(創刊:2001年8月18日)
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             メール・ニュース vol.20(2) 発行:2005年12月19日
                            登録者数:343人
               http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html 
 
何かを隠そうという意図があるとき、そこで消去されているものをつなぎ合わ
せると、ぎゃくに隠されたものの輪郭が浮かび上がることがあります。松尾証
言が切り貼りしてつくろうとするストーリーのツギハギ方は、かなり荒っぽい
ままのようです。あの四分足らない番組そのものみたいに。
前号に引き続いて、松尾証言の自己撞着から見えてくるNHK裁判の問題点を、
鈴木香織さんが読み解きます。

 ■もくじ■
NHK裁判証人尋問ハイライト         鈴木香織(メキキ・ネット事務局)

その3
  問題は「番組の顔が見えないこと」。でも顔って誰の顔?

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NHK裁判証人尋問ハイライト        鈴木香織(メキキ・ネット事務局)
【その3】
  問題は「番組の顔が見えないこと」。でも顔って誰の顔?

 放送の直近になって制作現場から番組を引き上げるなどという事態が、この番
組以外にはなかったと、松尾氏は認めた。何が問題だったのか。「顔が見えない
番組。そういう番組を放送してはいけない」。では、私たちが見たあの番組につ
いていたのは誰の顔なのか。松尾氏の証言を追ってみた。

 01/1/25に番組を引き上げて以降、松尾氏、吉岡民夫・教養番組部部長、伊東
律子・番組制作局長の三人で番組を制作したと松尾氏は主張する。「吉岡がプロ
デューサーで現場の責任者。私と伊東がサポート」「吉岡と伊東で調整し、二人
が困ったときに私が意見」「基本的には吉岡が中核、伊東がアドバイスし、私が
最終判断」したというのだが、なんだかすっきりしない。

 しかも、企画当初から現場の中心だった永田チーフプロデューサーや長井デス
クが、そこに加わらなかった点については謎だらけだ。「三人で話をしようと吉
岡が言った。そのとき永田、長井は黙っていなくなった。疲れてもいたが、誰も
文句がなかったということだ」そうだが、本当にそれだけなのだろうか?

 その上、「慰安婦」制度に日本政府が関与したことをカットしたのは、この問
題に対する見解が定まらないからだと証言して、ご自分の見識のなさまで証明し
てくれた。93年に当時の官房長官、河野洋平氏が政府関与を公式に認めているの
に、見解が定まらないからカットしたでは通らない。しかも吉岡氏のせいにする
ので、原告代理人の一撃。「あなた、全責任をとるって言ったじゃないですか?」
すると松尾氏は「誰によりかかって全責任をとるか。吉岡。伊東」。

 孫請けとしてNHKの統括のもとで取材と編集をつとめた製作会社、ドキュメン
タリージャパン(DJ)の弁護士は、番組を引き上げる以前のNHKの責任を追及し
た。実際にはNHKと一緒に作っていた番組なのに、DJのせいで企画から外れたよ
うな松尾証言を放ってはおけない。松尾氏もNHKの責任は認めたのだが...

 DJ:顔が見えない、顔が見えないというが、永田や長井に責任はないのか?
松尾:ない。
 DJ:永田、長井は全く責任を負わないということ?じゃあ、あの人たちは何?
松尾:制作スタッフ。
 DJ:DJがつくったものが企画から外れているからNHKが引き取った。
   どうして企画から外れたと判断したのか?
松尾:吉岡から聞いた。
 DJ:(NHKが引き取る)1/24以前、NHKには責任なかったということか?
松尾:責任はある。
 DJ:チーフプロデューサーは永田でしょ!
松尾:違う。NHKエンタープライズの林EP。

NHKエンタープライズはNHKの子会社で、NHKから受注した番組を外注するのが業
務。この番組はNHK、NHKエンタープライズ、DJ三社の共同制作だ。林EP(エグゼ
クティブ・プロデューサー。エライ・プロデューサーのこと)は「女性国際戦犯
法廷」を番組にしようと提案した張本人だが、制作過程での存在感は希薄だった
らしい。地球外生命体(E.T.)ならぬ予想外生命体、林EPの名はどんな意味を持
つのだろう?

松尾:管理上の責任者と現場責任者は違う。現場は永田。
   番組が完成すると管理上の顔になってゆく。

NHK代理人の喜田村弁護士が一枚の紙を掴んで証言席に近づいた。取材申入れの
際にDJのディレクターが、VAWW−NETジャパンの担当者に提示した番組提案票だ。

喜田村:どこを見て番組責任者を確認するのか?
 松尾:(「提案部局」欄の横、CP氏名の欄を指して)林。
喜田村:永田をCPという言い方と林CPとの意味合いの違いは?
 松尾:委託している。最終的にNHKの責任者は永田。制作プロデューサーは林。

 読めば読むほど、あの番組の顔にふさわしい混乱と迷走が見えてくるではない
か。でも私が見たい顔は別にある。主尋問(NHK代理人による尋問)の中で番組
を引き上げた経緯を聞かれた松尾氏は、こんなことを言っていた。
「耳元にひとつの情報。『放送現場でETVについて混乱している』。伊東に問い
合わせ、報告を受けた」。報告によれば「吉岡が外部で作った番組について自分
が思ったとおりじゃないから、NHKに持ち帰って編集したいと言っていた」。

「耳元にひとつの情報」をもたらしたのは誰だったのだろう?その顔が誰の顔な
のか、それを私は知りたい。

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                       (20号編集担当・岩崎稔)

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│発行= 2005年12月19日                       │
│発行所=メキキ・ネット事務局                    │
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