本米崎小学校の測定位置は谷間の陰で線量過小評価 「ガン死の危険はゼロではない。436人の線量の総和は1.6Sv」(科技庁) |
科技庁は線量評価をやり直せ! |
被曝住民のリスク評価を行え! 被曝被害を補償せよ! |
科技庁は、本米崎小学校近くの線量過小評価を認め、線量評価全体をやり直せ |
JCOから500m地点の本米崎小学校は、中性子線が直撃する高台にある。ところが、そのすぐ側の線量測定場所は、なんと谷間の陰の位置にあった。このことが、今回初めて、科技庁の回答から判明した(詳細は4頁参照)。この地点の低い測定値は、全体の線量評価を引き下げるのに効いている。その結果、本米崎小学校での線量は、1mSv以下とされている。科技庁は、この地点の過小評価を認め、線量評価の全面的やり直しを行うべきである。 事故当時(10時35分)、小学校では10:20〜45まで「グリーンタイム」として全校生徒が校庭に出ていた。その後、通常通りの授業が行われ、4:30から集団下校。夕方から降り出した雨にうたれながらの下校だった。 放射線に対する感受性の強い子供達の被曝量が、1mSv以下と断定され、被曝なしとされている。350m以遠ということで、小学校の児童達は、国の「健康調査」から基本的に排除されている。5月に国が行った「健康診断」では、18歳未満の検査項目は、問診、身体計測、理学的検査(視診、聴打診、腹部触診)だけである。血液検査は「希望者のみ」。これで子供達の健康が保証されるとでもいうのか。 科技庁に対し、本米崎小学校の線量評価をやり直すよう要求しよう。線量評価の全面的やり直しを要求しよう。 |
集団線量に基づくリスク評価を拒否する科技庁 |
科技庁は、5月26日の交渉で「『絶対ガンにならない』は国の見解ではない」、「ガン死のリスクはゼロではない」と明言した。ゼロでなければ、具体的に数値を出して、危険性を明らかにする必要があり、義務がある。しかし、事故に即したリスク評価をこれまで一切行っていない。6月2日付回答でも「検討中」となっている。交渉では、「検討中」の理由として、「一時滞在者等の個人線量についてまだ調査中」だからという。まだ調査中なら、なぜ「最終報告」が出せるのか。言い逃れにすぎない。交渉の中では、健康管理検討委員会の「10mSvを1000人があびてもガン死者が1人増える程度」を繰り返すのみ。しかし、これは一般論でしかない。今回の事故に即したリスク評価ではない。 |
事故に即したリスク評価を行え。被曝被害に責任をとれ 私達の試算では、低く見積もっても3人のガン死のリスク |
科技庁は、彼らが調査した350m圏内の被曝総量は1.6Svであることを今回初めて明らかにした。このことは、彼らが、限定的で切り縮められたものであれ、集団線量評価を行っていることを示唆している。しかし、その結果については意図的に公表しないのだ。 もちろん、この1.6Svという数字は、大幅な過小評価の数字である。@当初国が発表した被曝量の1/2、A中性子線の毒性の過小評価、B「350m以遠の人々の被曝量はゼロではない」と言いながら、350m圏内に限定等々。しかし、ガン死のリスクを計算するのは、この1.6Svにあとリスク係数をかけるだけ。それにも関わらず、これを拒否している。健康管理検討委の基準でいけば、1.6Svのガン死のリスクは約0.2人。国が一般論でいう1人のガン死者の増加よりも低い値となる。それでもリスク評価を行わないのは、たとえ低い値でも、今回の臨界事故でガン死の危険があることを認めることになってしまうからだ。そうなれば、被曝の責任、補償の問題等が具体的に問題になる。「被曝なし」「責任なし」「補償なし」の根拠がくずれてしまうからだ。 私達の試算では、低く見積もっても3人のガン死のリスクが存在することになる。11月4日の科技庁報告の被曝線量をもとに、中性子線の毒性を2倍とし、500m圏内の住民を含めると、約1200人の被曝線量の総和は7.6Sv。ゴフマン氏のリスク係数で3人のガン死のリスクとなる(詳細は美浜の会ホームページ参照)。 デタラメな線量評価をやり直させよう。事故に即したリスク評価を行わせよう。 |
「事故との因果関係が明らかでなければ医療補償は行わない」(科技庁) |
科技庁とJCOは、被曝した地元住民に対して、なんの補償も行っていない。被曝による影響だという証拠がなければ一切補償しないと、公然と居直っている。居直りを権威づけるため、科技庁は「JCO事故による原子力損害に関する報告」(5月26日)をまとめた。これまでに、風評被害等の合意総額約116億円、合意率約94.5%に達したとして、基本的に事故に関する損害賠償は終了しつつあるとしている。そして今度は、被曝補償を切り捨てる「原子力損害調査研究報告書」をまとめた。「将来訴訟になったときの重要な判断材料」とまで明記している。「報告書」は、基本的にJCOの3名の作業員以外は、補償の対象外としている。住民の健康障害に対する補償は、「請求者(住民)が、事故による放射線障害であることを立証した場合に限る」。さらに、病院での検査費用については、昨年11月末までに受けた1回目の検査費用は支払うが、それ以降の分は「請求者が、2回目以降の医学的検査を受ける必要性を立証した場合」だけ。要するに、事故との因果関係を住民側が立証できない限り、一切の補償は行わない。JCOに言わせれば「100%証明できなければ、2回目の医療費も支払わない」となる。 医学的に、放射線障害によるガンと、一般のガンとを区別することなどだれにもできない。だからこそ、事故後の健康被害については、事故の影響であることを認め、国が補償しなければならないのである。それを逆手にとって、被害者に対し加害者が、「証明してみよ」というのである。事故を引き起こし、住民に被曝を強要し、健康被害が出ても泣き寝入りせよというのである。 そういつまでも、科技庁・JCOのやりたい放題を許すわけにはいかない。政府・科技庁・JCO・御用学者達が、地元住民にしかけている攻撃の数々を広範に暴露・宣伝し、抗議の声をあげていこう。東海村・那珂町だけの問題ではない。次に原発事故が起きた時、このままでは、私達にも同じ仕打ちが待っている。 科技庁に対し、線量評価のやり直しを要求しよう。被曝集団のリスク評価を行わせ、ガン死の危険を具体的に認めさせよう。事故と被曝の責任を明らかにさせよう。被曝被害を補償させよう。 |