秋田県山本郡山本町(人口1万人弱)と南秋田郡五城目町は琴丘町を挟んでいます
が、地理的にも近く、どちらもかつては農林産業が盛んな地域でした。その衰退で山
本町は今、リゾ−トの町としての振興に熱心で、キャッチフレ−スは「じゅんさいの
町・いでゆの里」。既にゴルフ場を2つもつくり、温泉とセットで売り出していま
す。また、最近全国的にお荷物になりつつある場外馬券売り場で「人口流入」を図り
ました。
それでもというか、当然のことながらというか、財政はますます厳しく、高齢化は
進むばかり。生産性のない山林の切り売りで資源の減少と環境悪化を招いているので
すが、今度は、自衛隊射撃場をとのりだしました。射撃訓練を観光の目玉にでもする
つもりでしょうか。軍隊が移転する場合はえてして規模が拡張されますので派手に撃
ち合うことになるでしょう。
五城目町の轍を踏まぬようにとけん制したか、野呂田芳成・村岡兼造両国会議員が
健在な内にという焦りからか、町の意思決定作業の早いこと。その手回しの良さは国
会の破防法(オウム法案)決議に勝るとも劣らず。地元住民への説明があらばこそ。
町内では有機農法を取り入れるなど農業も盛んですが、彼女・彼らが農作業の手を休
めて顔をあげたら、目の前が「射撃場用地」になっていたというあんばいです。
秋田でも「幹部候補生」を多く出したいようなことをいっているので、なにかいい
ことがあるのかなあと思っていたら、全国に自衛隊員・元自衛隊員をばらまいておく
と「環境整備」がしやすいというメリットがあるんですね。
陸上自衛隊秋田駐屯地の飯島射撃場(秋田市飯島堀川・6.8ヘクタ−ル)の移転
先として、山本町下岩川地区選出の町議会議員、農業委員らと地区の十一集落代表ら
でつくる下岩川地区振興会(平沢金弘会長)は十六日、下岩川財産区有地に誘致を図
る方針を決めた。
下岩川地区振興会の会合は十六日夜、同地区の集会施設で、非公開で行われた。会
合後、平沢・下岩川地区振興会会長(財産区議会議長兼任)は約40人全員の同意で
誘致活動推進の方針が固まったとした。
「地域の過疎化に歯止めをかけ、活性化を図る選択肢の一つとして提案された。反
対意見は全くなかった」「
同町では、今年八月ごろから候補地として、2か所の財産地区が浮上したが、下岩
川財産地区は、造林杉が多く、赤字運営。造林スギなど木材価格の落ち込みで財産区
の将来が懸念される一方、五城目町の誘致運動が失速しつつある状況から、財産区の
活用法の一つとして、町内の自衛隊OBや自衛隊父兄会から持ち上がっていた。
下岩川財産区は同町東部にあり、昭和三十年、木材供給を目的に設置。総面積は原
野、山林合わせて九〇二・四ヘクタール。地元はこの一部を射撃場用地として誘致要
請するよう、町と町議会に陳情する考え。
飯島射撃場の移転に関しては、五城目町が昨年五月に地元住民の要請で名乗りを挙
げたが、他地区町民や議会が反対し、今年八月には当時防衛庁長官の野呂田芳成衆議
院議員(秋田二区)が「(町当局と町議会が)対立している中での移転はあり得な
い」と、同町への移転は困難との見方を示していた。
現訓練場では年に90日ほど小銃の射撃訓練が行われてきたが、近くに病院施設が
あり、また県立大学も開学し、来年2月か3月で訓練が困難になるとされている。
石井洋佑町長「五城目町が誘致に積極的になっているので、山本町が誘致を働きか
けることはしていない。ただ、町民から陳情があれば検討せざるを得ない」「地元住
民の意向がすべて。ただ射撃場移転は急を要すると聞いているので、もし陳情があれ
ば、速やかに議会と協議する必要があるだろう」と臨時町議会の招集、十二月定例町
議会の前倒し開会などで迅速に是非を問う意思を示した。
一町議「下岩川地区には、別れの一本杉がある。戦時中、出征兵士を見送ったとこ
ろだ。自分の父親を戦争で亡くしている」「町の活性化とか地域振興策として射撃場
を誘致するのを、たった一度の協議できめるのも短絡的すぎる。平和な町に射撃場は
いらない。反対運動を起こす」
陸上自衛隊秋田駐屯地「山本町で動きがあるのは知っていた。しかし具体的な話は
なく、土地があれば移転できるというものではないので、現時点では何とも言えな
い」
山本町は、自衛隊入隊者が多く、9月初めには海上自衛隊舞鶴音楽隊の演奏会を開
催。10月には、自衛隊への理解・協力があるとされて、東北総監部から町に感謝状
と盾が送られている。
(秋田魁11月17日、朝日18日)
東京・武道館で開かれた自衛隊音楽祭りには、総理としてはじめて小渕さんも、民主
党の鳩山由紀夫代表や瓦防衛庁長官、歴代長官らと一緒に出席したとのこと。人気タ
レントなどは招かず、大型スクリーンで、随時陸海空自の活動の模様を紹介したのが
今年の特徴。今年のテーマは「躍動する自衛隊」。計6回の公演に観客動員延べ約4
1000人。(朝雲11月11日)
19日の下岩川財産地区臨時議会(管理者・石井洋佑町長、議長・平沢振興会長、
議員6名)で誘致を求める決議。「財産区有林の効率的運用、付加価値の高い在り方
を模索して地域振興を図るべき」「射撃場施設の設置は、地域に多大な波及効果が期
待でき、財源に乏しい財産区にとっても経済的に得る効果は大きい」」として、16
日の会合に出席した36名の署名を添え、同日、町と町議会に陳情書を提出。
誘致に反対する共産・社民各党は町に拙速な協議を避けるよう口頭で申し入れ。
▽山本町は非核平和自治体宣言をしており、射撃場誘致はこの精神に反する。▽取り
付け道路の建設などで町財政への負担が心配される−共産
「重大な事を一地域の提案で決めることがあってはならない。唐突に射撃場誘致の話
が出てきた。あたかもレ−ルが敷かれているような気がする」「(推進派は)活性化
を目指すというが、温泉やゴルフ場があるわが町にとって(射撃場設置で)流入人口
が減るというデメリットのほうが大きいのではないか。結論を急がず、さまざまな声
を聞いてほしい」−社民
小山内茂夫助役「誘致によるデメリットはないと考える」「地区住民ふるってお願い
されていること。町としては、議会の対応を聞いてからでなければ何とも言えない
が、議会が賛同すれば、町を挙げて進めていくことにもなるだろう」(町長は東京へ
出張中)
(魁、朝日、産経、読売 20日)
社民党県連は20日の常任幹事会で、山本町への射撃場誘致に抗議する決議案を、
28日の全県代表者会議に諮ることを決定。
畠山健治郎代表(衆院議員)「県と県内全市町村が非核平和都市宣言をしている
が、これは武器、弾薬、軍事施設を持たない『丸腰』の宣言。誘致の動きは宣言に反
している」 抗議は知事に対しても行い、誘致への「歯止め」の意味で、今後、全市
町村への申し入れも検討。
(魁、朝日11月21日)
最近、自衛隊では全国的に、臆面もなく募集の「お願い」に校長室を訪ね、教師を
集めて説明会を行うようになりました。その説明はかつての「原発安全神話」よろし
く、特別公務員という安定した身分保証や資格取得をエサに、幹部候補生へのエリ−
トコ−スがだれにでも開かれているなどと自尊心をくすぐりながら、りゅうと制服を
身にまとって説いて回っているようです。
愛媛県松山市の一部の市立中学校のホ−ムル−ムで今月上旬、担任教師が「第46
期自衛隊生徒募集要項」を3年生全員に配布。
共産市議団が、自衛隊については「戦争放棄を定めた憲法に違反する、違反しな
い」と世論でも大きく分かれている、「さまざまな企業が募集している時期に、自衛
隊だけ特権的に募集要項を生徒に渡すことができるというのは問題だし、学校が募集
したと思われても仕方がない。あまりにも軽率」として、@どの中学校でどのように
配布されたか事実関係をはっきりさせるA自衛隊の募集を事実上、教育委員会や中学
校が手伝うようなことは今後一切やめる−よう申し入れ。
市教委「配布は指示していない。校長の判断で配布したと思う。3年生全員に配る
ようなことは好ましいことではない。来年度からは、全生徒にいっせいに配布するよ
うなやり方はやめる」(赤旗11月21日)
秋田県では、県のHPに自衛隊員募集の広告を出したほか、街の通りの電工掲示板
に募集のテロップを流している地域もあります。
熊本地連もHPで即応予備自衛官募集に精を出しています。
OBも一所懸命です。その内アドバル−ンや飛行船が空に浮かぶかも。
奈良県防衛協力会では、募集の懸垂幕四本(長さ11M、幅90センチ「陸海空自
衛官受験案内実施中」「幹部候補生案内実施中」「防大・看護学生説明会実施中」
「自衛隊生生徒受験案内実施中」)を奈良地連に寄贈。
広島県北部地域を担当する三次募集事務所では募集公報施策の一貫として庄原市役
所に懸垂幕(長さ7M、幅0.9M「燃えろ若人・はばたけ青春」「自衛官募集」)
7月26日〜10月13日の約3ヵ月間。
(朝雲11月4日)
「豊かな社会でわがままいっぱいに育った現代っ子に防衛の重要さを説くほど難し
い仕事はない−空自築城基地」とぼやきながらも、青少年防衛講座や、部隊研修、職
場体験など呼び込みも盛ん。
鹿児島県大島郡天城町の徳之島商工高校(高野郁朗校長、425人)の生徒16人
が、16日から19日まで、国分市の陸上自衛隊国分駐屯地に体験入隊。
県内で高校生が自衛隊に体験入隊するのは初めて(自衛隊鹿児島地方連絡部)
体験入隊するのは1年生2人、2年生14人。
田中福徳教頭「生徒の指導は自主性を尊重しながら、規律やしつけにも力を入れてお
り、自衛隊での研修成果には期待している。自衛隊に限らず、さまざまな社会を体験
することは、子どもたちにとっても自分の将来を考える上で、意義がある」
鹿児島地方連絡部「学校側の要望にこたえるとともに、自衛隊の活動を知ってもら
う機会にしたい。生徒は外来宿舎で寝泊まりし、ベッドメーキングや人工呼吸、行
進、飯ごう炊飯などを体験する」(銃を扱ったり、迷彩服を着るなど軍事的なものは
ない)
鹿児島大学教育学部の梅野正信助教授(社会認識教育学)「子どもたちに基本的生
活習慣や規律を教えることは、学校の役割であり、教育基本法や学校指導要領とは無
関係な機関に任せるのはどうか。職業選択のための体験入隊なら理解もできるが、企
業の一般的な自衛隊研修と、学校研修を同様に考えるべきではない」
(南日本新聞11/3)
山本町には高校がありません。県内は学区が県南・中央・県北と三学区に分かれて
いて、山本町は県北区に入りますが、地理的に中央区に近いことから、県北区の能代
市内などの高校や、中央区の五城目町や秋田市に通学する生徒など多様です。県南・
県北は入試倍率が一倍程度で、競争率が低いため、かえって偏差値などで自動的に高
校を割り振りされ、全員現役合格が普通で、自己主張や自己決定の意思表示のチャン
スが奪われている面があります。地場産業も少なく、職種を選ぶにも情報が間接的な
ので、まわりに勧められるままに進路を選んでしまう生徒も少なくないかも知れませ
ん。
今は「高卒」が正規社員の採用条件という差別が当たり前になっていて、中学校の
進路指導イコ−ル進学指導になっていますが、高校ばかりではなく、小中学校での平
和教育いかんでもこの国の「防衛」の在り方を左右するでしょう。もちろんそのウエ
イトを占める割合は家庭や地域の平和度が大きいのですが。
全国の市民平和団体の代表者らでつくる「自衛官への意見広告をすすめる会」(呼
び掛け人十二人)は、海上自衛隊の基地がある 呉、神奈川県横須賀、京都府舞鶴の
三市のそれぞれの地方紙に、自 衛官向けに周辺事態法の危険性と憲法九条の重要性
を訴える意見広 告を掲載。
呉市では十四日付の中国新聞呉圏版の下五段に掲載。見出しは 「憲法九条が自衛
官のいのちを守っていると考えたことがありますか」
続いて、周辺事態法の成立で自衛官に多くの危険な任務が追加されたとし、自衛官こ
そが憲法九条 の空洞化を食い止めることができると訴えている。
すすめる会は九月初めに発足、賛同費一口千円。
「自衛官の中にも周辺事態法などに不安や不満を持っている人たちがいる」と、自衛
官に向けた意 見広告の掲載を企画。
湯浅一郎さん(呼び掛け人の一人・「ピースリンク広島・呉・岩国」代表世話人)
「組織としての自衛隊は縮小してほしいが、自衛官一 人ひとりは同じ市民。周辺事
態法を発動させないように協力を求めたい」
(中国新聞11/12)
また、人事院が昨年11月にセクハラ防止規定を制定したことや、女性の自衛官も
増えてきていることからか、
陸上自衛隊では独自にセクシャル・ハラスメント防止の啓発ビデオ(約20分)を
製作して、「積極果敢」にセクハラ対策。「セクハラは容認できない行為であること
を隊員すべてが自覚し、女性の働きやすい職場の実現を願って製作」。23件の実例
の中には未公表の過激な例もあるが、関係者の評判は上々。「場合によっては懲戒免
職もあり得る」と忠告。
防衛庁報道室によると、ビデオの製作費は数百万円で800本を複製。俳優が陸自
の制服姿で演じ、エキストラで隊員も出演。ビデオは防衛庁全機関の各部局や隊員に
配布。任命を受けたセクハラ相談員らが所有し、啓発活動に使用。
(河北11月2日)
下々の民は下々の話からはじめるのが常でして、自衛隊の海外派兵が話題になった
ころ、自衛官はコンド−ムを持って行くの行かないのの話になりました。ちょうどH
IVの誤認情報が流れていた時期だったこともあって「これからは自衛隊員に嫁にや
るときは外国に行ったのかどうか確かめてからにしないと、何の病気をうつされるか
わからないねえ」と「大和撫子」がどっこい生きていると、はからずも知らされまし
たが、自衛隊のセクハラ対策も、西村真悟さんの言うところの「我々の愛すべき大和
撫子が他国の男に強かんされることを防ぐ」防衛論からきたものでしょうか。
河北では「セクハラ疑惑でじり貧の横山ノック大阪府知事も、このビデオを見て勉
強すべきだった」としていましたが。
米原子力潜水艦もやってくるのですが、
自民党の亀井静香政調会長は19日、自衛官の部隊配置について「今の師団の配置
でいいのか。北陸の原発銀座のようなところが大型テロに襲われた場合、警察の装備
ではどうにもならない」と今年3月に朝鮮民主主義人民共和国も工作船が能登半島沖
の日本海にあらわれたことを年頭において提起。
防衛庁首脳「北陸は海岸線が長く、海上保安庁も含めて手薄だ。海保や自衛隊がい
てくれれば安心できるので賛成だ」
(毎日11月20日)
自民・自由を中心とする参院議員が防衛庁の「防衛省」昇格を目指す超党派議員連
盟を今月中にも発足させる予定。自民・村上正邦、自由・扇千景両党参院議員会長ら
を中心に発足を準備。2001年の中央省庁再編と同時の格上げに向けて、次期国会
に「国防省設置法案」(仮称)を参院から議員提案、成立を目指す。民主党の一部議
員も参加の意向を表明、公明にもよびかけ。
防衛庁が「国家防衛の中心を担う重要官庁」(参院自民幹部)でありながら「省よ
り下の庁のままでは自衛隊員らの士気にもかかわる」(参院自由幹部)
西村真悟前防衛政務次官の「辞任騒動」が一段落したのを機に、一気に動き出し
た。
(産経11月21日)