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Subject: [keystone 2164] 国側準備書面(四)−1
Date: Thu, 9 Dec 1999 00:46:52 +0900
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仲田です。
軍用地行政処分取消訴訟裁判の国側準備書面(四)です。長いので2回に分けます。

◎行政取消訴訟裁判
1995年8月7日の「内閣総理大臣による強制使用認定取消訴訟」と
1998年8月14日の「沖縄県収用委員会による強制使用裁決取消訴訟」の両裁判が
併合されて、裁判名を「軍用地行政処分取消訴訟」と呼んでいます。
併合されてから、今回の裁判で3回目となります。
次回の第4回口頭弁論は,2000年3月15日午後2時10分から開廷となります。

また、もう一つの裁判である、「特措法違憲訴訟」は、2000年1月18日に第5回
の口頭弁論が開かれます。
 

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                      被 告 準 備 書 面(四)
                                                  平成11年11月30日

 被告らは、本準備書面において、原告らの平成11年(1999年)9月13
日付け準備書面(以下「原告ら準備書面」という。)及び平成10年(行ウ)第9
号事件についての訴状(以下「訴状」という。)に対し、次のとおり反論する。

第一 原告ら準備書面に対する認否

 一 第一章について

  1 本訴訟の争点と関係がないので、事実については認否しない。
    ただし、沖縄が昭和47年5月14日まで「日本国との平和条約」(以
   下「平和条約」という。)第3条により米国の施政権下にあったこと、そ
   の時代に米軍が原告ら主張のとおりの布告・布令を発布したこと、「琉球
   諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(以下
   「沖縄返還協定」という。)により昭和47年5月15日に琉球諸島及び
   大東諸島の施政権が米国から日本に返還されたこと、沖縄の米軍基地は、
   復帰後、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」
   (以下「日米安保条約」という。)6条及び「日本国とアメリカ合衆国と
   の間の相互協力及び安全保障条約6条に基づく施設及び区域並びに日本国
   におけるアメリカ合衆国の地位に関する協定」(以下「日米地位協定とい
   う。」2条に基づき、日本政府から米国に提供されることとなり、その法
   的性格は、日本本土におけるものと同一のものとなったこと、復帰前に沖
   縄において公の目的に供されていた土地等でその供用に係る機能を復帰後
   も引き続き維持する必要があるものについて、新たに使用権原を設定する
   ために、「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」(以下「公用
   地暫定使用法」という。)が制定されたこと、、その後、「沖縄県の区域
   内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関す
   る特別措置法」(以下「位置境界明確化法」という。)附則6項により公
   用地暫定使用法の暫定使用期間が延長されたことは、認める。
   
  2 法律上の主張は争う。
   
 二 第二章について

  1 その第一章について
    本件訴訟の争点と関係がないので、認否しない。
   
  2 その第二について
   (一)その一について
    
    (1) その1について
      復帰後、沖縄県が基地の整理・縮小と跡地利用を重点施策とし、日
      米両国政府に基地の整理・縮小を要請していることは認め、その余
      は不知。
       なお、返還率は、正しくは15・6パーセントである。
      
    (2) その2について
      沖縄県における米軍基地は北海道に次いで大きな面額を占めている
     こと、米軍専用施設が沖縄県に集中していること、沖縄県を除く他の
     都道府県において自衛隊施設等を米軍が一時的に使用していることは
     認め、その余は不知。
      なお、平成9年3月末現在、静岡県における米軍基地の面積割合は1
     ・1パーセント、山梨県における米軍基地の面積割合は1・0パーセン
     ト、沖縄県(本島)における米軍基地の面積割合は18・88パーセ
     ントである。
     
    (3)その3について
      沖縄県における米軍基地が本土の米軍基地と比較して民公有地か多
     く、接収の背景も違うことは認め、その余は不知。
      なお、平成9年3月末現在、金武町の面積に占める米軍基地の面積割
     合は59・6パーセントである。
     
    (4)その4について
      平成7年3月末現在の「演習場」等の施設数、面積、全基地面積に
     対する割合及びそれぞれの施設が沖縄県に所在していることは認め、
     その余は不知。
     
    (5)その5について
      平成8年6月末現在、米軍の訓練のための水域及び空域が設定されて
     いることは認め、その余は不知。
     
    (6)その6について
      平成7年3月末現在、沖縄県における米軍基地に海兵隊、空軍、海軍,
     及び陸軍が置かれており、二以上の軍が共用している施設もあること
     は認め、その余は不知。
     
   (二)その二について
    
    (1) その1について
     沖縄周辺の水域等において、米軍の演習・訓練が行われていることは
     認め、その余は不知。
     
    (2) その2について
     キャンプ・ハンセンにおいて、県道104号線越え実弾砲撃演習が行
     われたことは認め、その余は不知。
     
    (3) その3について
     読谷補助飛行場において、・パラシユ−ト降下訓練が行われたことは
     認め、その余は不知。
     
    (4) その4について
     勝連半島にホワイト・ビーチ地区が所在することは認め、その余は不
     知。
     
    (5) その5について
     沖縄復帰以降航空機関連の事故が発生したこと、沖縄県において軍人
     ・軍属による犯罪が発生したことは認め、その余は不知。
     
   (三)その三について
    
    (1) その1について
     本件訴訟の争点と関係がないので、認否しない。
     
    (2) その2について
     ア その(1)の事項のうち、嘉手納飛行場および普天間飛行場の周
     辺住民の生活に航空機騒音による何らかの影響があることは認め、そ
     の余は不和。
     イ その(2)の事実は、本件訴訟の争点と関係がないので、認否し
     ない。ただし、嘉手納基地騒音訴訟が提起され判決が確定したことは
     認める。
     
    (四)その四、五について
      本件訴訟の争点と関係がないので、認否はしない。
     
    (五)その六について
      本件訴訟の争点と関係がないので、認否しない。
      ただし、平成6年3月末現在、米軍基地が沖縄県内25市町村に所
     在していること、平成7年3月未現在、読谷村に嘉手納弾薬庫地区等
     5施設が所在していることは認める。
     
 三 第三章について

  1 その一について
    争う。
   
  2 その第二について
   
   (一) 本件訴訟の争点と関係がないので、事実については認否しない。
     ただし、沖縄県における米軍基地に係る問題を協議するため日米両国
    間で「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)が設置されたこと、
    平成8年4月に日米両国間で「日米安全保障共同宣言」が行われ、その中
    で「日米防衛協力のための指針」が了承されたこと、平成11年5月24日
    これらに関する法律(周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保す
    るための措置に関する法律)等)が成立したことは認める。
    
   (二)日米安保条約、日米地位協定が違憲であるとの主張は争う。
    
  3 その第三について
   本件訴訟の争点と関係がないので、事実については認否しない。
   日米安保条約が国際法に違反するとの主張は争う。
   
  4 その第四について
    本件訴訟の争点と関係がないので、事実については認否しない。
    法律上の主張は争う。
   
 四 第四章について
 駐留軍用地特措法が違憲であるとの主張は争う。

第二 取消訴訟の審理の対象と司法審査の在り方

 一 取消訴訟の訴訟物
   本件使用認定取消訴訟の訴訟物は、本件使用認定の適法性、すなわち本件
  使用認定が法の定める処分要件に適合しているか否かである。
   本件使用認定裁決取消訴訟の物は、本件使用裁決の適法性、すなわち本件
  使用裁決が法の定める処分要件に適合しているか否かである。
  
 二 取消訴訟の違法事由

  1 本件使用認定は、駐留軍用地特措法3条ないし5条の規定に基づいて被告
   内閣総理大臣がしたものである。したがって、右処分の違法事由となり得
   るのは、これらの法に定める処分要件に関するものに限られる。それ以外
   のものは違法事由とはなり得ない。
   
  2 本件使用裁決は、駐留軍用地特措法14条によって適用される土地収用法
   の規定に基づいて被告沖縄県収用委員会がしたものである。したがって、
   右処分の違法事由となり得るのは、これらの法が定める処分要件に関する
   ものに限られる。それ以外のものは違法事由とはなり得ない。
   
  3 なお、本件使用認定や本件使用裁決の法的根拠となつた駐留軍用地特措
   法自体の合憲性は、右各処分が違法か否かを判断する前提となる処分要件
   自体の問題として審理の対象となる。
   

 三 使用認定の要件

  1 駐留軍用地特措法は、駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合
   において、当該土地等を駐留軍の用に供することが適正且つ合理的である
   と認められるときは、当該土地等の使用認定をすべきものとしている。
   (5条、3条)
    同法3条にいう「適正且つ合理的」とは、対象土地等を駐留軍の用に供
   する必要性及び対象土地等を駐留軍の用に供することによる公共の利益と、
   駐留軍の用に供することによって失われる利益とを比較衡量し、前者が後
   者に優っていることを意味すると解すべきである。
   
  2 なお、本件各土地は、沖縄復帰前は米軍により使用され、沖縄復帰後は
   公用地暫定使用法及び同法の暫定使用期間を延長した位置境界明確化法附
   則6項に基づき駐留軍用地として使用されてきたものである。
    しかし、駐留軍用地特措法は、沖縄復帰前における米軍の土地使用、沖
   縄復帰後における公用地暫定使用法や位置境界明確化法に基づく駐留軍用
   地の使用を承継しようとするものではない。駐留軍用特措法及び同法が適
   用する土地収用法の各規定をみても、これらの法律は、使用認定の判断の
   対象を専ら申請に係る土地等の使用の適否に限定しており、使用前の土地
   等の使用関係の適否を判断の対象としていないことは明らかである。
   

 四 原告らの主張する違法事由のうち審理の対象外の事項

  1 原告らの次の主張は、本件使用認定の処分要件とは関係がなく、審理の
   対象外である。
   @ 沖縄復帰前における米軍用地の接収及び使用が国際法及び日本国憲法
   に違反するもであるとの主張
   A 沖縄復帰後における駐留軍用地の使用の根拠とされた公用地暫定使用
   法及び位置境界明確化法附則6項は、いずれも憲法に違反するとの主張
    すなわち、本件使用認定は駐留軍用地特措法に基づくものであり、本件
   各土地の過去の使用経緯及びその根拠法令の効力等が、本件使用認定の違
   法に影響を与える余地がないことは、前述したとおりである。したがって、
   原告らの右主張は、いづれも審理の対象外であり、主張自体失当である。
   
  2 原告らの次の主張は、本件使用裁決の処分要件とは関係がなく、審理の
   対象外である。
    平成9年法律第39号による駐留軍用地特措法の改正部分(以下「改正
   法」という。)が憲法31条、41条、95条、14条に漣違反するとの
   主張
    すなわち・本件使用裁決は、駐留軍用地特措法14条により適用される
   土地収用法の規定に基づくものであり、改正法を根拠とするものではない。
   そうすると、原告らの右主張は、本件使用裁決の根拠法規以外の条項の違
   憲をいうものであって、本件使用裁決の審理の対象外であるから、主張自
   体失当である。

 五 使用認定の取消訴訟における審理・判断の方法と主張・立証責任

  1 駐留軍用地特措法3条の使用認定に当たっては、我が国の安全と極東に
   おける国際の平和と安全の維持にかかわる国際情勢、駐留軍による当該土
   地等の必要性の有無、程度、当該土地等を駐留軍の用に供することによっ
   てその所有者や周辺地域のなどにもたらされる負担や被害の程度、代替す
   べき土地等の提供の可能性等諸般の事情を総合考慮してされるべき政治的、
   外交的判断を要するだけでなく、駐留軍基地にかかわる専門技術的な判断
   を要することも明らかである。
   
  2 以上のとおり、右要件の判断は、内閣総理大臣の政策的、専門技術的な
   裁量にゆだねられていると解されるから、内閣総理大臣のした使用認定の
   判断は、右裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した場合に限って違法
   となる(最高裁平成8年8月28日大法廷判決・民集50巻7号1952
   ページ(以下「平成8年判決」という。)参照)。
    そして、事柄の性質上、内閣総理大臣の使用認定における裁量権は極め
   て広範なものである。
   
  3 右裁量権の逸脱、濫用の事由を基礎づける具体的事実についての主張は、
   立証責任は、原告らが負う。(行政事件訴訟法30条)
   
 

第三 日米安保条約、日米地位協定の違憲・国際法違反の主張について

 一 違憲の主張について
   原告らは、日米安保条約、日米地位協定は憲法前文、9条、13条に違反
  すると主張する(訴状3ページ)。
   しかしながら、日米安保条約のような、主権国としての我が国の存立に極
  めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが違憲か否かの法的判断は、
  純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまない
  性質のものであり、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、
  裁判所の司法審査権の範囲外にある。そして、日米安保条約及び日米地位協
  定は、憲法前文、9条、13条の趣旨に反して違憲無効であることが一見極
  めて明白であるとは認められない。したがって、裁判所は、これらが合憲で
  あることを前提として駐留軍用地特措法の効力を審査すべきである。(最高
  裁昭和34年12月16日大法廷・刑集13巻13号3225ページ、最高
  裁昭和44年4月2日大法廷判決・刑集23巻5号685ページ及び平成8
  年判決参照)、原告らの前記主張は失当である。
  
 二 国際法違反の主張について
   原告らは、国際連合憲章(以下「国連憲章」という。)103条を根拠に
  同憲章が日米安保条約に優先するものであるところ、日米安保条約5条、6
  条はいずれも同憲章2条4項に違反すると主張する(原告ら準備書面120
  ページ)。
   しかし、前述したとおり、日米安保条約は主権国としての我が国の存立に
  極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するものであるから、前述の合憲
  性判断と同様に、同条約が国連憲章に違反するか否かの判断も、純司法的機
  能をその使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまない性質のもの
  である。したがって、日米安保条約が一見極めて明白に国連憲章に違反して
  無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあるとい
  うべきである。そして、日米安保条役は、一条で「締約国は、国際連合憲章
  に定めるところに従い、(中略)それぞれの国際関係において、武力による
  威嚇又は武力の行使をいかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、
  また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこと
  を約束する。」と、7条で「この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権
  利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、
  どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはなら
  ない。」とそれぞれ規定しており、同条約が国連憲章に適合することは明ら
  かである。まして、同条約が国連憲章に違反して無効であることが一見極め
  て明白であることは到底認められない。さたがって、裁判所は、日米安保条
  約が国連憲章に適合していることを前提として駐留軍用地特措法の効力を審
  査すべきである。原告らの前記主張もまた失当である。
  

第四 駐留軍用地特措法の違憲主張について
   原告らは、駐留軍用地特措法そのものが違憲であると主張する。
   しかしながら、平成8年判決がが判示するとおり、駐留軍用地特措法には
  何ら違憲の点がない。以下、詳説する。

 一 憲法前文、9条、13条、29条3項違反の主張について
   原告らは、駐留軍用地特措法が、日米安保条約及び日米地位協定に基づき、
  駐留軍の用に供するために土地等を強制的に使用し又は収用することは、憲
  法前文、9条、13条が保障する平和的生存権を侵害し、憲法29条3項に
  違反すると主張する(訴状10ページ)。
   しかし、駐留軍地特措法は憲法の右条項に違反しない。
   すなわち、日米安保条約6条、日米地位協定2条1項の定めるところによ
  れば、我が国は、日米地位協定25条に定める合同委員会を通じて締結され
  る針日米両国間の協定によって合意された施設及び区域を駐留軍の用に供す
  る条約上の義務を負うものである。我が国が、その締結した条約を誠実に遵
  守すべきことは明らかであるが(憲法98条2項)、日米安保条約に基づく
  右義務を履行するために必要な土地等をすべて所有者との合意により取得す
  ることができるとは限らない。これができない場合に、当該土地等を駐留湯
  軍の用に供することが適正かつ合理的であることを要件として(駐留軍用地
  特措法3条)、これを強制的に使用し、又は収用することは、条約上の義務
  を履行するために必要であり、かつ、その合理性も認められるのであって、
  私有財産を公共のために用いることにほかならない。
   国が条約に基づく国家としての義務を履行するために必要かつ合理的な行
  為を行うことが憲法前文、9条、13条に違反するというのであれば、それ
  は当該条約自体の違憲をいうに等しいこととなるが、日米安保条約及び日米
  地位協定が違憲無効であることが一見極めて明白ではない以上、裁判所とし
  では、これが合憲であることを前提として駐留軍用地特措法の憲法適合
  性についての審査をすべきであることは、前述のとおりである。
   したがって、駐留軍用地特措法は、憲法前文、9条,13条,29条3項に
  違反するものということはできない(平成8年判決参照)
  
 二 憲法31条違反の主張について
   原告らは、駐留軍用地特措法の使用・収用認定の手続は、土地収用法と比
  較すると、その手続を著しく簡略化しており、使用・収用される土地所有者
  等の権利保護に欠けるから、憲法31条に違反して無効であると主張する
  (訴状10ページ)。
   しかし、原告らの右主張は、以下に述べるとおり失当である。
  
  1 憲法31条の定める法定手続の保障が、行政手続について、それが刑事
   手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外
   にあるとすることは相当ではないとしても、行政手続は刑事手続とはその
   性質においておのずから差異がある上、行政目的に応じて多種多様である。
   したがつて、憲法31条による保障が行政手続に及ぶと解すべき場合であ
   っても、保障されるべき手続の内容は、行政処分により制限を受ける権利
   利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公共の
   内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものである(最高裁
   平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437ページ参照)。
   
  2 そこで、これを駐留軍用地特措法の定める土地等の使用・収用の手続に
   ついてみる。
   
  (一) 原告らは、使用・収用の認定の申請には、土地収用法18条に定め
    る「事業計画書」若しくはそれに相当する使用・収用の内容を具体的に
    説明した書類の添附が要求されていないと主張する(訴状11ページ)。
     しかし、駐留軍用地特措法における使用・収用は、様々な企業者の多
    岐にわたる事業を対象とする土地収用法とは異なり、使用・収用者は国
    のみであり、また、使用・収用の目的も駐留軍の用に供するという条約
    上の義務履行にある。このように、駐留軍用地特措法の下での使用・収
    用の認定においては、土地収用法における事業認定の要件のうち公共の
    利益性、起業者の適格性は当然の前提となつているから、駐留軍用地特
    措法は3条に掲げるもののみを要件として規定しているのである。
     そして、同法4条1項は、使用・収用認定の申請をしようとするとき
    は、「その他政令で定める書類」を添附することと規定し、同項の規定
    に基づく駐留軍用地特措法施行令1条により、使用・収用しようとする
    土地等の調書及び図面等を作成し添附することとされている。このよう
    に、駐留軍用地特措法の下では、その目的に応じて必要な書類等の添附
    が必要とされているのである。
     したがって、原告らの右主張は失当である。
    
  (二) 原告らは、駐留軍用地特措法には、土地収用法24条の関係書類の
    送付と縦覧、同法25条の利害関係人の意見の聴取の各規定に相当する
    手続の定めがないと主張する(訴状12ページ)。
     しかし、駐留軍用地特措法は、その4条1項において、土地収用法2
    4条及び25条の手続に相当するものとして、防衛施設局長があらかじ
    め土地等の所有者又は関係人の意見書を受け取ることとしている。そう
    すると、土地等の所有者等の権利保護の観点からは、駐留軍用地特措法
    の右手続は土地収用法のそれに比して優るとも劣らないものである。し
    たがって、原告らの右主張もまた、失当である。
    
  (三) 原告らは、駐留軍用地特措法では土地収用法23条に定める公聴会
    の制度を廃止していると主張する(訴状12ページ)。
     しかし、土地収用法自体、公聴会の開催については、「建設大臣又は
    都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行おうとする場合において
    必要があると認めるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めなければ
    ならない。」(23条)と規定するのみで、公聴会の開催を常に義務づ
    けているものではない。そうすると、公聴会制度の規定を欠くことをも
    つて駐留軍用地特措法の手続が土地収用法に比較して土地等の所有者等
    の権利保護に欠けるということはできない。原告らの右主張は理由がな
    い。以上のとおりであって、駐留軍用地特措法の定める手続の下に土地
    等の使用又は収用を行うことが、土地等の所有者等の権利保護に欠ける
    と解することはできない。したがって、駐留軍用地特措法は、憲法31
    条に違反するものではない(平成8年判決参照)
 

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仲田博康
nakada_h@jca.apc.org



 
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