1999年5月11日〜15日、オランダのハーグで「ハーグ平和アピール市民
社会会議」が開かれ、世界約100か国から10,000人近いNGOの人々が
参加。日本からの参加者は約400人。
会議では50項目の課題が討議され、最終日には「公正な世界秩序のための10
の基本原則」を採択。その第1項目が「各国議会は、日本国憲法第9条のよう
な、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである」
この会議の大きな特徴の一つは、100年前に開かれた第一回ハーグ平和会議で
は戦争を規制する条約が政府間会議によって作成されたのに対して、今回の会議
はNGOによる市民社会の会議によって決議がなされたということ、もう一つ
は、このたびの平和アピールが、1990年代に政府とNGOが参加して開催さ
れた国連会議で採択された子どもの権利条約や、最も法に近いとされる世界人権
宣言などの条約の延長上にあり、理念はそれらの実践の成果の中から築き上げら
たことです。
99年ハーグ平和アピールはスローガンを「平和は人権であり、今こそ戦争を
廃絶する時」としていますが、「正義の戦争」の問題について十分にクリアされ
ているとは言い難くまた、超国家的な社会が果たして恒久平和を保障するものと
なり得るかなど、不安定な要素も残っていると思います。しかし市民による「2
1世紀の正義を求めるアジェンダ」の提案が、平和への大きな礎の一つとなった
と言えるでしょう。
そしてこの理念をより発展させ得る立場にあるのも、平和憲法を持つこの国であ
り、この国に住む市民です。
中国、ロシア、フランスなどの市民のかげが見えず、また欧米中心主義であっ
たなどの問題点は残ったものの、参加者はハーグ会議で市民の連帯を確認しまし
た。それはかつて「神を信じたもの、信じなかったもの」共に臨んだフランスの
反ナチス抵抗運動が一つの典型としてあり、これからの平和運動の連帯の意義の
重要性を鑑みるとき、その運動からも学ぶべき点が多いと言います。あまり節度
のない場の共有はできかねますが、この国でも今共通の目標に向かって思想、宗
教などの違いを越えた共同の行動が求められています。
国際的には国連決議さえも乗り越えた「人道的」軍事介入の横行、国内的に
は、軍事同盟とそこから派生する戦争法の乱立、そして青年や子どもたちに銃を
持たせ、再びアジアの地を軍靴で踏みにじろうとたくらむ勢力による歴史の改
竄・憲法改悪と、目に見えるだけでもその現実は余りにもハーグ平和アピールと
はかけ離れているように見えます。またハーグアジェンダに取り上げられている
「人間の安全保障」を政府が横取りし、似て非なるものにすり変えようとする動
きにも注意深く対峙しなければなりません。
しかし、ハーグ市民会議の開会式でのデズモンド・ツツ大司教の呼びかけは、
平和市民会議の意義を見事に象徴し、参加した多くの市民を感動させ、自信と勇
気を与えました。
「われわれが奴隷制度を、ホロコーストを、アパルトヘイトを終わらせること
ができたのであれば、われわれが終わらせることができないことなどあるので
しょうか。われわれが決意を持って臨めば、われわれには戦争を終わらせる力が
あります」
このたび、ハーグ平和アピール会議に提出された50項目のアジェンダ(課題及
び行動計画)と基本原則を翻訳した資料集が、「無防備・非核ネットワーク札
幌」から発行されました。
「この資料集が、平和を愛し、平和をかちとろうと努力されている人々のお役
に少しでも立てば幸いです」−解説より−
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The Hague Appeal for Peace
1999
−ハーグ平和アピール市民社会会議・資料集−
■21世紀の平和と正義を求めるハーグ・アジェンダ会議板(1999年5月)
■公正な世界秩序のための10の基本原則
発 行:無防備・非核ネットワーク札幌
発行日:1999年10月25日
定 価:400円
連絡先:札幌市西区福井5-14-4 谷百合子方
無防備・非核ネットワーク札幌
−もくじ−
◇解説
◇21世紀の平和と正義を求めるハーグ・アジェンダ 会議板
前文
テーマ
主要な行動−「ハーグ・アジェンダ」を実現すること
平和と正義を求めるハーグ・アジェンダの4つの柱の紹介
戦争の根本的原因/平和の文化
国際人道法及び国際人権法並びにその制度
暴力的紛争の防止、解決及び転換
軍縮及び人間の安全保障に関するアジェンダ
◇「公正な世界秩序のための10の基本原則」(日本語訳)
◇「公正な世界秩序のための10の基本原則」(英文)