美浜の会ニュース No.74


「近い将来交渉を始めるだろう」(関電の秋山会長)
 9月4日付の英国新聞「フィナンシヤル・タイムス」は、「関西電力はMOX燃料契約の交渉に向かう」との記事を掲載した。この記事は、関電の秋山会長とのインタビューに基づいている。記事によれば、関電は間もなくMOX燃料の製造契約について交渉を開始するという。秋山会長は、契約相手先として、データねつ造事件を引き起こした「BNFLを契約先として検討するのは『困難』」と話している。そして記事は、最もありそうな契約相手として、フランスのコジェマ社をあげている。ベルギーのベルゴニュークリア社は生産規模が小さいため「関電の需要に応えるには不十分」としている。
 関電の秋山会長は、インタビューで「近い将来、交渉を始めるだろう」、「いったん取引が締結されれば、製造を開始するのに最低でも24ヶ月かかるだろう」と述べている。記事は、交渉が今年はじまり、来年には燃料契約が結ばれ、2006年に製造が開始されるとしている。コジェマのメロックス工場でのMOX燃料製造には少なくとも数ヶ月かかるという。
 これまで関電は、今年度中にMOX燃料の契約を行い、2007年にプルサーマルを開始したいと表明していた。上記記事は、この計画に符合するものであり、契約先をほぼコジェマ社に絞るという関電の計画を示している。
[フィナンシャル・タイムスの記事「Kansai to negotiate Mox fuel contract」]

MOX製造契約先からBNFLを外し、コジェマ社との契約を狙う関電
 関電はこれまで、MOX燃料の製造契約先としてBNFLも選択肢に含めて検討し、今年度中に契約を締結すると述べていた。しかし福井県議会では保守系議員から「BNFLを対象に含めるのは県民感情としていかがなものか」との苦情もだされていた。さらに、BNFLの新MOX工場(SMP)では、MOX燃料を製造することができないことが明らかになった。BNFLは、ドイツ・スイス向けのMOX注文をフランスのコジェマ社とベルギーのベルゴニュークリア社に作ってもらうという事態にまで陥っている。またソープ再処理工場は2010年までに閉鎖することが明らかとなり、今後BNFLは廃棄物処理会社へと転業せざるをえなくなっいる。これらの事情から、関電は、MOX契約先からBNFLを外し、コジェマ社と契約を結ぶことを狙ったに違いない。

2001年、コジェマ社でのMOX製造中止・廃棄の真相と責任は未だ闇の中
 しかし、コジェマとの契約ならば問題はないのか。否である。関電はかつて1999年にコジェマ社のメロックス工場でMOX製造を開始した。しかし、2001年12月26日に突然、製造の中止と完成していた10体のMOX燃料の廃棄を発表した。なぜ製造を中止し廃棄したのか、その責任はどこにあるのか、未だに明らかにしていない。
 7月14日に行った関電交渉では、コジェマMOX製造中止について、「関電は悪くない、輸入燃料体検査を通さない国が悪いとでも思っているのではないか」と聞くと、「確かにこの辺ではブーブー言ってたかも知れません」と机の下で手を回し、表面上は国の決定に従ったが、社内的には不満一杯だったというジェスチャーである。さらに「国の決定に不服でも、プルサーマル全体のことを考えればしかたがないということで、国の判断をお受けした」と発言し、自らの責任を認めようとしなかった。
 しかし、この時関電は、損害賠償としてコジェマ社に60億円も支払っている。もちろんその原資は、私たちの電気料金からである。このことは、客観的には関電に非があったことを認めたものである。しかし、その真相については一切明らかにしていない。
 コジェマ製MOXには、大きなプルトニウム・スポットができる等その品質に問題がある。このことは、国から委託を受けて「原子力発電技術機構」が行った報告書(「平成12年度 燃料集合体信頼性実証試験に関する報告書(1/3炉心混合酸化物燃料照射試験編))の中でも明らかである。2001年当時、この大きなプルトニウム・スポットが存在する燃料がコジェマ社製であることを隠していたが、今では、「原子力発電技術機構」のホームページに、コジェマ社製であることが紹介されている。
 さらに、当時関電がMOX製造を行った時期は、海外用のMOX燃料を製造する新施設に、フランス政府のプルトニウム持ち込み許可が出されておらず、違法な製造だったのではないかという疑惑がある。しかし関電は、これらについて何も明らかにしていない[コジェマMOX疑惑に関してはこちら
http://www.jca.apc.org/mihama/stop_pu/kanden_cogema_mox_doubt.htm]。

「プルサーマル推進会議」でも、コジェマ社での製造中止には一切ふれず
 関電は、これまで5回の「プルサーマル推進会議」を行い、「品質保証体制の強化・改善」に向けた社内検討を行っているという。関電のHPでも公開されているその資料には、検討課題として、BNFLの品質管理問題はあがっている。しかし、コジェマ社の燃料製造中止の件については一切ふれていない。まるで、コジェマ社でのMOX製造中止・廃棄という事実そのものが、なかったのかのごとくである。

これまでの約束も反故にして、燃料製造契約に進もうとする関電
 関電はBNFLのデータねつ造事件以降、「地元を始め、周辺地域(関西を含む)の理解なしには契約交渉を開始いたしません」と述べてきた。
 西川一誠福井県知事は、知事就任の記者会見(2003年4月23日)で、プルサーマル事前了解を撤回するつもりはないとした上で、「新たな燃料契約に入る前の段階で、その話が具体化する前の段階で、品質保証の問題などについて、県に対して説明がなされるべきだ」との見解を示している。また、8月26日、私たちとグリーン・アクションが共同で「プルサーマル事前了解願いを撤回するよう」福井県に申し入れた際にも、県当局は、関電からMOX燃料契約に関する具体的な話は聞いていないと答えている。
 秋山会長の「近い将来、交渉を開始する」との発言は、地元と市民の意見に耳を傾けず、頭ごなしに、自らの独断でプルサーマルを開始できるとでも思っている、相も変わらぬ傲慢極まりないものだ。

「プルサーマルが実施できなければ六ヶ所再処理工場は動かせない」(原子力委員会決定)
 原子力委員会は、8月5日、「核燃料サイクルについて」と「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」(こちらは「委員会決定」)を出した。その背景には、金沢高裁での「もんじゅ」敗北判決、一連のプルサーマル計画の頓挫、六ヶ所再処理工場でのプール水漏れ・不正溶接問題等々の中で、「核燃料サイクル」が完全に破綻してしまうという危機感がある。なんとしてもプルサーマルを実施し、「もんじゅ」の改造工事を強行し運転再開にこぎつけたいとしている。同時に原子力委員会は、「委員会決定」として、プルサーマルが実施できなければ、六ヶ所再処理工場は動かせないとする旨の基本姿勢を明らかせざるを得なかった。同時に海外のプルトニウムに関しても、同様の扱いをするとしている。この「委員会決定」により、少なくとも、これまで反対運動が主張してきたように、プルサーマルと六ヶ所再処理工場稼働のゆくえは、連動するものとして認識されることになった。

コジェマ社との製造契約を阻止しよう
 福島県・新潟県がプルサーマル事前了解を白紙撤回した中で、さらに電事連会長を出すことになった関電は、なんとかプルサーマルを推進し、破綻続きの「核燃料サイクル」が生きてることを描きだそうとしている。関電と国は、関電の三度目のプルサーマル計画を、行き詰まった「核燃料サイクル」政策の突破口にしようとしている。最初は、BNFLのデータねつ造事件を引き起こした。二度目は、コジェマ社での謎の製造中止と廃棄によって失敗した。関電の三度目のMOX契約を阻止し、プルサーマルの息の根を止めよう。
 関電のコジェマ社とのMOX契約を阻止しよう。そのために、2001年12月のコジェマMOX製造中止の真相とその責任を徹底して追及しよう。私達は、グリーン・アクションと共同で、この問題に関する質問書を関電に出し、早期の交渉を要求している。関電のプルサーマル計画を阻止することで、六ヶ所再処理工場に反対する運動と連帯しよう。