20079

 

―国際労働研究センターの発展的解消について-

               

国際労働研究センター運営委員会

 

 

国際労働研究センターの活動の総括と今後の活動の方向について

 

(1)国際労働研究センターの活動と組織再編の経緯

 

国際労働研究センターは、19956月に、戸塚秀夫氏の発意によって設立された。「経済の世界大化(globalization)、地域大化(regionalization)が進展するに伴って、労働者が国境を越えて連帯活動を強める必要はますます強まっており、日本でも既存の労働組合だけでなく、『草の根』の任意組織の国際活動が広がっている。このセンターはそれらの組織と連携しながら、労働者間、研究者間の国際的コミュニケーションを深め、一国の枠を超えた国際労働研究(Transnational Labor Studies)の領域を開拓することによって、日本の労働・社会運動の再興にささやかな貢献をする」(設立趣意書)というのがその目的であった。

 

設立後、10周年にあたる20056月までに定例研究会が80回、臨時研究会が16回(創立記念研究会を含めると合計97回)開催され、そのほぼ3分の1は外国からのゲストを招聘して行われたものであった。同年秋には労働教育をテーマとした10周年記念シンポジウムを開催し、同じ時期に10周年記念出版として『社会運動ユニオニズム-アメリカの新しい労働運動』を刊行した(この10年間の活動については、本書に掲載された戸塚秀夫「国際労働研究センター10年:一つの軌跡-新しい運動潮流にひきつけられて-」および巻末付録「国際労働研究センター研究会一覧」に詳しい)。この間、センターの会員はほぼコンスタントに150名前後で推移し、会員に対しては、労働法律旬報連載シリーズの抜き刷り、会報、英文ブレティンの配布などのサービスが行われた。

 

10周年の節目のあとも定例研究会を中心とした活動が引き続き行われるとともに、新たに大学におけるレイバーセンターの設立が模索された。2006年にセンター会員の発意によるプロジェクト研究組織「レイバーフォーラム」が一橋大学に設立され、20073月には、この研究組織を母体とした「一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター」が開設された。

 

 

(2)国際労働研究センターの成果

 

国際労働研究センター設立から12年間の活動を振り返ってみれば、センターは、ささやかながら重要な貢献をなしてきたといえる。その一つは、労働運動活動家と研究者の幅広い交流の場をつくり上げてきたことである。10年以上にわたる長いあいだ多くの会員がセンターの活動を支え、そこには、労働運動に関心をもつ幅広い年代の実践活動家、研究者が含まれている。また、アドバイザー、運営委員にはコアになる人材が結集してきた。国際労働研究センターは、規模は小さいとはいえ、職業、運動潮流を越えた討論と交流の場を提供する稀有の組織であったといってよい。

 

もう一つは、国際的な交流のネットワークを形成することによって、国際的な労働運動の新しい潮流の経験や理論を吸収し、国内に発信する活動を行ってきたことである。とくに、イギリスのニュー・ユニオニズム、アメリカのニュー・ヴォイス、社会運動ユニオニズムなどの新しい労働運動の動向をいち早く発信してきたことは、日本の労働運動にも少なからず貢献したのではないかと思われる。こうした国際的交流による新たな運動潮流の開拓は、国際労働研究センターの活動の重要な特徴をなすものであったといえる。

 

さらにもう一つあげるとすれば、参加型労働教育、アクション・リサーチなど新たな運動手法を国際的な経験に学びつつ、その実践を試みてきたことである。この活動は、ほぼ創立10周年前後からの新しい試みであるが、レイバーフォーラムやフェアレイバー研究教育センターの活動に生かされつつある。

 

国際労働研究センターの活動を以上の3点だけに要約することはできないが、いずれも、センターのユニークな存在価値を示すものであり、センターの今後のあり方を考えるうえで十分に留意されなければならない。

 

 

(3)一橋大学フェアレイバー研究教育センターの目的

 

一橋大学レイバーフォーラムとその後継組織である一橋大学フェアレイバー研究教育センターは、日本の労働運動の再活性化をめざして研究・教育を行うことを目的としている。フェアレイバー研究教育センターは、大学に置かれた組織であるという点において、また、国際労働研究よりも広い研究・教育対象をもつという点で、国際労働研究センターとは異なっている。しかし、労働運動のさまざまな潮流を越えて、日本の労働運動の再活性化をめざすという基本的な視点は、その設立の当初から国際労働研究センターが協力を惜しまなかったことに示されるように、国際労働研究センターの設立目的との共通性をもっトいる。それは、国際労働研究センターの活動の主要部分を引き継ぐことができるだけでなく、さらに大学に置かれた研究教育組織として、国際労働研究センターでは果たしえないような幅広い活動を期待することができるのである。

 

フェアレイバー研究教育センターは、労働組合の大学に対する寄付講義をマネージするほか、大学院教育における労働に関する研究・教育、社会や地域に開かれた研究会、アクション・リサーチの企画と実施などの幅広い活動を行うことを期待されており、国際労働研究センターが行ってきた定例研究会活動や国際的な労働運動家、研究者との交流事業などと重なる活動の大半は行うことになるであろう。

 

一橋大学フェアレイバー研究教育センターの活動を今後どのように実質化し、強化するかはまさに現在の課題であるが、国際労働研究センターが行ってきた主要な活動の大部分がフェアレイバー研究教育センターによって担われることになると思われる。他方、任意組織としての国際労働研究センターが行ってきた事業のうち、国際連帯や国際的な争議支援活動などの運動に直接関与する諸活動、刊行物や映像メディアなどの有料配布や制作受託、労働教育の受託、その他の有料の事業は大学の組織であるフェアレイバー研究教育センターが担うことはできない。そこで、これらの活動を今後どのような組織によって担うことにするかが問題になる。

 

 

(3)新たな運動と事業のため新組織構想

 

そこで、国際労働研究センターの事業のうち、フェアレイバー研究教育センターが担うことのできない事業については、後継組織として2007年7月10日付で設立されたLaborNowが担うこととしたLaborNowの活動は、国際連帯活動などの運動的な活動と映像メディアの制作や労働教育などの事業的な活動が中心となる。

 

なお、LaborNowとフェアレイバー研究教育センターは相互に連携協力し、また、それらの活動や運営に国際労働研究センターの運営委員が積極的に参加していく。

 

以上の経緯により、2007年9月末日をもって、国際労働研究センターを解散し、国際労働研究センターがこれまで行ってきた活動を一橋大学フェアレイバー研究教育センター並びに、新設する組織に移すこととしたい。

 

以  上

【連絡先】

186-0013 東京都国立市青柳3-6-11 国際労働研究センター

Tel & Fax : 050-3720-0699 e-mail: ctls@msh.biglobe.ne.jp

 

一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センターウェブサイト

http://www.fair-labor.soc.hit-u.ac.jp/

 

Labor Nowウェブサイト

http://www.jca.apc.org/labornow/