第55回議事録より 日時 2001(平成13)年8月21日(火) 午後3時〜5時40分 〔略〕 2. 「女性国際戦犯法廷報道」について 7月24日に受理した申立書と、それに対する当該局の答弁書と放送の反訳文、および、委員長作成による本事案に関する「BRC申立と裁判所への提訴」対照メモ等を基に、主に事案の形式要件について検討した。 同事案は、昨(2000)年12月に東京で開かれた民間法廷「女性国際戦犯法廷」を取材し、本年1月に放送された特集番組『問われる戦時性暴力』に対して、同民間法廷を主催した実行委員会から、「法廷の重要な核心部分が削除・隠蔽されたまま報道された結果、視聴者に同法廷の意義・内容が矮小化・歪曲化して伝わり、主催者である申立人の名誉が著しく侵害された」とする抗議があったもの。申立てではこの報道に、名誉権侵害のほか、 “正確に報道する義務違反”“公平原則違反”“説明義務違反”など放送倫理違反があったとして、当該放送局代表者の謝罪文の提出と放送、本件法廷を正確に伝える番組の制作と放送などを求めている。また、同事案は、BRCへの申立てと同時に、当該放送局と番組制作委託会社に2,000万円の損害賠償を求める訴訟も起こされている。 まず事務局から、BRCへの申立てと裁判提訴の経緯、事案および当該放送局からの見解(答弁)書の概要などについて、以下のように説明した。
事務局の説明の後、委員長から、申立てと提訴内容の比較に関する補足説明があり、検討に入った。委員から出された意見は概要、次のとおり。 ▽ 「裁判で係争中の問題は取り扱わない」との運営規則については従来、裁判制度という強制的調査権によって担保された裁判所がきちっと前提事実を確認する、直截的で最終的紛争解決に委ねることのほうが真実により近いということから、裁判を優先すべきであろうと考えてきた。しかし、今回のように一つの事件を二つに分けてきた場合、事案の取り扱いを実質的な内容でみるのか、形式的な相違点でみるのか、という対応の仕方に関するわれわれの判断が求められていると言えよう。 ▽ 申立てと提訴の同一性を判断する観点は、対象番組、主張している権利・利益侵害、相手方の三つが実質的に同一かどうかだと思う。その中で、かなりの相違点が確認でき、別々に議論できることが可能であれば、それぞれが別々な事案の側面があると考えられ、裁判と切り離してBRC独自の論点設定は可能であろう。また、請求内容が異なるのは、裁判所という仕組みとBRCの審理対象から言って当然であろう。 ▽ 請求内容が異なるのは当然ということであれば、同一内容でないとみなす理由はほとんど解消してしまうと思う。 ▽ この事案について裁判所で不法行為ないし債務不履行を判断する時は、結局、倫理違反からすべてを解き明かし、判断していかなければならないと考えられる。したがって、重ならずに残る問題はないのではないか。 ▽ BROの主たる目的が放送倫理を問うことであるとすれば、申し立てられた放送倫理違反を取り上げることは可能ではないかと感じる。ただ、やはり申立てと提訴内容の重複と、取り上げる事柄が訴訟の中でも実際に触れられていかざるを得ない流れにあることは、悩ましく思う。 以上のような議論の後、委員長から、「本日の検討結果として、『大方の委員が、申立てと裁判の内容が重複するとみる意見であった。しかし、この点については、申立人が用意している「意見書」を提出してもらったうえで、次回の委員会でさらに検討し、審理に入るかどうかの結論を出すこととした』とすることでよろしいか」との提案があり、全員これを了承した。 (出典) BROホームページ http://www.bro.gr.jp/giji/g055.html |