日本原燃の海流想定には虚偽が含まれている
−放射能を泊漁港から遠ざけるよう意図的に操作−


 平野さんが一大決心をして県知事選に立候補されたことで、反再処理運動の中に新たな意気込みと雰囲気が生まれている。反再処理の運動をさらに前進させることで平野候補の決意に応え、支援すると同時に、その選挙戦の中で反再処理の意識を大きく広げ、6月予定のウラン試験を阻止する運動へとつなげていこう。知事選の直後に持ち出されると予測される安全協定の締結を阻止する広範な力を形成しよう。






 12月14〜16日にもたれた「再処理とめよう!全国ネットワーク」の合宿では、14日夜に平野候補の決意表明を聞き、それを受けて平沼経産大臣や日本原燃に対して質問書・申入書を提出するなどの方針を確認した。その質問書等の中で我々は、はがき放流による海流実験(ながすくじら)の結果を踏まえて、日本原燃の海流想定には重要な虚偽があると主張している。それがどのような虚偽なのかを、ここで明らかにしたい。
 結論から言えば、日本原燃は西向き流を無視したばかりか東向き流を意図的に付与して、泊漁港に放射能が近寄らないように操作し、もって泊漁港で採れる海藻による被ばく線量が低くなるように評価して、「安全」をつくりだしているということである。
 表1は日本原燃が想定した下北海域の海流である。この表は、日本原燃が21地点で1年間かけて海流観測した結果を集約した値であるとされているが、測定値から具体的にどのようにして導いたのかは説明されていない。また、下北海域のどの地点の海流も、この表に従って一斉に動くことになっており、場所による向きや流速の違いが捨象されている。
 表では、夏場(6〜9月)とその他の季節に分け、ある向きと流速をもつ海流がどれだけの頻度で起こるかが示されている。流向には南流と北流と憩流がある。南流の方が北流より全体的に流速も大きく、頻度も高いことが分かる。
 重要なことは、この中に西向き流があるかどうかだが、実はないことが以下のようにして分かる。あるとすれば憩流の中だけだが、仮にこれはすべて東向きだと仮定し(さらに憩流の北南方向はすべて北向きだと仮定し)て、流速の年間平均値(期待値)を求めてみると第1図のように、南向きの年間平均流速が12.8cm/s、北向きが3.1cm/s、東向きが1.3cm/sとなる。さらにこれらを合成すると、年間を通じてほぼ南南東に向かう流れと北北東に向かう流れに集約される。南南東に向かう流れが優勢なので、放射能は主にこの方向に流れていくことになる。
 そこで次に、この結果を日本原燃がこの表に基づいて計算した放射能濃度の結果と比較しよう。下の第2図で「港湾区域」(=漁業権放棄区域)の周辺で最大濃度となる点が■印で示されている。第1図の流れ方向を重ねてみると、ほぼ南南東に向かう流れがほぼちょうどその最大濃度の点方向に向かっていることが分かる。結局、憩流はすべて東向きだと想定されていることになり、西向き流はいっさい存在しないと想定されている。
 もし仮に、このように想定された海で放出口からはがきを流したらどうなるだろうか。はがきは決して海岸に近づくことなく、すべて沖合に向かうことになる。ところが「再処理とめよう!全国ネットワーク」が行った実験では、はがきは大挙して泊漁港方面に向かったのだから、この結果は、日本原燃の勝手な恣意的な海流想定に対する立派な反論になっているのである。
 日本原燃の想定は、海上保安庁の観測結果とも矛盾している。それどころか、自らが1年間かけて海流測定した結果とも矛盾している。このことを我々は、彼らの測定データを用いて解析した放射能の拡散図ですでに示している。この場合、泊漁協での放射能濃度は、彼らの計算値より約6倍も高くなる。
 なぜ彼らはこのような虚偽の操作をして大ウソの海流を作り出したのだろうか。それは、放射能が泊に近づくと海藻が放射能で汚染されるが、彼らの被ばく評価ではその泊の海藻を人々が食べることになっているため、はなはだ都合が悪いからである。
 なお、念のために言えば、今回放流したはがきの動きは、海流を体現してはいるが放射能の拡散を表してはいない。放射能の拡散は、ランダムな水分子の衝突で起こる動き(ブラウン運動)の結果である。ところが、はがきは分子レベルからみると巨大なため、分子のランダムな衝突効果が相殺しあってけっしてそのような拡散はしない。実際の放射能ははがきの通った道筋からさらに拡散によって四方八方へと広がるのである。
 いずれにせよ、このような虚偽を行って人々を欺くような日本原燃の安全評価の全体が信用できるものではない。このことを質問書等で明らかにするとともに、選挙戦の中で広く人々に知らせ、安全協定の締結策動に歯止めをかけよう。



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