英・新MOX工場の契約の展望はなくなっている
― 英政府公聴会に意見書提出 −


 イギリスでは、BNFLが申請している新MOX工場(SMP)の運転開始の許可を巡る公聴会が、5月23日まで、環境交通国土省(DETR)と厚生省(DH)によって行われました。イギリス政府は、この公聴会と第三者のコンサルタントの評価でSMP工場の将来の採算性にお墨付きを与え、SMP工場の運転開始を許可しようとしています。
 公聴会の主要なテーマは、SMP工場の経済性―MOX燃料契約の有無でした。BNFLは、日本の電力会社とのMOX契約が不可能な状況の中、さかんにドイツとの契約の可能性を宣伝していました。ところが、現実には、昨秋以降、BNFLの再処理費用の値上げ要求に対し、ドイツ、日本、スイス、オランダ等の海外顧客が猛反発しており、海外顧客は、すでに署名している再処理契約のキャンセル、BNFLの契約違反に対する賠償、再処理契約期間の延長を要求し、裁判をちらつかせているという事実が、英・インディペンデント紙によって暴露されました。
 また、国際的に著名な環境・平和グループ「地球の友」は、イギリス政府が、公聴会で検討が必要な政府独自の報告書を故意に公表しなかったとして、5月25日、高等裁判所へ提訴しました。
 刈羽村住民投票の勝利は、日本のプルサーマル計画に打撃を与えただけではなく、SMP工場の運転許可を巡る審議にも大きな影響を与えようとしています。住民投票の結果について、イギリス各紙の記者は刈羽村現地からリポートし、セラフィールドへの打撃になると報道しました。

 SMP工場に関する公聴会へは、イギリス国内外を問わず、一般市民・市民グループからの意見も反映されるということで、私たちも、SMP工場運転開始反対の意思を伝えるために、英語で意見書を提出しました。ここでは、イギリス政府(DETR)に送った意見の概要を日本語で紹介します。(原文は、美浜の会ホームページの英語版に掲載しています。)


SMP工場に関する公聴会への意見

 私たち美浜の会は、1999年に、高浜4号MOX燃料の品質管理データを独自に分析し、ねつ造を暴露しました。プルサーマルに対する日本の市民の意識は、大きく変化しています。私たちは、日本のプルサーマル計画にも、SMP工場の運転開始にも、強く反対します。BNFLのSMP工場の運転開始を認めないで下さい。もし運転開始を許可すれば、イギリスは大損害を被ることになりかねません。
 BNFLのSMP工場は、日本の電力会社からのMOX燃料契約を獲得できそうにありません。ご存知のとおり、1999年12月16日に、関西電力は、品質管理データにねつ造が見つかった高浜4号用MOX燃料の装荷を断念しました。その後、当会は関西の他の市民グループと共に、関西電力とMOX契約問題について交渉を重ねてきました。その交渉の中で、関西電力・広報グループの大森氏と小松氏は、「SMP工場でのMOX契約について、BNFLと一切交渉を行っていない。」と繰り返し、「日本政府、地元、市民の皆様のご理解を得ることが、SMP工場とのMOX契約の交渉を開始する条件」であると発言しました。
 今年2月26日、福島県知事が、福島原発へのMOX燃料装荷を認めないと発表しました。さらに、福島県知事は、政府と電力会社に対し、核燃料サイクルの見なおしを要求しました。
 また、新潟県刈羽村では、5月27日に東京電力・柏崎刈羽原発でのプルサーマル実施の是非を問う住民投票が実施されます。刈羽村の住民投票は、日本のプルサーマル計画の命運を決める、最大の山場となります。刈羽村民は住民投票を通じて、プルサーマル反対の意思を表明すると、私たちは確信しています。住民投票の結果は、日本のプルサーマル計画を葬り去るにちがいありません。
 SMP工場の運転開始を認めれば、BNFLの株主であるイギリス政府は、SMP工場の建設に要した4億6000ポンド以上の損害を被ることになります。貴殿が、賢明な判断を下されることを期待します。

                                                  2001年5月23日


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