−浜岡1号炉で起こった、前代未聞の水素爆発事故− 国・中部電力は各種配管内の水素濃度を徹底調査し、 爆発の原因を明らかにせよ! |
前代未聞の配管部での水素爆発−扉が6.8mも吹き飛ぶ等、凄まじい事故の実態 12月13日に出された、経産省原子力安全・保安院の「中間とりまとめ」および中部電力の「中間報告」は、浜岡1号炉での配管破断事故の原因を水素爆発と断定している。@破断部の調査によって延性破壊に特徴的なディンプル模様や周長の増大等が確認されたこと、A2号炉の同種配管から46%という高濃度の水素ガスが検出されたこと。主にこの2点が、その根拠である。確かに、熱交換器室の扉が吹き飛ぶなど、「中間報告」によってはじめて明らかにされた、破断した配管とその周辺区域での凄まじい破壊の規模からして※、配管内部で何らかの爆発が起こったことは疑いなく、現時点では水素以外の爆発原因は考えにくい。配管内部での水素爆発など、世界の何処の原発もこれまで経験したことがなく、誰も想像したことがない。前代未聞の異常極まりない深刻な事故である。 ※外径約16.5p、厚さ約1.1pの炭素鋼管が、内側から破裂したように破壊。上側のエルボから約90cmの水平に延びた配管が、重さ1.5〜4.5キロもある5つの破片となって飛び散った。「破断部の下部にあるグレーチングが損傷(部材の一部が切れ陥没している)」した。「破断箇所より上流側の配管は、2カ所の支持構造物のUプレートを引きちぎり、約3m下の熱交換器ベント配管の支持架構にあたり、破断部は本来の位置から水平距離で約2m移動」した。熱交換器側の「3弁の保温材は、著しく脱落、損傷し」、弁の開度計や端子箱も破壊された。電線貫通部の鉄板が損傷し、排気ダクトも「内側へ座屈」。さらに「2階のRHR熱交換器(B)室入り口の扉は鍵部が破損し、蝶番の金具ごと外れ、約6.8m離れた計装ラック前で確認され、扉の下部は変形していた。」「また、1階のRHR熱交換器(B)室入り口の施錠していた扉も鍵部が破損し、開放していた」等々。 極めて重大な配管破断事故−事故時であればECCSが働かず大惨事へ −隔離弁が閉じなければ大規模な冷却材喪失事故へ 爆発・破断した配管は、ECCS高圧注入系ポンプ起動用の蒸気配管から枝分かれした余熱除去系の蒸気凝縮系配管である※。破断によって蒸気が抜け、ECCSのポンプを駆動するタービンが動かせない状態となった。言うまでもなく、ECCSは、炉心の空だきを防ぐ最後の命綱であり、ECCS系の配管における破断事故は、極めて重大である。事故時にECCS系配管で破断が起こっていたらどうなっていたか。チェルノブイリ事故のような最悪の事態を招いた可能性も否定できない。まして浜岡原発は、東海地震の危険性が再三再四指摘されてきた地震多発地帯に建てられているのである。 また、より重大なのは、今回の破断事故が冷却材喪失事故であったということである。通常運転時、破断したこの部分には原子炉と同じ70気圧がかかっており、いわゆる圧力バウンダリをなしている。そのような部分での破断は直接に冷却材喪失事故となる。今回事故を収束させえたのは高圧注入系の自動隔離に成功したからである。国・中電の「中間報告」は、主蒸気流量等のデータから、漏出した蒸気量を約2トンと推定している。配管の破断から隔離弁が自動的に閉まるまで約30秒間かかった。この30秒の間に少なくとも2トンもの冷却材が吹き出したのである。もしこの隔離弁が働かなかったとすれば、今回の事故はより深刻で大規模な冷却材喪失事故に発展しただろう。 ※蒸気凝縮系配管とは、復水器が故障した際に、タービンにつながる主蒸気系を隔離し、ECCS系配管から蒸気を余熱除去系熱交換器に導き、水に戻す役割を果たす配管である。 今回なぜ水素爆発が起こったのか−まだまったく分かっていない水素爆発の原因 事故が発生したのは、月1回実施している高圧注入ポンプの起動試験時である。「中間報告」に添付されている炉内圧力の推移を見る限り、高圧注入系ポンプにつながるバルブを開けた直後(数秒後)に爆発が起こったと考えられる。これまでも繰り返し同じ試験を行ってきたにもかかわらず、何故今回に限って水素爆発が起こったのか。国・中電は、その理由を具体的に説明する義務がある。 破断した配管に高濃度の水素が滞留していたことは、そのような滞留を引き起こすような、何らかの異変、諸条件の変化が炉内で起こっていたことを示している。このような炉内の諸条件の変化とはどのようなものか、変化を引き起こした契機は何であるかが明らかにされなければならない。 しかし国・中電が水素濃度を調べたのは、浜岡1・2号炉の蒸気凝縮系配管のみであり、それ以外の配管については調べもしていない。しかも、公表されている浜岡2号蒸気凝縮系Aループの46%という水素濃度は、すでに水蒸気が抜けてしまった1気圧下での濃度である。事故時の状態での水素・酸素濃度はまったく不明である。蒸気が充満し70気圧の圧力がかかった状態での濃度が明らかにされなければ、水素爆発の条件やメカニズムを論ずることなどできない。 国・中電の報告書は、水素と酸素があったから、爆発があったに違いないと推測しているに過ぎず、水素爆発の原因の具体的な説明は一切おこなっていない。 憶測と見込みに基づいたズサンな再発防止策 水素爆発の原因究明も何もまったくなされていないにもかかわらず、国・中電は、水素爆発の可能性のある箇所を蒸気凝縮系配管のみだと決めつけた上で、駆動試験前に蒸気凝縮系配管の滞留物(水素・酸素)除去の実施、弁の設置という再発防止策で安全性は十分確保できるとし、来年1月にも浜岡2号の運転を再開しようとしている。他14基のBWRについても安全宣言を出そうとしている。強引な幕引きである※。 石橋中電社長は、「これほどの水素がたまるとは思いもよらなかった」とコメントしている。「想定外」の蓄積がなぜ起こり、爆発に至ったのか、その理由を説明することができないのに、何故他の場所では起こらないなどと想定することができるのか。配管全体に水素ガスが溜まっている可能性を調べもせず、なぜ危険ではないなどと言えるのか。国・中電の再発防止策は、憶測と見込みに基づいた、まったくズサンでいい加減なものである。 ※マスコミを通じて、事故の幕引きをリードするように白金原因説がさかんに流されている。12月14日の読売新聞は、高圧注入系の弁を開けたため、当該配管部の水素・酸素が移動し、配管内壁との摩擦によって加熱、さらに白金粒子と「マッチを擦ったように反応して自然発火した」と、まるで見てきたかのように水素爆発のシナリオを報じている。今後実施するとしているコンピュータ解析や再現実験も、白金説など、すでにできあがっているシナリオ=特殊要因説をなぞるだけのものではないだろうか。 浜岡1号で老朽化対策としてどれだけの水素を混入したのか公開せよ! 水素に関するあらゆるデータを公開せよ! 水素は放射線による冷却水の分解や、燃料被覆管の酸化によって不断に生成される。炉内と一次系配管に気相が存在するBWRには、水蒸気に混じって、気体状の水素ガスが普遍的に存在している。つまり水素ガスの発生と蓄積は、BWRにとっては宿命的な問題なのである。それだけではない。BWRでは応力腐食割れ防止のため、意図的に水素が添加されている。この水素添加は、原子炉圧力容器、シュラウド等の内部構造、冷却系配管等々の原子炉自体の老朽化と密接に関係している。 圧力容器の底部から炉水漏れが起こるまでに老朽化が進んでいた浜岡1号炉に、どれだけの水素が添加されていたのか、その量と履歴が明らかにされなければならない。そして、同じような水素爆発が再発する危険性がないのかどうか、全BWRについて、水素の注入量とその履歴、どこにどれだけの水素が溜まっているのか、水素に関するあらゆるデータが明らかにされなければならない。 水素注入を何時から開始したのか。水素注入量の実績はどのようになっているのか。それに際してどのような水素濃度計を何台、どこに設置したのか。注入開始以来の、給水中、炉水中、主蒸気中の水素及び酸素濃度の履歴はどうであったか。関連して、炉水中Cr-51濃度や、炉水及び主蒸気中N-13放射能はどのような変動を示したか。これらの管理目標値はどのようなものであったのか。炉心でのまた冷却水浄化系での腐食電位はどのように変動したか。オフガス再結合器の稼働状況はどうであったか、等々。現在指摘できる限りでも、各電力会社はこれだけのことは公表できるはずである。そしてもし計測器を設置していないというのであれば即座に、全ての配管内の水素濃度を計らせなくてはならない。 |