美浜の会ニュース No.65 |
電力会社・政府は、とん挫したプルサーマル計画をなんとか復活させようとやっきになっている。BNFLと関電は、高浜4号用MOX燃料の英国への返還輸送を早ければ今夏にも実施しようとしている。その後に、BNFLとの新たなMOX契約を狙っている。さらに3月8日、東電は、コジェマ社のメロックス工場で柏崎刈羽の取替用MOX燃料製造を開始した。昨年の刈羽村住民投票で示されたプルサーマル反対の民意を踏みにじる暴挙である。 他方、コジェマ社のメロックス工場で先に製造を始めていた関電は、昨年12月26日、突如製造中止を発表した。理由は、「関電自らが事前監査を行わなかった等の手続き上の問題で経産省の許可が出ないから」というものだった。しかし実際には、関電が違法行為を犯していたのではないかという疑惑が生じている。それは、フランス政府のプルトニウム持ち込み許可が出る前に、新施設でMOX燃料を製造していたのではないかというものだ。 この問題について、関電も経産省も事実を明らかにしようとはしない。関電は2月26日の交渉で「メロックスのどの施設でMOXを製造したかは、守秘義務上言えない」。経産省は私達の質問書に対する回答で「承知していない」の一言だけ。無責任極まりない態度である。 関電のこの疑惑を徹底して追及しよう。それを通じて、関電が狙っているBNFLとの新たなMOX契約策動を封じ込めよう。東電のメロックスでのMOX製造を中止させる力としよう。 関電MOXはメロックスの新施設で製造されたのか コジェマ社のメロックスMOX製造工場は、これまでフランスの電力会社EDF用のMOX燃料のみを製造してきた。しかしコジェマ社は、MOX市場の拡大を狙っている。関電用のMOX製造が、海外向けの第一号だった。 メロックスの拡張は、@既存のメロックス工場内にマルチデザイン用の新ラインを設置すること、AMWFBと呼ばれる新施設(建家)をメロックス工場敷地内に建設することであった。このMWFBは、ペレットを被覆管に挿入する等燃料棒の製造を行うものである。この@とAの両方を使って、高富化度用、BWR用など、あらゆるタイプの(マルチデザインの)MOX燃料製造が可能となった。関電用のMOX燃料もこの@とAを使って製造されたと考えられる。[資料1:模式図参照] 高富化度に関して言えば、これまでのEDF用のMOX燃料は、平均プルトニウム富化度が3.5%と比較的低いものだった。しかし海外の電力会社とフランスEDFは、経済的効率化のため、MOX燃料の高燃焼度化を追及している。そのためには富化度を上げる必要がある(関電の高浜4号MOX燃料の核分裂性プルトニウム富化度は6.1%)。そうなると、製造時に労働者の被曝が増えること等から、新施設・設備が拡張されたのである。 フランス政府のプルトニウム持ち込み許可は出ていたのか 表1は、メロックス工場での関電用MOX燃料の製造過程と、新施設に対するフランス政府の許可の時期を示している。2000年2月22日からの関電の燃料棒製造は、新施設(MWFB)で行われたと考えられる。しかし、この施設へプルトニウムを持ち込む許可が出たのは、同年4月18日。フランス政府の許可が出る前に、違法にプルトニウムを持ち込み、MOX燃料を製造していた疑いが浮上してきた。このフランス政府の許可は、フランス原子力施設安全局の年報DSIN2000に記載されている。[資料2参照] 【表1】 どの施設で製造したか・・東電は公表しているのに、関電は「守秘義務」 メロックス工場内のどの施設でMOX燃料を作ったか?この基本的な質問に対し、関電は一切答えようとしない。2月26日の関電交渉では、新施設の存在は知っていると認めた上で、製造した施設は「コモックス社の要求で、守秘義務上言えない」と答えた。 しかし東電は、福島原発用MOX燃料を、新施設(MWFB)で製造中であることを、市民との交渉の場で明らかにしている。東電は製造場所は言えるが、関電は言えないとはおかしな話だ。関電の「守秘義務」は言い逃れにすぎない。新施設で製造したことが公になれば、プルトニウム持ち込み許可の前に製造を開始したこととなり、大問題になることを恐れていると考えざるをえない。 関電に対しては、3月5日付で再度質問書を提出し交渉を要求している。しかし関電は、「またウソをついたと国に言われては困るので、これまでの回答と矛盾しないよう答えなければならないため時間がかかる」などと言って、交渉を引き延ばしている。 どの施設で製造したかは「承知していない」(経産省) この問題に対する国の対応は、極めて無責任である。経産省・原子力保安院の有倉班長は、2月16日の電話回答では、「製造されたのはメロックスのメロックス工場」「関電が事前監査を行わなかったから製造中止になった。それだけで十分」と言い、あくまで製造中止の理由は「手続き問題」であり、それ以上知る必要もないとの姿勢であった。 そこで、関電が違法行為を行った疑惑があるがあることを指摘した上で、グリーン・アクションと共に質問書(3/5付)を出した。これに対する文書回答(3/12付)は、「承知していない」の一言。無責任極まりない態度である。疑惑が真実だとすれば、国は疑惑隠しの片棒を担いだこととなり、その責任は重大である。 東電は製造確認試験で、なぜプルトニウムを使わなかったのか ここに来て、新たな事実が明らかになった。東電が経産省に提出した「輸入燃料体検査申請書」(2000年11月14日付)には以下のことが記されている。@東電はメロックス工場のMOX燃料製造確認試験で、ウランのみを使用していた。Aこの製造確認試験とは、正式契約を結ぶ前に行うもので、東電は1999年から2000年にかけて実施している(月日は記載されていない)[詳細は6頁参照]。 一方、東電は、ベルゴニュークリア社でMOX燃料を製造した時には、「約80sのMOX粉末を使用して」製造確認試験を行っている。すなわち、ベルゴ社ではプルトニウムを使った試験を行っていたのである。 なぜ東電は、メロックスではプルトニウムを使って試験を行わなかったのか?製造確認試験の時は、まだフランス政府のプルトニウム持ち込み許可がおりていなかったからなのか?そうであれば東電は、プルトニウム持ち込みに関しては合法だったということになる(もちろん、東電の場合はウランでMOX製造確認を行ったという別の重大問題が生じるわけだが)。他方関電は、許可の前にMOXを製造したという違法行為を犯し、その事実を隠すために「手続き上の問題で製造中止」というシナリオがつくられたのか?疑惑は深まるばかりである。 反プルサーマルの連帯した力で、関電MOX疑惑を徹底追及しよう 関電も経産省も、以上の疑惑に一切答えようとしない。関電のメロックスでのMOX製造が合法的に行われたのであれば、何もやましいことがないのであれば、事実を示し明らかにすべきである。 関電が違法行為を犯していたとすれば、この問題は、プルサーマル計画そのものに大打撃を与える。まず第一に、東電がメロックスで製造中のMOX燃料に直接波及する。さらに、コジエマ社との取り引き全体に及ぶ問題でもある。六ヶ所に計画中のMOX燃料製造工場はコジェマの技術を導入する予定である。 六ヶ所再処理工場もしかりである。 核兵器の材料でもあるプルトニウムは、特別厳格な管理が要求される。それにもかかわらず、ずさんな管理が行われていたとなれば大問題である。 反プルサーマルの連帯した力で、関電MOX疑惑を徹底追及しよう! |