(創刊:2001年8月18日) ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓ ★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛ メール・ニュース vol.7(1) 発行:2002年4月28日 登録者数:313人 http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html ▲▲▲▲▲緊急連載・NHK「やらせ爆弾漁」の犯罪(2)▲▲▲▲▲ ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ やらせのため50万ルピア払ったと証言 NHK・坂本氏側証人のM氏が暴露 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ ■もくじ■ 〈今回送信分〉 1.やらせのため50万ルピア払ったと証言 −−NHK・坂本氏側証人のM氏が暴露 2.最近の出来事・イベント情報 3.編集後記 ********************************* 1 ********************************** [緊急連載] NHK「やらせ爆弾漁」の犯罪 海老沢体制維持のため受信料を使って提訴 ―────────────────────────────── 浅野健一 アカデミック・ジャーナリスト 同志社大学文学部社会学科教授 ◆第2回◆ やらせのため50万ルピア払ったと証言 NHK・坂本氏側証人のM氏が暴露 ■「NHKにいたインドネシア人の元助手が金を目当てにでっちあげたんでしょ う」。 インドネシアで調査研究しているある日本人が、一九九七年八月二九日のN HK「ニュース11」で放送された「やらせ爆弾漁シーン」のことを私が話した ときに、こう 聞いてきた。NHKは「現代」(講談社)の取材で坂本・元ジャ カルタ支局長による 「やらせ」疑惑が発覚した2000年8月末から、97年 10月31日に坂本氏に不当解雇された元助手フランス・パダック・デモン氏の 人格を中傷するデマ宣伝を流してきた。「現代」編集部の浜野純夫次長らによる 取材に対しても、NHK広報局経営広報部の遠藤雅敏担当部長や米本信副部長ら の話の約80%は、フランス氏は信用できず、事実無根のやらせをでっちあげて NHKを脅迫しているという内容に終始していた。[NHKの初期の主張につい ては、3月に出た「評論・社会科学」(同志社大学人文 学会)68号に書い た。希望者には送ります] ■NHKジャカルタ支局の代理人の弁護士は3月中旬、「一方的に解雇したこと を認める。インドネシアの労働関係法に基づいて退職金などを支払いたい」とフ ランス氏の代理人に言ってきたという。3万5000ドルを支払いたいというの だ。フランス氏は「東京の対講談社訴訟を取り下げることが先決だ」と伝えた。 フランス氏の雇用問題は、地方労働委員会の「労働法廷」で審理されることにな った。NHKと坂本氏は、自分たちが「報道被害者」で、「現代」編集部が一部 の人の供述だけに依拠して名誉を棄損した「報道加害者」であり、私がそれに加 担したという裁判を今も続けている。NHKは2000年4月からインハウス・ ローヤーの梅田康宏弁護士を職員として雇用して、佐藤国際部長ら幹部職員と共 にインドネシア現地に出張させている。 受信料から莫大な経費を使って、やらせを否定しようとしている。ETV裁 判では、「報道(放送)の自由」や「編成権の独立」を絶対視しているNHK が、この裁判では「報道される側の人権」を声高に主張するのだ。全く呆れてし まう。「現代」記事が名誉棄損だというなら、NHKが毎時オンエアしている事 件事故のニュースのほとんどは名誉棄損、報道加害になるだろう。当局に逮捕さ れた被疑 者の言い分は全く取材もせずに、実名・犯人視報道をしているのだか ら。また9・11事件以降、米ブッシュ政権が敵視した国や人民はほぼすべてN HKの報道犯罪の被害者ということになろう。NHKが唯一人頼りにしていたの が国立ハサヌディン大学海洋水産学部職員のM氏である。そのM氏が3月5日東 京地裁で、NHK側証人として証言した。M氏は何と証言の8日も前に来日して いる。同伴者もいた。ホテル代だけでもすごい。M氏はNHK代理人、坂本氏ら と入念に打ち合わせをしたのだろうが、この日の証言は坂本氏の「やらせ」の事 実を明確にすることになった。坂本氏の主張との矛盾も多かった。M氏は自分の 研究やサンゴ礁保護活動のために、爆弾漁をなくすためのプログラムに参加して いると述べた。M氏はそのプログラムで、爆弾漁の映像がほしかったので、NH Kからコピーをもらおうと思って、たまたま海上で出会った(爆弾漁常習者の) D氏に爆弾投擲を頼んだと強調した。M氏は2001年4月に突然私たちにこの 話をしたが、同9月17日の再取材の際は、引っ込めていた。不思議なことに、 M氏はNHKからまだコピーをもらっていない。裁判官が「プロジェクトという のは国のもの か、あなた個人のものかと尋ね、M氏が長々と無関係な話を続け たところ、右陪席裁判官が「簡潔に答えなさい」と大声で制止した。M氏は、 「坂本氏が当初漁民が家で爆弾を製作するところから、爆弾を投げるところまで のすべてをやらせで撮影したいと言っていたので、50万ルピアを払えば可能だ と答えたら、坂本氏から50万ルピアを渡された。爆弾漁をしている人に仲介し てもらうためにC氏にそれを渡したが、8月23日になって、やらせは中止する と言ってきた。C氏には中止になったことも伝えていないし、50万ルピアを返 してもらってもいない。NHKから返すようにも言われていない」と述べた。 「50万ルピアは公務員の月額賃金を上回る大金ではないか」と聞かれ、M氏は 「97年当時、私は月に約70万ルピアもらっていた」 と答えた。しかしハサ ヌディン大学海洋水産学部長によると、M氏の94年の初任給は12万ルピアで 、2001年は約29万ルピアだという。また、M氏は研究員ではなく、庶務の 職員であることも分かった。 ■M氏は船のチャーター料金などの交通費以外はNHKから何も受け取っていな いと断言した。3週間もの間コーディネーターとしてNHKのために働いた人 が、1ルピアも受け取らないというのは信じられない。 坂本氏らが海上でD氏と遭遇する前まで、D氏らがその場で普通の爆弾漁をや っていたということも説明できなかった。M氏がNHKに不利な答弁をするたび に、傍聴席にいた広瀬純一・編成局部長らは、いったいどうなっているのかと右 往左往していた。M氏は証言で、「普通はモーターボートを見ると警察だと思っ て漁師は逃げるが、200〜300メートル離れたところで、D氏は私だと分か ったので逃げずに近づいた」と証言したが、この日傍聴した映画監督の山際永三 氏は「そんな遠くから人を識別できるはずがない。数十メートルでも難しい。漁 民はなぜ逃げなかったのかの謎が深まった」と指摘している。 ■M氏の代理人であるマピナワン弁護士は3月19日、フランス氏と会い、「M 氏はイノセント(無邪気)な男性だから問題の本質が分かっていない。NHKの 利益のために簡単に利用される」と述べたという。彼は2001年9月17日、 私たちの取材に「取材する側と取材される側が、どんな金額のお金にしろ、お金 を渡すことをお互いに了承して何か行為を行っていたとしたら、それはもうやら せだというふうに私は 理解する」と明言している。M氏はNHK取材班のコー ディネーターだった。M氏がいくら「D氏に渡した5万ルピアは自分のポケット マネーから出した」と言っても、D氏らにしてみればNHKからもらったお金で あり、爆弾は坂本氏が回していたNHKカメラのために投げたことに間違いな い。 ■坂本氏がいよいよ5月7日日午前10時半から12時まで証言する。東京地裁 631号法廷。傍聴をお願いしたい。 ------------------------------------------------------- この裁判については、私の大学のHPも参照ください。 浅野ゼミのホームページ http://www1.doshisha.ac.jp/~kasano/ ********************************* 2 ********************************** [イベント情報] ◆◆「女性国際戦犯法廷」判決を実現させよう!2002年国際シンポジウム 日時 :5月12日(日)午後1時−5時(開場12時30分) 場所 :明治学院大学3号館3101号室(東京都・港区白金台) 資料代:1500円(学生・VAWW−NETジャパン会員1000円) プログラム ◆ビデオ上映「ハーグ最終判決」 ◆アジア各国代表報告 「女性国際戦犯法廷」の全過程の総括と被害女性にとっての判決の意味 韓国、朝鮮、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、東チモール、 タイなど(予定) ◆発言 「法廷」判決の法的・歴史的意義 パトリシア・ビサー・セラーズ・・「法廷」主席検事 (旧ユーゴ・ルワンダ国際戦犯法廷ジェンダー犯罪法律顧問) ウィリー・ムトゥンガ・・・・・・「法廷」判事 (ケニヤ大教授、ケニヤ人権委員会委員長) ケリー・ドーン・アスキン・・・・「法廷」法律顧問 (『女性に対する戦争犯罪』著者) ロンダ・カプロン・・・・・・・・「法廷」法律顧問 (ニューヨーク市立大学大学院教授) ◆討論 判決の勧告をどう実現させるか 主催 :「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン) 後援 :明治学院大学国際平和研究所 連絡先:VAWW-NETジャパン Tel&Fax:03-5337‐4088 ********************************* 3 ********************************** [編集後記] 前回六号から一ヶ月ほど日があいてしまいました。ひとえに編集担当の岩崎の 「足もとのもつれ」や不手際によるものです。お詫びします。これからまとめて 三号をお届けすることになります。とくに浅野さんの原稿をお待たせすることに なってしまいました。首を長くして待ってらっしゃった方々には申し訳ありませ ん。 浅野レポートの第二弾、爆弾漁についてのNHKの「やらせ報道」裁判の記録 は、踏み込めば踏み込むほど、NHKが力づくでことを押し切ろうとしているの がよく見えてきます。浅野さんの整理を見ているかぎり、裁判の行方もかなりは っきりしているように見えるのですが、このなんともみっともないNHKの法廷 行動を支えているのが受信料なんですね。二重に愚弄されているような気がしま す(もっとも、わたしはヒノキミ問題以来、受信料は断固として払っていません が)。 一方ではこうしたメディア機構の頽廃が広がり、他方では、いままさに焦点と なっているメディア規制三法のような、沈黙を強いる力が膨れあがろうとしてい ます。一見ふたつのことが反対の問題に見えながら、つまるところ権力を握りで きるだけ抵抗を排除して行きたい支配者にとっては、これらはどうとでも使える 二種類の手だてのレパートリーにすぎないのでしょう。 メディア規制三法には大手民間メディアもようやく反対姿勢を明確にしてきて いますが、この法律をどこまで阻止できるものか。国会審議がいよいよ始まりま す。少なくとも日の丸/君が代問題のときよりは、(きっとどこかで裏切るだろ うなとは思うものの)まだ大手民間メディアも反対で足並みをそろえているだ け、差し止める余地は残っているのでしょう。できるかぎりの手だてを尽くさな いといけないな、と思うこのごろです。次号では鈴木香織さんがこのことについ て、集会報告を書いてくださっています。 それにしても、有事法制などとともに、小泉政権下で「改革」の名で進められ ることが、あまりに度し難いために、かえってリアリティをもって受け止められ にくいのかもしれません。一九三○年代の戦時動員が、どれもみな「改革」や 「革新」の名のもとに進められたことを想起すべきだと思います。悪い空気が広 がっています。 メキキ・フォーラム http://www.jca.apc.org/~lee/mekikibbs/index.html 7号編集担当 岩崎稔(東京外国語大学教員) ************************************************************************ ■みなさんからの御意見・御感想、なにより投稿をお待ちしています! (vol.7編集担当=岩崎稔) ◇─────────────────────────────────◇ │発行= 2002年4月28日 │ │ 発行所=メキキ・ネット事務局 │ │ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html │ │ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp │ │ FAX: 020-4666-7325 │ ◇─────────────────────────────────◇ |