在日米国大使館は二日、東京都内の同大使館と札幌、大阪、那覇の三総領事館
を結んで「北東アジアの安全保障に関するテレビ会議」を開き、米軍事専門家の
ウイリアム・オドム氏(元米国国家安全保障庁長官、元米陸軍中将)を中心に、
学者やマスコミ関係者が意見交換。
普天間飛行場の移設問題
沖縄の大学教授「移転先とされた名護市で、今後予想される市長選に反対派が
勝てば基地問題は動かずそれを踏まえたシナリオも必要」
オドム氏は「北東アジアの米国の軍事力の水準は、危険なほど下がっており、
日本に米軍を駐留させ続けることがカギになる」としたうえで、「海兵隊が撤退
する場合は、政治的には困難だが、陸軍部隊を北海道に駐留させることも考えら
れる」
東海大の小林公司教授「日米安保がアジアに拡大する一方、多国間安全保障に
向けた米政府の姿や戦略は見えない」
【北海道新聞12月4日】
岡本行夫さん(元沖縄担当首相補佐官)
普天間移設はそもそも沖縄県民のために考えられたもの。しかし、沖縄県民が総
意として移設に反対なのであれば、政府は無理をすべきではない。決定は、沖縄
自身のみがなし得る。
(普天間移設は)普天間基地を五分の一の面積に縮小して、万一事故が起こって
もその影響が住民に及ばない海の上に出してしまうという沖縄基地の「段階的縮
小策」であって、新たな代替ヘリポートの建設はその付随的結果。
沖縄には在日米軍基地が面積比で七五%集中する。沖縄のためには代替ヘリ
ポートを県外に造ることが最も望ましい。しかし普天間のヘリコプター部隊は、
沖縄に駐留する第三海兵師団のいわば手足として本隊と共にいなければならない
という、沖縄にとってはまことに気の毒な現実がある。
県外者は沖縄と名護市に容喙すべきではない。部外者である限りは、名護市に
入って市民の苦悩を増幅することを今回は控えるべき。静かに、市内の住民の判
断を待つべき。
沖縄や名護市が抱える問題は、部外者が一刀両断に善悪を決めつけられるほど
単純な問題ではない。せめて県外者にできることは、沖縄の米軍基地の本土への
移設を、たとえ一部であろうとも時間がかかろうとも引き受けてやることであろ
う。
【読売11月30日】
この程度のレトリックにおためいていては、「戦争のできる国」で、日本人な
んかやってられませんですが、なかなか大変なものがあります。
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橋本 龍太郎様
12月1日付「読売」に寄稿された、橋本竜太郎さんの「沖縄を思う−「基
地」解決信頼第一に」を拝読しました。
私は橋本さんの文を、武器を持つ側の武器を持たない側に対する「脅迫」文と
受け取りました。
橋本さんは沖縄県民を「少女暴行事件から」「ささくれ立った気持ち、怒りと
悲しみ、悔しさと、一部本土への不信感がない交ぜになった状況」にあったとし
ています。
「ささくれだつ」というのは「気持ちが荒れてすさんでいる状態」をあらわし
ます。私も「少女暴行事件」に心が痛んだひとりですが、県民の怒りと悲しみの
深さはひしひしと伝わってきましたが、すさんでいるとは感じませんでした。し
かし、軍隊の暴力を日常的に見せつけられると人間の心はささくれ立つかも知れ
ません。
橋本さんが直接県民から「ささくれ立った気持ち」を感じ取られたとしたら、
もちろそのような状況に追い込んだ原因も理解されていることと思います。そし
て「信頼関係を作り出すことから始めなければ」という思いはどのように具体的
に実行されたのでしょう。「少女暴行事件」は解決されたでしょうか。政府は県
民の怒りや悲しみにこたえ、県民の心を癒し信頼を回復したでしょうか。
橋本さんは、その後沖縄県民の普天間基地返還を求める声を押さえ込みあるいは
利用し、クリントン大統領、当時のペリ−国防長官、モンデ−ル駐日大使らとの
外交交渉に尽力され、米軍との「信頼関係」を強めたことを自慢していらっしゃ
います。そして、「米軍の兵力量は、世界的体系のなかで様々なケ−スを想定し
た上で、その所要量が決められているはず」だとして、日本に送り込まれている
約4万7千人の米兵の削減にも否定的なようです。また「沖縄県に米軍の基地を
確保していることに対する各国首脳の評価は、東南アジア諸国連合(ASEA
N)も含めて高い」と日本の米軍基地を必要不可欠な存在とされています。ここ
からどのような基地の整理縮小が可能でしょうか。
1999年度の防衛白書のCD−ROM版は大変重宝していますが、手のひらに
乗る小さな円盤に膨大な情報が収められるようになったように、軍隊もとみにそ
の質が「豊かに」なっています。移転先の軍事的能力はわたしたちの想像をこえ
る機能強化につながるであろうことが懸念されます。それは米海兵隊の実弾射撃
訓練場が5か所に増設され、「沖縄と同質同量」の約束があっさり反古にされた
ことからもわかります。今回の「移設」の選択は軍隊を「整理」し「拡張」する
ものであることは明らかです。それとともに基地被害も増すことになります。
私が橋本さんにもっとも憤りを感じたのは、基地移転と振興策について「沖縄
県内の地場資本だけで跡地利用ができるでしょうか?基地収入で生活を維持して
おられる方、地代で暮らしておられる方が安心して暮らせる振興策を策定する責
任が、政府にはあると私は思います」としたことです。
ブルド−ザ−と暴力で土地を奪い、米軍に提供し、地場産業を退廃させた上、
軍隊に県民の労働力までもつぎ込ませておきながら、なにをかいわんやです。政
府が責任を持つとするならば、全国で約1千万坪を占領する米軍基地の土地を住
民に返し、今までの略奪の代価を払い補償することでしかありません。橋本さは
このたとえがお嫌いなようですが、よく「飴と鞭」といわれます。しかしその
「飴」はだれにしゃぶらせるのですか。いまだかつて「飴」なるもので住民の生
活が豊かになった「基地のある町」をわたしは知りません。
政府は今、「移設」しようとしている基地がどのようなものかさえ「今後検討
する」と県民に政府へ「白紙委任」させようとしています。橋本さん自らもたた
えていらっしゃる沖縄の「豊かな自然」が破壊されないという保証がなくなった
ら「移設」をやめますか。沖縄からの「15年」限定の要望を米国に伝えること
さえできない政府がそんなことをするはずがありません。環境保全に関しても何
ら裏付けも示さず「ここからの手順はひとつずつ、瑕疵のないような着実な進め
方をして行かなければなりません」とするのは、あまりに無責任です。
国外を含めて各地で平和運動に取り組んでいる市民の目が、アジア太平洋へさ
らなる銃を向けようとしている沖縄基地に注がれています。そして各地から軍事
拠点の撤去を求める声があがっています。その声は、ほとんどマスコミに取り上
げられることはありません。それらの声がこれ以上広がることを政府がいかに恐
れているかがうかがえます。
そのなかで先日も東京で1000人もの市民が沖縄米軍基地の県内移設に反対
し、日米軍事同盟の解体とすべての軍事基地の撤去を日本政府に求め、アジア太
平洋の平和をつくりだそうと全国によびかけたことを知りました。
非暴力を旨とし、すべての戦争とその準備への協力を拒否する多く市民が、こ
のメッセ−ジを熱い思いで受け取ったことでしょう。
選挙制度の仕組みをうまく利用して「多数与党」をつくり、投票率の低迷の中
で選ばれた国会議員の一票の重みがいかほどのものか疑われる昨今ですが、沖縄
で基地の移設に反対している市民や、沖縄県外で立ち上がった市民一人一人に寄
せる、武器を持たない市民の思いは国会議員のそれとは比較にならないほど深
く、強いものであることを確信しています。
今回の橋本さんの「脅迫」文に抗議します。そしてこれはこの国の政府の意思
でもあるとしかと受けとめ、わたしも今沖縄で起きている政府の暴力をひとつの
ステップとして、日米安保条約の破棄とすべての国からの軍隊と武器の廃棄を求
めて不戦平和の道を共に歩いていきます。
1999年12月4日
秋田県男鹿
加賀谷 いそみ