折した。六ヶ所再処理工場を動かす必要はなくなった。
 老朽炉の停止から脱原発へと進もう。
(ニュース発行直前に、事故によって新たにお一人が亡くなられたことを知りました。しかし、これまでの事実に関する記述では以前のまま4名となっています。)

事故を引き起こした責任を認めない関電
「単なる労災」、「人さえいなければただの蒸気漏れ事故」と言い放つ

 5名もの死者を出した国内最悪の美浜3号機の事故。しかし、関電はこの事故の責任を認めていない。事故2日後に行った関電交渉では、「死傷者が出たことはお詫びする」と何度も繰り返しながら「事故原因が明らかにならないうちは誰に責任があるとは言えない」。これが関電の正式な見解である。新聞各紙に出した広告でも、「お詫び」のみで、事故を引き起こした自らの責任には一言もふれていない。何度も繰り返し放映された藤社長の土下座は、責任を認めないためのポーズにすぎない。社長の土下座に対して、関電秋山会長は「事故は単なる労災」、「労災事故でなぜ社長が辞めねばならないのか。処分は現場だけ」とまで言い放っている。「事故のたびに社長が辞めていたら業界から批判を受ける」、「下に人さえいなければ、ただの蒸気漏れ事故だった」(8/21付福井新聞)と、あたかも「人がいた」ことが悪かったかのようだ。関電自らが、定検が始まる前から下請け労働者に作業をさせておきながらである。これ程までに無責任極まりない会社があるだろうか。
 福井県警は、業務上過失致死傷で立件に向けて動いている。関電の最大の関心事は、社長・本社役員達がいかにして刑事責任の追及から逃れるかということにある。そのために、自らの責任を認めず、情報統制を強めている。
 JCO事故の時を思い起こしてもそうだ。事故直後JCO幹部は、住民の前で何度も土下座した。しかし住民を被曝させた責任は一切認めていない。現在闘われている被害者の会が訴えた裁判でも、被曝被害を一切認めず、住民の訴えを切り捨て続けている。JCO事故の教訓は、まず、事故を引き起こした責任を関電に認めさせることである。

関電に原発を運転する資格なし
 関電は、2次系配管の検査を下請けに丸投げしていた。当初は三菱重工に、96年からは自らの関連会社である日本アームに。しかし日本アームには原発の検査の実績はなかった。こんな会社に原発の安全性の基礎である検査を行わせていたのだ。これによって関電は、検査費用を3割削減していたといわれている。それで「原発は検査をしっかりやっているから安全」と人々を欺いていたのだ。
 美浜3号の破断した配管は、28年間1度も検査をしていなかった。検査リストから漏れていたためだ。しかし、現時点で明らかなだけでも、関電にはリスト漏れに気づき、検査を行う機会が少なくとも4回あった。(1)90年に2次系配管の「管理指針」を作成し、検査リストを作った時、(2)1999〜2000年に三菱重工がリスト漏れに気づいた時、(3)昨年4月に日本アームがリスト漏れに気づいた時、(4)昨年11月、日本アームからリスト漏れを告げられたとする時。それぞれの時期に、関電には、事故の予見可能性は十分にあった。それを全て否定し、定検については下請け任せだと言い張るのであれば、それはそれとして、関電の管理責任・運転責任、刑事責任が厳しく問われることになる。いずれにしても、関電に危険な原発を運転する資格などない。

手抜き検査、安全性無視、人命無視の関電「企業文化」が引き起こした事故
 今回の事故の原因は、極めて単純だ。運転開始以来1度も検査をしていなかったことにある(もちろん、炭素鋼というもろい材料を使い続けていたことに基礎的な問題がある)。関電は、「結果として、判断ミスだった」と繰り返している。これは、事故が起きてしまったから「結果として」悪かったと言っているだけであり、さらに、昨年11月の段階で検査漏れを知っていながら放置したという1回限りの「判断ミス」であったというものだ。詭弁も甚だしい。
 今回の事故は、手抜き検査、安全性無視、人命無視の関電の企業文化そのものが引き起こした事故である。事故の予兆はいくらでもあった。我々は何度も警告していた。今年に入ってからだけでも、大飯3号の原子炉上蓋管台で、日本で始めてひび割れが発生した。それ以前には「当社の計算では20年間ひび割れは起きない」と宣言しながら、わずか2年でひび割れが起きた。さらに7月には、大飯1号の2次系主給水管で大幅な減肉が確認された。「法律に基づき国に報告する対象となる厚さ」以下にまで薄くなったまま運転を続けていた。私たちが他の原発の検査を要求してもそれに応じず、当該箇所を取り替えただけでよしとした。5〜6月に明らかになった火力発電所での大規模な検査記録のねつ造事件では、「火力と原発は別。原発では厳重な管理を行っている」と居直り続けた。
 そして今回の事故が起きると、「2次系は手薄だった」と逃げ込んでいる。しかし、1986年には米国サリー原発で4名の死者を出した2次系配管破断事故が起きていた。その事故を教訓に作ったはずの2次系配管「管理指針」と点検リストがいかにいい加減なものであったかを、今回の事故は示している。結局、サリー原発事故の教訓を何もくみ取っていなかった。起こるべくして起きた事故である。

「二次系だから大したことはない」と事故を過小評価する関電、国、学者、一部マスコミ
 関電、原子力安全・保安院、原発推進学者、一部マスコミは、今回の事故について、「2次系の事故で原子炉に直結する事故ではない」、「大したことはない」、「放射能漏れはない」「火力発電の事故と同じ」「火力の方が高温・高圧で危険」とキャンペーンを張り、事故を小さく見せようとしている。今回明らかになった検査リスト漏れの中には、高浜3号で2次系の主要な配管である主給水管も含まれていた。記者会見で関電は、主給水管が破断すればどうなるのかと記者に追及され、「最も激しい破断でも原子炉は大丈夫」と答えている。2次系配管に対する安全軽視も甚だしい。
 原発の2次系は、原子炉を含む1次系と一つのシステムを形成している。2次系配管を流れる冷却水で1次系を冷やしている。今回の美浜3号機の事故では、約80%の2次冷却水が噴出した。2次系の補助給水系が働いたため、蒸気発生器を通しての原子炉の冷却は保たれた。しかし、普段動いていない補助給水系の機器が作動しなければ、米国スリーマイル島原発事故のように、炉心溶融、放射能放出の大参事につながる危険性があった。放射能が漏れていないと強調すれば済むような事故ではない。

老朽炉にムチ打つ、定検短縮等の経済性最優先の運転が事故を引き起こした
 美浜3号は、8月14日から定期検査の予定だった。しかし事故の起きた8月9日には、約百名もの下請け作業員がタービン建屋で定検の準備作業をしていた。定検を短縮させるためである。原子炉を停止してから作業を開始していれば、多くの死傷者を出すこともなかった。
 関電は、定検を短縮し、老朽原発にむち打ちながら原発の稼働率をあげる危険な運転を続けている。電力自由化の中でその傾向を一層加速させている。関電の全原発の定検日数の平均は、95年で166日間を要していたが、2003年では67日間と半分に短縮されている。例えば、大飯3号は1998年に38日間で定検を終えている。同時に設備利用率は、90年代後半から80%を突破し、2002年には、関電の全原発の平均で90%近くに達している。電力会社全体で定検短縮を競っている。
 本来なら、ガタのきた老朽炉は、通常より念入りな検査が必要なはずである。しかし検査に時間をかけていては、商業炉としての原発は経済性が成り立たないというわけだ。とりわけ電力自由化が進む中で、新規参入企業との厳しい競合にさらされ、経済性最優先の危険な運転に邁進している。さらに電事連は、18ヶ月連続運転(現在は13ヶ月)を要求している。
 今回の事故は、老朽炉にムチ打ちながら、定検短縮等で経済性を最優先にした危険な運転が行われるという状況の中で、必然的に生じたものである。

事故に関する情報をひた隠しにする関電
 関電は、今回の事故に関する重要な情報をひた隠しにしている。自らに都合の悪い情報を隠すというのは、関電の企業文化そのものであるが、大事故を引き起こした今、その姿勢はむしろ一層エスカレートしている。
 事故後3日目の12日には、「福井県警への捜査協力」を口実に、「事故責任や特定の個人につながる情報の公開は今後、差し控える」とマスコミに対して一方的に「情報制限」宣言を行った。これに対して、敦賀記者クラブは関電に抗議文を出した。事故直後に社長が「情報公開」、「住民理解」と繰り返していたのは単なる儀礼だったのか、と福井新聞は厳しく批判した。刑事責任の追及を避けるため、関電は具体的情報を公開せず、責任も認めない。
 さらに、死傷事故の事実についても、関電発表には大きな疑惑がある。関電の発表では死傷者は11名となっている(死者4名、負傷者7名)。本当に負傷者は7名だけなのか。敦賀消防署の職員が現場に到着したのは、事故を最初に告げた15時22分の火災報知器の警報から約30分後の15時58分である。その時既に、ほとんどの負傷者は事故現場の外に救出されていた。一体だれが11名を救出したのか。その救出作業にあたった人たちは当然火傷等を負っているはずである。消防署の職員が事故現場であるタービン建屋2階に入れたのは17時20分頃。事故から約2時間後であった。耐熱服も酸素マスクも着けずに、どうやって救出できたのかと、消防署の職員はマスコミに語っている。8月20日の第2回事故調査委員会に関電が出した資料の中では、この救出作業を行った人々のことは一切書かれていなかった。その後関電は、同委員会に追加資料を出した。それによると、救出活動を行ったのは、関電の保全計画係長等と下請け会社の社員となっている。しかし、負傷しているかについては記載がない。負傷者は7名だけではなかったはずだ。関電は事故に関する重要な情報を未だ多く隠している。
 事故の真相を明らかにするために、全ての情報を公開させよう。

検査リスト漏れは6基の原発で17箇所も
「1度も検査していないが、他の原発から類推して安全」−関電の危険な思想

 関電は18日、運転開始から1度も検査していないどころか、検査リストにすら載せていなかった箇所を発表した。6基の原発で17箇所にも及んでいる。関電の管理が、いかにずさんであったかを改めて示している。
 2002年に東電データ不正事件が起きた時、全ての電力会社が過去の検査に不正等がないか一斉点検していたはずだ。2年前の点検は一体なんだったのか。
 18日に発表した11箇所の検査リスト漏れについて、関電は「安全性は確保されている」と繰り返している。この11箇所については、「同一仕様の他のプラントの測定結果から健全性が確認された部位」という。すなわち、運転開始以来1度も検査しておらず、配管の減肉の実態は一切分からないが、他の原発の同部位で過去に測定した結果から類推して安全だという。この「他の原発から類推して安全」は危険な思想だ。高浜1号を検査すれば、高浜2号は検査の必要がないということだ。全ての原発の検査など必要ないということになる。1度も検査をしていなかったため大事故を引き起こし、5名の命を奪っておきながら、こんなことをぬけぬけと主張している。
 さらに関電は、検査リストから漏れていたものとして国に報告すべきは4箇所のみで、この11箇所は「類推して安全」なので国への報告対象ではないとまで主張している。これに対しては、あの保安院ですら不快感を表した。しかし保安院は、「類推で安全」という思想を明確には批判していない。
 今も、関電の安全性無視、人命無視の姿勢は何も変わっていない。1999年のMOX燃料データ不正事件の時と全く同じだ。「データ不正燃料を使っても、安全性に問題はない」と言い続けた体質は、関電に深く染みついている。

福井県知事に要求されてやっと原発を順次停止している関電
 関電は事故直後、他の原発を止めるつもりはないと強弁していた。事故翌日に行った緊急抗議行動で、関西の市民は、即刻全ての原発を停止するよう要求した。翌日の交渉でも、関電は「過去の検査結果をチェックしているので止める必要はない」と言い張った。しかし、地元福井県民の怒りや不安等に押され、福井県知事が運転を停止して検査を行うよう要求してやっと、原発を順次停止すると発表せざるをえなくなった。福井県知事が要求しなければ、関電は原発を止めるつもりは一切なかった。関電は現在、原発を3つのグループに分け、順次停止して検査している。13日から運転停止作業に入った第1グループの3基(美浜2号、大飯4、高浜2号)は、基本的に定検の前倒しである。現在、11基の原発の内、定検中も含めて7基が運転を停止し検査を行っている。残り4基をいつ止めるのか、関電はいまだ発表していない。

運転を止めて行っている検査もずさん。2次系配管の「管理指針」は破綻している
 運転を停止して行っている検査もずさん極まりない。美浜2号では、点検箇所はわずか10箇所である。関電は点検箇所を、オリフィス下流部、曲がり部などに限定している。運転を停止している11基の原発の点検予定箇所は276箇所という。しかし、関電の2次系配管「管理指針」に基づく点検箇所は43185箇所。この内、点検をしたことのないのが11539箇所もある。今回運転を止めて検査するのは、点検未実施個所のわずか2.4%にすぎない。
 さらに、関電の「管理指針」はすでに破綻している。管理指針では、配管の直管部は検査の対象外となっている。しかし、1987年トロージャン原発では2次系配管の直管部で大幅な減肉が発生し、NRCは警告を発していた。配管の直管部も含めて、徹底した検査を行うべきである。同時に、全ての検査資料を公開すべきだ(8頁参照)。

まだ運転している4基の原発を即刻停止せよ
 現在も4基の原発が運転を続けている(美浜1、大飯1、大飯2、高浜1)。即刻運転を停止すべきだ。関電はまた、「過去の点検結果で安全は確保されているのですぐに止める必要はない」と言っている。では、この4基の2次系配管の検査を行ったのは一体いつなのか。配管の肉厚の実態はどうなのか。美浜3号同様、「紙のように」薄くなってはいないのか。資料を公開するよう要求しても、出そうとしない。現在動いている4基の、現時点での配管の実態が分からない以上、また、「管理指針」に基づくずさんな検査では、いつまた事故が起きるかもしれない。直ぐに運転を止めて徹底検査すべきだ。これが美浜3号事故の教訓ではないのか。
 大飯1号はとりわけ危険だ。大飯1号は、今年7月に2次系給水配管に大幅な減肉が見つかっている(配管仕様値厚み2.1pが半分以下の1.21pに減肉。「法律に基づき国に報告する対象となる厚さ」1.57pをも下回っていた)。この配管は、10年で25%検査すればいいと分類されている箇所だった。この時関電は、当該部分を取り替えただけで、オリフィス下流部等の配管の重要箇所の検査を行っていない。大飯2号は「大飯1号から類推して危険」である。また、高浜1号はスチームコンバーター部が検査リストから漏れていた。にもかかわらずその部分だけを隔離しただけで運転を続けている。美浜1号は関電の原発の中で最も初期に建設され、老朽化の進んだ原発である。
 この4基が運転を続ける限り、事故の危険は続く。まず、今なお運転している4基の原発を即刻止めるよう要求しよう。

事故の責任は保安院も同罪。全ての原発の2次系配管等の資料を提出させ、公開せよ
 保安院は事故直後から、「2次系配管は国の検査の対象になっていない」と自らの責任逃れを決め込んでいる。自らの責任は棚に上げ、「今後2次系配管の検査のあり方について検討する」等と発言し、体面を取り繕おうとしている。しかし、今回の事故に関する責任は、保安院も全く同罪だ。保安院の責任を徹底して追及していこう。
 保安院は18日に、関電だけに再度の「報告徴収」を出し、美浜3号機の2次系配管に関する資料提出を求めた。提出を求めているのは、運転開始以来全ての「点検対象とした部位及びその選定方法」「点検の実施時期及びその結果」等々、重要な資料ばかりだ。このことは、2次系配管が国の検査の対象外であり、国が資料すら持っていないということの証左である。保安院は、美浜3号だけでなく、全ての原発について同様の資料を提出させ、公開しなければならない。保安院がまずなすべきことはこれである。
 1986年のサリー原発事故の時、「日本の原発は水質管理がしっかりしており同様の事故は起きない」、「念のため2次系配管の検査を電力会社が自主的にやるよう」にと、事故を軽視し安全対策を怠った責任を明らかにすべきだ。
 私達はこれまで、関電の傲慢極まりない体質について何度も保安院に警告してきた。火力発電での大規模な検査記録不正事件の時も、原発の徹底検査を国に申し入れた。しかし、申し入れに対する回答すら出さず、握りつぶしてきたのが保安院だ。関電の安全性無視の体質を放置し、のさばらせてきた保安院の責任を明らかにすべきだ。
 昨年10月に関電は、高浜3・4号でプルサーマルを再開するために「品質保証体制は整った」とする報告書を出した。これに対して保安院は、「高浜原発、本社への立入調査もやった」と胸をはり、今年2月に「社長をトップとするトップマネジメントが働いている」と品質保証にお墨付きを与えた。その高浜3・4号で、運転開始以来1度も検査していない箇所が多数見つかった。保安院はプルサーマル再開を了承したことの責任を明らかにすべきだ。
 さらに関電は、2000年に美浜3号の「定期安全レビュー」を出し、今回破断した配管についても「検査を行っている」と虚偽の報告をしていた。関電のウソを見破ることもできず、保安院はただただ了承した。その責任を明らかにすべきだ。
 保安院は、これらの責任を明らかにし、即刻全ての原発の二次系配管等の資料を公開せよ。

プルサーマル計画白紙撤回、六ヶ所再処理工場のウラン試験中止、脱原発へ
 今回の事故は、核燃料サイクル政策そのものにも大きな警告を発している。プルサーマル復活の旗振り役である関電の原発で事故は起きた。事故直後関電社長は「プルサーマルは予定通り進める」などと発言していた。県民の怒りに押され、福井県知事は事実上プルサーマル凍結を要求した。事故前に関電は、わざわざ青森県にまで出かけ、「プルサーマル再開のめどが立ったので六ヶ所再処理工場の推進を」と我がもの顔に話してまわっていた。しかし、関電プルサーマルはまたしてもとん挫した。六ヶ所再処理工場を動かす必要性はまたもなくなった。ウラン試験などなおさらのことだ。
 青森県では、再処理工場ウラン試験の安全協定を巡って8月末から県議会等で議論が再開される。7月初めには、使用済み核燃料の直接処分の試算隠し問題で一度は中断し、今回議論を再開する矢先に美浜事故が起きた。
 青森の市民団体、農業者、隣接農漁業者の会等は、美浜事故後、ウラン試験の安全協定締結に反対する活動をさらに進めている。死者がでてもなお、「2次系は国の管理外」と言う国の無責任さに怒りが強まっている。「放射能漏れはない」と繰り返されたにもかかわらず、夏の若狭の民宿では事故後1週間で119件520人のキャンセルが発生した。原発から離れた越前町でも魚の値段が下がるなど漁業に風評被害が出始めている。精魂込めて作った安全でおいしい農作物を消費者に届けたいと日夜働いている青森の農業者達は、再処理工場が稼働すれば県内の農産物等に風評被害が起きるのではと心を痛め、事故被害を自らの生活に引き寄せている。美浜3号事故及び電力会社と国の無責任な姿から、人々はウラン試験を止めなければとの思いを強くしている。私たちは、美浜事故の責任を徹底して追及する運動で、青森の人々と連帯したい。
 さらに、今回の事故は、7月に使用済み核燃料の「中間貯蔵」誘致を表明した美浜町長にも警告を発している。事故後に町長は、「中間貯蔵は一時中断」と言わざるをえなくなった。
 東京では、原子力長計の策定会議が開かれている。再処理路線で行くのか、直接処分で行くのかの議論の真っ最中である。これら二つの路線は、従来通り使用済み核燃料が出続けることを前提としている。しかし、今回の事故によって、電力会社と国による安全性無視の実態が明らかになり、老朽原発の停止が差し迫った問題として浮上した。使用済み核燃料の直接処分それ自体だけを議論しても、原発の延命のために「中間貯蔵」という核のゴミ捨て場をつくり続けることにしかならない。5名もの死者を出した今回の事故は、老朽原発の停止から、具体的に脱原発へと進むことを要求している。

美浜事故の責任を問う8・29大阪集会に参加を
 私たちはグリーン・アクションと共同で、事故翌日に緊急の関電抗議行動を呼びかけた。全ての原発を即刻停止すること、プルサーマル計画を断念するよう要求した。緊急行動には約60名が参加し、8団体から抗議文が読み上げられた。事故に怒り、初めて関電行動に参加した人々も、関電の無責任な姿勢に抗議の声を上げ続けた。翌日の関電交渉では、「お詫びはするが、責任は認めない」という関電の姿勢に批判が集中した。
 福井県知事は、これまでの「原発カードで地域振興」という姿勢から、原発推進に慎重な姿勢に変わらざるを得なくなっている。県議会は20日に関電岸田副社長等を呼び、MOXデータ不正の教訓が何も生かされていないと厳しく批判した。23日の全員協議会では、保安院に対し「国の責任が果たせているのか」等々の声があがった。原発の立地町村のみならず、周辺自治体からも安全協定の見直し、風評被害への補償等々の声があがっている。原子力発電に反対する福井県民会議は、20日に抗議集会を開き、原発の停止と徹底点検を要求する関電宛の抗議文などを採択した。知事へはプルサーマル計画事前了解の白紙撤回等を要請している。
 私達は8月29日に「5名もの死者を出した美浜3号機事故の責任を問う8・29大阪集会」をグリーン・アクションと共催で開く。福井現地から小木曽美和子さんに参加していただき、現地の生々しい様子を伝えてもらい、今後の運動の出発点にしたい。是非、多くの皆さんの参加を呼びかけたい。
 事故そのものと、関電の無責任極まりない姿が、福井県民をはじめ多くの人々の中に新たな怒りを生み出している。この怒りの声を集約し、福井と関西、全国の運動が連帯し、老朽原発を止めていく新たな運動にとりかかろう。
・まだ動いている4基を即刻停止させよう。
・事故を引き起こした関電と国の責任を徹底し て追及しよう。
・事故と検査の全情報を公開させよう。
・プルサーマル計画を断念させよう。六ヶ所再 処理工場のウラン試験を阻止しよう。
・老朽炉の停止から脱原発へと進もう。