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またも土下座し、口ですまないというだけか

臨界事故被害者の会 代表 大泉昭一



 美浜原発の事故で、関西電力の社長が土下座してあやまっているのを見て、やり切れない思いでいっぱいになった。
 JCO事故の時も、社長は土下座してあやまった。涙を流して、申しわけないと言った。
 しかし、ただ土下座しただけ、口ですまないと言っているだけだった。
 結局、健康被害などの責任を認めようとしなかった。
 原子力の責任者は事故が起きた時だけあやまる。しかし、後は東海村と同じことになるだろう。事故の責任問題には、きちんと対応しないだろう。後は自分たちの責任を認めない、ということになるだろう。
 事故の状況は、東海村のJCOと美浜では違うが、起こっていることは同じだ。

 JCO事故が起こった時、私たちは事故は東海で終わりにしてほしいと思い、さまざまな提案や要請をした。私たちの主張を、国や原子力産業は十分理解し、納得したと思っていた。しかし事故がまた起こってしまった。なんともやり切れない、悲しい気持ちだ。
 私たちは、事故が起こった場所だけでなく、原子力施設全体の徹底した検査をすべきだと言った。
 また、第三者を入れた施設に対する査察体勢でのぞむべきだと再三にわたって言った。これらのことは、実行されているのか。
 抜き打ち検査の必要性も訴えた。事業者に緊張感を持たせるためには、何としても必要だと言った。国と事業者の間の緊張感は保たれているのか。またなれあいになっているのではないか。
 東海で事故が起きた時、原子力関係の人たちは「検査はしっかりやります」と言ったではないか。その舌の根もかわかぬうちに、検査もれの事故である。やるべき検査をきちんとやっていないからこういうことが起こる。常に、検査、チェックが必要なのに・・・。 情けないような気持ちだ。
 東海では二名の方がなくなり、多くの人が被害を受けた。今回も四名の方がなくなった。多数の人が被害を受けた。
 社長は「すまなかった」と言えばいいのかもしれない。しかしまた事故が起こり、また「すまなかった」ではこまるのだ。
 同じように事故を体験したものとして、一歩まちがえればどういうことになるのか、ということをよく考えて事に当たってほしいと思う。事故が起きてからでは遅い。
 とりわけ、四人の死の問題は、お金ではとうてい解決できない。
 いつも犠牲になるのは、下請けなど現場の人間だ。なんともやり切れない。

 東海で事故が起きた時、私たちが要請し、彼らがきちんとやると言った「万全のチェック体制」はどうなっているのか。それが守られていないのは、原子力の「その場主義」のあらわれではないか。
 何度も言うようだが、人の命はお金にはかえられない。事故がないように徹底した検査体制でのぞむべきであったのに、それができていない。
 これができないのであれば、一歩まちがえば大惨事になる原子力はやめるべきだ。風力や太陽光などの自然エネルギーに切りかえるべきである。