美浜の会ニュース No.75 |
関西電力は、今年度中に高浜原発プルサーマル用のMOX燃料製造契約を海外と結びたいと表明し、今年4月にその旨を福井県に申し入れた。しかし、10月1日付けで経済産業省が打ち出した新たな品質保証企画を関電は未だ取り入れていないこと、それ故に、輸入燃料体検査の申請資格が未だないことが明らかになった。 関電のMOX品質保証体制は未だ不備、検査申請資格は未だ認められていない 関電はMOX製造契約を結ぶことを目指し、10月23日に、報告書「海外MOX燃料調達に関する品質保証活動の改善について」(以下、関電報告書と称す)を国、福井県、高浜町及び京都府に提出した。この関電報告書は、「当社がBNFL製MOX燃料問題発生以降、MOX燃料調達を中心として取り組んできた品質保証の改善状況について取りまとめたもの」だとしている。これの了承を経て、製造契約交渉に入りたいと関電は表明した。 関電MOXと言えば、まず想い出すのが、1999年(平成11年)のBNFL社MOXデータ不正事件である。このとき関電は、高浜4号機用に不正はないと頭からきめつけ、不正情報を入手していながら、当時の規制当局である通産省にさえ報告しなかった。そのため、通産省の電気事業審議会は、2000年6月22日付け報告書において、BNFL事件で現れた「品質保証活動の問題点」の解決の方向を電気事業者一般に示す中で、関電だけには次の「特別注文」を付けた。「関西電力が再度MOX燃料の輸入燃料体検査申請を行うためには、 通商産業省が同社の品質保証体制が申請者資格を有するに足るように改善されていることを確認する作業が必要と考える」。 当時すでに関電は、第2次分の高浜4号機用MOX燃料をコジェマ社に注文し1999年末に製造していたが、経済産業省の原子力安全・保安院は「申請者資格を有するに足る」とは認めなかった。そのため関電は、2001年12月に、60億円もの賠償金をコジェマ社に支払って、新品MOX燃料をすべて廃棄にせざるを得なかったという経緯がある。 今回10月23日に関電報告書を受けた原子力安全・保安院は、ただちに同日付けで受領した旨をプレス発表する中で、わざわざ前記の「特別注文」を引用し、関電報告書は「特別注文」の「方針を受け、提出されたものです」と注釈を付けた。つまり、申請者としての資格があるかどうか、関電には特別な審査をする方針を示唆したことになる。ところが、前記関電報告書には、このような「特別注文」に従って品質保証体制を構築するという意識がまったく見られない。 次に、12月9日に原子力安全・保安院は関電に次の趣旨を通達した。 (1)10月1日に改正された省令に合うように関電が品質保証体制を構築し、変更申請をする準備をしていることを確認する(つまり、関電報告書は新省令を満たしていなかった)。 (2)変更申請を行った後、「書類審査に加え、立入検査も併せて行い、十分な審査を行う」(立入検査まで受けるのは関電だけ)。 結局関電は、未だ申請者資格が認められていないのに、品質保証に関する国の新基準も満たさないような報告書しか出せなかったことが明らかになった。にもかかわらず、何も問題がないかのように、莫大な電気料金を使ってさまざまな宣伝活動を行っている。BNFL事件当時からまったく何も体質が改善されていない。このような姿勢は厳しく糾弾されるべきである(くわしくは別記事参照)。 我々はすでにグリーン・アクションとともに質問書を提出し、来年1月に関電交渉を行うことになっている。関電の矛盾を拡大し、MOX製造契約を阻止し、プルサーマルを断念に追い込もう。 電事連の「プルサーマル計画」はむしろ後退、再処理目的もさらに不透明に 電事連は12月19日に、藤会長の定例記者会見で「プルサーマル計画について」を発表した。その前文でプルサーマルの重要性を改めて確認し、その根拠として、8月に原子力委員会がまとめた「核燃料サイクルについて」と、10月に閣議決定されたエネルギー基本計画を挙げている。確かにエネルギー基本計画では、「核燃料サイクルの推進を国の基本的考えとしており、着実に取り組む」、「プルサーマルを当面の中軸として着実に推進する」と規定している。また、原子力委員会の場合は、これらの推進だけでなく、再処理で生まれるプルトニウムの利用目的、利用の透明性を明確に示す必要があるとの認識に立っている。そのため「プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表すること」を電気事業者に求めている。海外プルトニウムについても燃料加工される段階で国内に準じた措置をとるよう求めている。結局、プルトニウムの使い道はプルサーマルしかないからこそ、プルサーマルが確実に実施できることを具体的に示すよう求めており、逆にそのことが再処理推進の前提となるはずのものである。今回の電事連が公表したプルサーマル計画は、この原子力委員会決定を受けてのものと思われる。ところが公表された計画では、 (1)関電・高浜原発については、つい最近まで2007年度実施としていたのに、2008年度実施と後退した。前述のような状況を反映したためであろう。 (2)他の大多数の電力会社では、以前は2010年と称していたのが2010年度とわずかに後退した。 (3)肝心の東電については、地域の信頼回復が最優先というだけで、計画なしの状態。 この電事連の公表で如実に示されたとおり、いまは具体的な計画を示せるような状態とはほど遠い。原子力委員会決定によって、むしろ皮肉なことに、プルサーマルの見込みのない情況が浮き彫りになったのである。六ヶ所どころか、海外に蓄積されているプルトニウムを使う第一候補の関電でさえ、前記のように資格をもつと認められるかどうか不明な状態にある。8月5日付け原子力委員会決定に従えば、プルサーマルがこのように不透明では、六ヶ所再処理工場を操業開始に向けて進めることなどとうていできないことになる。 六ヶ所プール不正溶接の原因は未だに未解明 安全無視の原燃体質でウラン試験などもってのほか プルサーマルが前記のように不透明な状況では、六ヶ所再処理工場の目的もほぼ失われているに等しい。それにもかかわらず、六ヶ所再処理工場は来年1月からウラン試験を開始する方向で動いている。 六ヶ所では、使用済み核燃料貯蔵プールで291箇所もの不正溶接があり、本体でも不良な硝酸パッキングを使っていたなどの問題が明るみにでた。日本原燃は昨年6月に原子力安全・保安院から厳重注意まで受けている。 そのため、この問題を検討する検討会を原子力安全・保安院が設置し、これまで5回の会議が開かれ、12月26日に第6回が開かれる。これまでの検討会では、点検作業より原因究明を優先させるべきだとの議論も行われ、日本原燃にそのような注文を「評価意見」として11月14日に示した。しかし、原燃はそれを完全に無視し、点検作業どころか補修作業までも優先させた「実績」をつくり、それを保安院が受入れたことによって、検討会の議論を強引に抑え込んでしまった。また、過去の建設過程で、使用済み核燃料搬入に合わせるスケジュール優先で工期を詰めたことが、大量の不正溶接を招いたと検討会で指摘され、その具体的な状況も確認されたが、この問題もあいまいなまま放置されようとしている(別報告参照)。このような状況に対し、「再処理とめよう!全国ネットワーク」はすでに検討会に要望書を提出し、さらに第6回検討会に向けて要望書を委員に送付した(美浜の会ホームページ参照)。 使用済み核燃料貯蔵プールへの搬入は、昨年12月以来停止状態にあるが、東電福島第二原発の逼迫した状況からすれば、できるだけ早期に受入れを再開したいところであろう。大量不正溶接の原因究明をそっちのけで、補修作業を早々と実施しているのは、この事情によるものに違いない。またしてもスケジュール優先である。 しかし、このような強引な終息方向では、結局何も原因が明らかになっていないという根本問題が残り、不信感が増大する。しかも補修の過程で火災事故などが続出しており、原燃の体質が厳しく問われるような事態になっている。このような体質こそが、291箇所もの不正溶接を招いたのである。このような体質が浮上したことによって、原燃のつくる再処理工場全体がとうてい信頼できるものではないとの疑いを誰もがもち得るような新たな状況が生まれた。また、六ヶ所村では、約70%の村民が再処理工場に不安を抱いていることが、法政大学・舩橋教授の最近のアンケート調査で明らかになっている。このような不安感や日本原燃への不信感を集約すれば、それはプールの使用再開やウラン試験の開始を阻止する力となるに違いない。 プルサーマル反対と再処理反対の運動は、固く連帯して前に進もう プルサーマルも六ヶ所再処理も、実施できるような状況とはほど遠いというのが現実の姿である。10月に閣議決定したエネルギー基本計画のうたう建前と現実とのギャップが、むしろ拡大している。核燃料サイクル・バックエンド関係費用が19兆円でうち9兆円の財源がないとか、再処理事業費だけで十数兆円に上る(10月21日付け東奥日報)とかと言われ、これらを税金か電気料金で国民に負担させようとする動きがあるが、とんでもないことである。現実の姿が教えるとおりに、これら危険な政策から即刻手を引くべきである。人々の反対運動の力はさらにこのギャップを拡大するであろう。 8月5日の原子力委員会決定によって、プルサーマル反対運動と六ヶ所再処理反対運動が手を携えて進むことは公認のものとなった。関電プルサーマルに反対する福井と関西の運動は自らの当面の運動を強めるとともに、青森の再処理反対運動と固く連帯し、全国のプルサーマル・再処理反対運動とともに前進していこう。 |