5月26日の対科技庁交渉以降、4度の質問書提出を通じて、われわれは、科技庁による被曝隠しと被曝線量の過小評価を追及してきた。その結果、政府・科技庁の線量評価式よりも、はるかに高い放射線量の実測値を彼らが隠し続けているという極めて重大な疑惑が浮かび上がってきた。 われわれは、事故当日の9月30日13時55分から翌日17時01分まで、旧動燃が本米崎小学校で放射線の連続測定を行っていたという事実をホームページ等で確認し、「質問書No.3(7/12)」において、測定データの公表を要求した。 これに対して、科技庁は7月18日、回答の添付資料として、空間ガンマ線量率の実測値の一覧を明らかにした。 図1を見て欲しい。これは、回答添付資料の旧動燃連続測定データをプロットしたグラフである。9月30日18時23分3.7μGy/hと19時51分4.4μGy/h、科技庁の線量評価式と比較して、突出して高い線量率(約9倍)を記録している2つのピークの存在がわかる。 ところが、これまで公開されてきた事故調査委員会資料2-8-1号(10月15日第2回会合)では、9月30日18時41分までのデータしか公表されておらず、それ以降の実測値は公表されていなかった(図2)。つまり、2番目のより大きなピークの存在は、今回はじめて明らかになったものであり、政府・科技庁はこれまでこのデータの存在を隠し続けてきたのである。 それだけではない。さらに重大な疑惑がある。時間軸上にある●は、測定時刻を示しているが、一目でわかるように、17時11分から、翌日にかけてほぼ正確に10分間隔で測定が行われている。それにもかかわらず、それ以前については、あまりにも測定の間隔が離れすぎている。たとえば、15時30分から16時55と1時間25分もの間測定が行われなかったことになっている。あまりにも不自然である。実際には測定が行われたが、あまりにも高い値なので公表できず、隠しているのではないかという疑惑が生じる。さらに、先に述べたように2番目のピークが隠されていたという事実を考え合わせれば、疑惑は一層濃くなる。 この疑惑をさらに追及すべく「質問書No.4(7/26)」において「なぜこんなに大きな間隔があいているのか」と追及したが、科技庁は「モニタリング車等の配置換えを行ったために生じたもの」と答えてきた(8/7)。とうてい信じられない。わずか700mの移動で、なぜ1時間25分もかかるのだろうか。空白時間の丁度さなか、16時30分頃、子供たちは下校し、直接外の空気に触れたのである。この間の実測値を明らかにさせることは、まず何よりも、子供たちの被曝評価と健康調査を行う上で決定的に重要である。空白の1時間25分に隠されたデータを公開するよう、厳しく科技庁を追及してゆこう。政府・科技庁の線量評価の不当性と過小評価を暴くための突破口にしてゆこう。 政府・科技庁は集団リスク評価をおこなえ!被曝被害の責任を取れ! 5月26日の科技庁交渉の中で、「集団リスクの評価を行え!」というわれわれの追及に対して、科技庁は、住民・労働者436名の被曝線量の総和は1.6Svであると回答せざるをえなくなった。さらに、7月18日に受け取った回答では、その他一時滞在者29名の集団線量は0.044人Svであることを明らかにした。 科技庁がこれまでに認めている住民・労働者、一時滞在者の集団線量は1.644人Svであり、「健康管理検討委員会報告」の記述に従って、リスクを1人Svあたり0.1人のガン・白血病死の危険としても、住民・労働者、一時滞在者、計465名が被ったリスクは1.644人Sv×0.1=0.1644人のガン・白血病死の危険となる。しかし、これは最低限の評価である。ゴフマン(1981年)のリスク評価に従えば、1.644人Sv×0.4=0.6576人のガン・白血病死の危険となる。また、中性子線の線質係数の過小評価(最低2倍)、実測値を無視したフィッティング式(約3倍)を考え、被曝線量を適正なものに再評価すれば、少なくとも3人のガン・白血病死の危険となる。 しかし科技庁は、集団線量は明らかにしたが、われわれがこれまでの質問書の中で繰り返し行ってきた「リスク評価を行え」という要求に対して、「防災関係者の線量評価が終わっていないので、集団線量の取り扱いについては未検討」という理由で具体的なリスク評価を一貫して拒否している。具体的な危険を何が何でも隠蔽しようとしている。政府・科技庁に被曝集団のリスク評価を行わせよう。ガン死の危険を認めさせ、被曝被害の責任を取らせよう。 |