六ヶ所再処理工場の不正溶接問題で 日本原燃は補修計画を撤回せよ 不正溶接の根本原因と自らの責任を明らかにせよ |
六ヶ所再処理工場では、今年6月にウラン試験を開始する予定になっていたが、来年1月以降にずれ込む(9.15デーリー東北)ことを余儀なくされている。なぜか。 使用済燃料貯蔵プールや再処理工場本体で、285箇所もの不正溶接箇所が見つかったからである。原子力安全・保安院から今年6月24日付けで日本原燃は、「使用前検査期間中の補修工事の実施が国に報告されなかったことについて厳重注意」を受け、同時に、「施設・設備建設時の不適合処理等に関する品質保証体制について点検を行い、品質保証体制が正しく機能しなかった原因の究明を行い、その結果について報告すること」を指示されたからである。 そこで日本原燃は、8月6日付け報告書「使用済燃料受入れ・貯蔵施設のプール水漏洩に係る調査、点検結果及び補修計画について」を出したが、この中では前記安全・保安院の指示にある「品質保証体制が正しく機能しなかった原因の究明」は何もなされていない。その後、9月9日付け報告「再処理施設の品質保証体制点検計画について」を出したが、ここには抽象的な点検図式(フローチャート)が描かれているだけである。 実は驚くべきことに日本原燃は、前記8月6日付け報告書で早々と、285の不正溶接箇所の「補修計画」を打ち出し、さらに8月22日付け報告書「再処理工場の変更に係る設計及び工事の方法の認可申請について」で、補修工事の具体的方法までも政府に申請している。「品質保証体制点検計画」を出すより前に、補修工事方法まで出すとは、何という破廉恥。人々ばかりでなく、原因究明を指示した原子力安全・保安院をも愚弄しているではないか。原因究明は形だけ、問題箇所の補修をさっさと済ませ、早々にウラン試験に突入したいという態度がありありと見えている。そうではないというのなら、日本原燃はまず、補修計画を撤回するのが先決である。この点、8月8日の第4回核燃料サイクル安全小委員会でも、「きちんとした品質保証体制ができて、点検が行われて補修が行われるはずが、順番が反対のような気がする」と委員から指摘されている。 8月6日付け報告書では、不正溶接の原因や責任を究明する姿勢が何も見えない。単純なPWRプールの水漏れ箇所に限り、添付1(22〜30頁)の記述にしたがって疑問点を挙げてみよう。
なぜ水漏れしたのか、その直接的原因は図のように「継ぎ足し部材」を入れたことにある。では、なぜその部材を入れたのか、溶接部の隙間(開先寸法)が本来より2mm以上広かったからである。なぜ広くなったのか、L字型ライニングプレートが接触する壁面が設計より約10mm外側にへこんでいたからだという。ここにいくつかの問題点がある。 (1) この指摘は、不正溶接に関する最初の問題が、ライニングプレートを張るべきコンクリート躯体の形状にあったことを示している。前記8月8日小委員会でも、「きれいな躯体状のものについてはそんなに補修箇所がございませんで、・・・四角い躯体ではなくて若干複雑な形状をしているところに、・・・不適切な計画外溶接が多いという傾向」があると、原子力安全・保安院は答えている。それなら、躯体の具体的形状についての調査はされたのか。何もデータは公開されていない。 (2) 8月6日付け日本原燃報告書は、開先寸法不良を品質管理上の不適合と捉えている(24頁)。その場合、専門メーカーは是正措置に関して元請会社の承認を得ることが品質保証計画書等で規定されているという。ところが、元請会社に申し出て対応をとらねばならないとの認識は、現地作業所長にはなかったという。認識がないということは、現場で手直しすることが一般的な常識になっていたことを示唆している。なぜそのようになっていたのか、その実態及び、日本原燃と元請会社をも含む体制上の原因・組織的欠陥が明らかにされねばならない。 (3) 特に、この不正溶接は平成7年(1995)12月14日(推測)に「残業を指示して」行われており、「自分の責任範囲の工程に影響しないよう」にしたと現場所長は述べている。無理な工期があったことを示唆しているが、工事の工程はどうなっていたのか、その記述が報告書には何もない。 (4) 12月17日に、専門メーカー(大江工業)品質管理部門の検査員が開先検査を行い、翌日に元請会社(日立製作所)による立会い確認が行われ、12月22日に当該部の本溶接が実施されている。それゆえ、不正の責任は大江工業だけでなく、少なくとも元請メーカーにもあるのは明らかだ。 (5) このような問題点は、前記8月8日小委員会でも議論されている。その中で、大江工業のようなこれまで原子力発電所での経験が豊富な優秀な会社が不正をしたことについて、委員から疑問が出されている。それに対し原子力安全・保安院は、このプールは「普通の原子力発電所よりもかなり、ちょっとその、本来複雑な構造で、本来であれば今までの原子力発電所での施工実績だけでなく、気をつけなければいけない特殊な理由があったということを認識した上で品質管理なりするべきであった」と述べている。しかし、このような「特殊な理由」とは何で、その認識を日本原燃はもっていたのか、その認識をどのようにしてすべての業者に徹底したのか、このような点について、報告書はいっさい何も触れていない。 大江工業をトカゲのしっぽのように切り捨てて補修を急ぎ、ウラン試験に突っ走るような日本原燃の体質と責任こそが、第一に明らかにされるべきである。 今年の8月30日、青森県野辺地おいて、「核燃から海と大地を守る隣接農漁業者の会」主催による講演と今後の運動方向を議論する会が開かれた。近隣の農業者だけでなく、六ヶ所村、十和田市、八戸市や青森市からも参加して率直な議論が行われた。午前中は小山(美浜の会)の講演であったが、その質疑の中で自然とこの問題の議論が始まり夕方まで継続した。改めて運動方向を模索したいとの意見が多く出され、この問題も取り組むべき課題の一つとして確認された。 いま、プールや本体の不正溶接という推進派の弱みが具体的に現れている。この情勢のすべてを集約するように、当面の差し迫る運動要求をどう立てるのかが問われている。この情勢の下で、ウラン試験に向かう流れを止めるのだという目的意識を明確にすることが求められている。野辺地の議論に現れた人々の憤りや意欲やさまざまな叡智が集約されるよう、さらには9月2日の「とうほく天間農協」主催の講演会で見られた農業者の不安の気持ちや怒りの声が集約されるように、議論の場や交渉の場などが設定される必要があるのではないだろうか。 日本原燃に対し、補修計画の撤回を迫ろう。この問題で、県の姿勢がどちらを向いているのか確認しよう。原子力安全・保安院の矛盾を具体的に突いて、不正溶接問題の全体に対する日本原燃の責任を明らかにさせよう。もって、ウラン試験を阻止しよう。 |