12月19日、高浜4号疑惑MOX燃料使用差止仮処分の裁判全面勝利を受けて原告・支援者100名が結集して報告会が開かれた。以前から予定していたイギリスの反原発団体COREのマーティン・フォワードさんの講演会と日程がかさなったため、第一部を原告団主催の報告会、第二部を美浜の会とグリーン・アクション共催の講演会として開催。集会終了後には勝利祝賀会も開かれた。画期的な勝利を勝ち取った喜びと次の闘いの決意にあふれた参加者の発言を紹介して、報告会の報告としたい。 報告会は、原告を代表して美浜の会の小山代表からのあいさつで始まった。 ■全面的な勝利になったことを皆さんとともに喜びたい(クラッカーが一斉に鳴り響き、満場の拍手)。疑惑のMOX燃料を使わせないことを目的に仮処分を申し立てたが、この目的は完全に達成された。絶対にプルサーマルを止めたいという強い決意で裁判を構えたことが勝利に結びついた。これがイギリスの方でも動きを呼び起こした。国会での清水議員の追及を呼び起こした。これらを裁判のなかに持ち込んだ。これらの全体の力で関電を追い詰めていった。裁判の経過のなかでは立証責任を電力側に負わせた女川原発の判決を引用し、これを基本的な論理に据えてやれたことの意義も大きい。 勝利の結果は、MOX不正疑惑にとどまらず、プルトニウム利用の撤回の流れの方向に向かって、新しい現実的な条件をつくり出した。プルサーマル計画全体の撤回、核燃料サイクル政策全面的見直しにむけて我々の勝利を基盤に進んでいく必要がある。今回の勝利を基盤に積極的に次の目標に向かって進んでいこう。 続いて、代理人を務めていただいた冠木弁護士からのあいさつ。 ■裁判でもこういう機会はめったにない。何とすごい実力を我々が持ち出したか。あっと言う間に準備が出来たというのが実力。さまざまな資料を出しているが、今まで関電と闘争してきて積み上げの中でできたこと。高浜2号の差止裁判の経験があったことも大きい。 最初、原発裁判はとどのつまりは被害の立証が問題になるから難しいとは思った。しかし弁護士はハンター、どうも鼻がぐずぐずする。どうしてもやりたいと思った。疑惑の問題に裁判所がくみするわけにはいかない。原告側を負かすとしても疑惑は書くはず。安全とはいいがたいと書くに違いない。そこでよしやろうということになった。裁判所が疑惑ありとの決定と出しても強行できるか、これが滑り止めだった。 アイリーンさんがロンドンに飛んで高浜4号のMOX燃料データ疑惑についてのガーディアンの記事を出させた。それが出ると後はぞろぞろと出てきた。高浜4号のデータ疑惑を認める英国原子力施設検査局(NII)の書簡が15日に明らかになり、参考資料として新たに提出。裁判所はいったん終了していた審尋(証拠調べ)の再開を求めた。「正式な手続きとして上げた方がいいと思うので」と。単なる追加の参考資料としてではなく、正式の証拠として採用するということだ。裁判所は関電に「反論は」と聞き、17日の金曜日に予定していた決定(判決)を週明けに延ばした。これは裁判所の関電に対する脅しだった。すでに裁判所の腹は決まっていた。裁判をしていなければずるずるといってた。NII書簡も出るはずがなかった。明らかに裁判の勝利。何人が見ても流れはこの裁判によって決まっていた。結審の段階で裁判所が決定をだす気であったのは確かだ。 今回の裁判で重要な役割を果たしたNIIの報告書とガーディアンの記事を引き出すのにロンドンに飛んだグリーン・アクションのアイリーン・美緒子・スミスさんが報告。 ■NIIの調査の中身を書くはずのガーディアンの記事が待っても待っても出ない。「もう出すまでは帰らない」、「ガーディアン社の前で座り込むしかない」とイギリスに出かけた。ガーディアンの担当記者と10杯ぐらいコーヒーを飲んで話をした。記者も日本の運動の動きに感動した。NIIの記事の重大さをよく理解してくれた。グリーンピースなど、みんな駆けつけて応援してくれた。BNFLのMOX新工場に反対するイギリスの運動にとっても関電の契約がどうなるかは決定的な意味を持つ。だから一体になって努力をしてくれた。イギリスで今回のように動けたというのも今までの積み重ね。その象徴はCOREのマーティン・フォワードさんで、BNFLを相手に専従二人でずっとやってきた積み重ねが今回の資料を表に出させた。それがマスコミに流れ、物事が発覚していった。これからも顔が見えなくても連絡を取り合って次のステップに進もう。 続いて一人一人の原告からそれぞれの思いが語られた。 ■(福井の池野さん)原告、代理人の頭の下がる活躍、執念を感じる。福井のみんなが感謝している。岐阜からもおめでとうというメッセージも来てる。本当にうれしい限り。県ははじめから「慎重」といいながらプルサーマルを推進してきた。県は県民に陳謝すべきなのに、自分の責任は棚に上げて、関電に責任を転嫁している。関電としてもちょっとやそっとでは幕は引けなくなった。ただ高浜3・4号の2回目の装荷用はフランスのコジェマで加工を開始していて来年3月には完成という。次はコジェマでの加工を中止に追い込む運動を進めたい。 ■証拠固めで協力したいとデータの入力に取り組んだ。関電交渉での安全性の根拠を何一つ示さない関電の無責任な態度への怒りが出発点。勝利に向かっていい意味での厳しさと緊張感が今回の勝利に結びついた。 ■(京都から原告の一人として)今日ほど足取り軽く会場にこれたことはない。関電の対応はひどい。MOXについて公開で説明を申し入れたがいまだに返事がない。12月8日に、疑惑のMOX燃料を使った高浜プルサーマルの中止を求める国への意見書採択を求め、府議会への請願を行った。 ■プルサーマルの危険性について繰り返し聞くことで絶対やめなきゃと思えるようになった。裁判の最悪の結果も考えたりしたこともあったが、勝利のあと、寝床の上で新聞を広げて幸せにひたった。身近な人たち、いろんな人たちに声をかけたが、みんなの何がなんでもという気持ちがあり、勝利につながった。 ■これが生きている学問だ、と子供に教えた。今日のことで忘れてはいけないことは、見も知らない人たちに命や健康を守ってもらったということだと。事実はこういう風に進んだと一人でも多くの人に知ってもらいたい。 ■日高・日置川に続く2度目の勝利、久しぶりの勝利でたいへん喜んでいる。裁判しかないといわれて確かにそうだと思い、やってきた。 ■この場にいるのが本当に涙が出るほどうれしい。闘えば勝利が必ずあると確信した。 ■学生も何人かが原告になり、データの入力などでも頑張った。朝の4時までかかかってデータの入力をした。たいへんだったがその結果を裁判に生かしてもらって感謝している。プルサーマル計画をやめさせるため、明日から裁判のことを宣伝して広めて行きたい。 ■今までなかったことで本当にびっくりした。高浜2号のときは実質勝利だったが今回は本当の勝利、兜の緒をしめてこれからも頑張っていこう。 ■能登(志賀)原発裁判の原告の方から祝福のメールが寄せられた。第1回法廷の冒頭陳述でこの裁判で関電を追い詰めた経緯が紹介された。 17日関電行動報告がつづき(別報告)、代理人への記念品として分刻み、秒刻みで動く弁護士にぴったしと電波時計を贈呈して第一部の報告会を終了。 |
第2部はBNFLの実態を暴くと題してコアのマーティン・フォワードさんの講演。15年以上、2人いるコアの専従の一人としてBNFLを相手に粘り強い闘いを積みさかねてきた経験をもとに、セラフィールド周辺での深刻な汚染の実態や、BNFLがいかに無責任な会社であるかを明らかにした。 特に今回の勝利について、日本だけでなく、イギリスでもいかに重大な意義を持っているかを明らかにした。BNFLの将来が、完成しながら許可が出されていない新MOX燃料工場への日本、関電の契約にかかっていること、今回の結果がそれに重大な打撃を与えたこと、MOX工場がだめになれば、稼働中の再処理工場の必要性について根拠がなくなることなどがわかりやすく指摘された。今回の勝利を生かして、イギリス国内でドイツ・スイス向けのMOX燃料の不正調査や再処理契約を新たに結ばせないための運動を進めていきたいと表明された。日本の運動との今後の連帯を会場の全員と拍手で確認してこの日の講演会を終了した。 |