天皇陛下御即位十年奉祝委員会(稲葉興作会長:日本商工会議所会頭)・天皇陛
下御即位十年奉祝国会議員連盟(森喜朗会長)が主催、(財)国民精神研修財団が
共催、総理府・文部省・外務省・自治省・大蔵省・郵政省・環境庁・東京都等の後
援による12日の「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」は、人気歌手らを活用
して若者を含めた顧客3万人弱を動員し、八千余の署名を集め、その「包容力」の
深さを誇示し、イベントとしてはおおむね成功したようですが、盛り上がりは皇居
界隈にとどまり、政府が協力依頼を求めた「日の丸」の掲揚も四囲にまでは届かな
かったようです。
儀式の一部をラジオで聞きましたが、どうも「君が代」は「厳か」で辛気臭い雰
囲気をかもすようです。その中で光ったのが小渕さんの万歳三唱の音頭。その気に
なれば小渕さんもハリハリした声を出せるではないですか。国会答弁もあの調子で
お願いしたいもの。
記念硬貨は近くの銀行でも売れ残ったようです。菱形切手の売れ行きはよかった
とのことですが、天皇系の切手は逆さまに貼って使うというしゃれた方もいらっ
しゃるとのこと。
天皇は11日の記者会見で「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であ
るという憲法の規定に心して」務めを果たしてきたとおっしゃたとか。
対外的には元首として外国訪問を精力的に行い、この国の最高法規に反する「御
名 御璽」の法令、政令を乱発し、あちこちのイベントにでしゃばっている所業が
はたして日本国憲法に即した振る舞いなのか、公式の場で首相自らが「天皇陛下万
歳」を表明したからには、「論議」してほしいところ。
また、「障害者、高齢者、災害被災者」に「心を寄せる」ことも大切な務めと
おっしゃるたびにハンセン病者への「ご慈悲」の件についてはどうなったんだろう
と思うのです。
これからこういう発言も、公安庁職員のリストラ対策として、第二破防法と盗聴
法とをあわせ使ってリストアップされるかも知れません。ま、右であろうと左であ
ろうと、国のすることに口をはさむ者は、公私を問わず、国家にとって邪魔なのに
は変わりありませんから、もの言う人間大方が対象になるのですが。
マスコミは記事広告で、地方紙は政府広告でと「持ち分」に応じた、天皇教の布
教に努めていましたが、市民の関心は、介護保険と、来春の就職未内定者十四万人
という記事に釘づけ。
国会ではみなさん調子のいいことを言っていますが、医療保険の危機はさておい
ての、自称「中流」以上を視野に入れただけの保険論議であり、もともと地方分権
一括法で、国は福祉から手を引いていますので、保険制度で自治体の負担軽減とい
う皮算用(ちなみに秋田県男鹿市では約1億1千900万円と試算)でつっておい
て、最終的には負担を自治体と個人に押しつけるもの。
高校の進路担当者は胃検診に引っ掛かり、車屋は卒業予定者からの新車の注文が
さっぱりこないと嘆き、「うちの工場にも今年大卒者が面接にきたぞ」とその就職
難に驚く労働者の間では、天皇教祭典が行われた日を知っていることが非常識な世
間知らずのようで恥ずかしく、話題にするのに気が引けました。
「町中に旗見かけた?」「何の?」「日の丸の」「なんで?」「天皇在位10年
で」「いつ?」「きのう」「しらねえ、それがどうした?」「どうもしないのだ
が、ゴニョゴニョ・・・」
しかし政府は今後さらなる愛国心の「徹底」を自治体に、教育界にと気合いを入
れることでしょう。文部省も「棒倒し」ゲームが好きなようですし。
「日の丸・君が代」掲揚率と就職率を比較するのもおもしろいかも知れません。
国は閣議決定として、9月下旬自治大臣名で県へ文書で「各公署、学校、会社そ
の他一般においても国旗を掲揚するよう努力を要請する」。これを受けた県は、総
務部長名で各市町村あてに10月6日付けで同じ内容の文書を送付。
また、各市町村が運営する施設の無料開放について、国は10月1日付けで文部
事務次官名で県教育委員会あてに「国は博物館や美術館を無料公開するが、県内の
担当施設でも可能なかぎり趣旨に賛同してほしい」と文書を送付。これをうけて県
は、県立近代美術館、県博物館など5施設を、秋田市では千秋美術館、赤レンガ郷
土館、佐竹史料館、本荘市では郷土資料館などを入場無料にする。
(朝日11月10日)
熊本県では、県教育委員会が11月8日付けで協力をよびかける通知文を、高校
や養護学校など76の県立学校へ送付。市町村立小中学校には、各教育事務所を通
じて通知。
国旗国歌法成立後、県教委が各学校に公式に掲揚を要請するのは初めて。自治省
からの文書に「通知がありましたのでお知らせします」という教育長名の文書を添
えて郵送。
県教委総務福利課・政策調整審議員「国からの要請のお知らせであって、指導や強
制ではない。掲揚するかどうかは各学校長の判断に任せ、実施したかどうか調べる
考えはない」
県教組・副執行委員長「常時掲揚する学校もあるなど既に定着している現状があ
り、特別な反対行動は考えていない。ただ、生徒を集めて集会をしたり、学級で在
位十年について話すよう担任に指導するなどの過剰反応が起きた場合は、問題にし
ていきたい」
(熊日11月11日)
と、全国的に膨大な量の紙クズが飛び交ったようです。
天皇即位から10年を記念して、秋田県本荘市と建設省秋田工事事務所が計画し
たサクラの記念植樹(16日、ソメイヨシノ5本を子吉川湖畔に植える予定)に、
市側が市立舞鶴小学校4年生30人に授業を休ませ、植樹への参加を要請。
県教組(秋教組)が12日、児童たちが通常授業の代わりに植樹に参加させられ
ることには問題があるなどとして申し入れ、市側は急遽、参加要請を撤回。
主催者側は、市長、同工事事務所長、市議長ら約30人と一緒に天皇在位と同じ
10歳の4年生児童に参加を計画。
秋教組は「子どもの思いに関係なく引っ張り込んでまで(在位10年)を広める
必要があるのか」と秋教組由利支部を通じて市教委に申し入れ。
市は同日緊急会議を開き「(慶祝の)強制ととられることが懸念される。5本な
ら子どもなしでも植えられる」と要請撤回。
秋教組書記長「在位10年への過剰反応だ。植樹はしたい人がすればいい」
本荘市企画調整課長「(子どもへの参加要請は)いろいろ問題がありそうだ。」
「これまで小学生も参加して市が進めてきた、植樹運動の一環として要請した。し
かし今回は日程の都合で平日となるんど、配慮が足りなかった面もあり撤回を決め
た」
(読売11月13日・河北11月14日)
秋田県能代市議会が「『日の丸』『君が代』の取り扱いに関する意見書」を採択
12月定例会で、教育委員会に質疑を予定
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「日の丸」「君が代」の取り扱いに関する意見書
第145通常国会で「日の丸」「君が代」の法制化がなされたところである
が、政府は、この施行に当たって、憲法第19条の「思想及び良心の自由」及び第
20条の「信教の自由」に基づいて、教育現場だけでなく、国民のあらゆる生活現
場においても強制を行わないよう強く要望する。
右、地方自治方第99条第2項の規定により意見書を提出する。
平成11年9月24日
能代市議会議長
内閣総理大臣
文部大臣
自治大臣
総務庁長官 宛
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このような動きは各地に広まっています。
【参照】子どもと教科書全国ネット21 HPより
http://www.ne.jp/asahi/kyokasho/net21/
■ 「日の丸・君が代」強制に反対する「不服従」の動き ■
大阪府吹田市議会、「日の丸・君が代」強制に反対する意見書を採択(8・11)
音楽家153氏、「日の丸・君が代」は国旗・国歌にふさわしくない、「一切の強制
に反対する」と声明(9・3)
広島県橘高府中市長、市議会で「君が代には歌詞に問題があると私も認識してい
る」発言(9・6)
歴史教育者協議会、「国旗・国歌法の成立に抗議し、日の丸・君が代の強制許さな
いため、議論と運動をさらにひろげよう」と声明(9・17)
東京都多摩市議会、「日の丸・君が代」強制に反対する意見書を採択(9・)
北海道釧路市議会、「日の丸・君が代」強制に反対する意見書を採択(9・27)
岩手県水沢市議会、「日の丸・君が代」強制に反対する意見書を採択(9・27)
東京都小金井市議会、「日の丸・君が代」強制に反対する意見書を採択(9・28)
高知県高知市議会、「日の丸・君が代」強制に反対する意見書を採択(9・30)
北海道根室市議会、「日の丸・君が代」強制に反対する意見書を採択(9・30)
都の功労者表彰式で、君が代斉唱に反対して参列者1人が退席(10・1)
東京都練馬区、来年1月の新年賀詞交換会での「君が代」斉唱を区民の要求で中止
決定(10・8)
※以上の状況は事務局で集約した分だけです。ぜひ、各地の情報を送ってくださ
い。
(文責:子どもと教科書全国ネット21事務局長・俵 義文)
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天皇イベントと国旗国歌法とは、親密な関係があるわけですが、無理な法制化
で、「日の丸・君が代」がただの侵略の道具でしかなくなり、市民の手元から離れ
つつあるのかも。