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X-Sender: kaymaru@mail.jca.apc.org
Date: Fri, 5 Nov 1999 06:36:22 +0900
To: aml@jca.apc.org
From: "MARUYAMA K." <kaymaru@jca.apc.org>
Subject: [keystone 2045] 「県外移設」(沖縄便り 浦島悦子)
Cc: keystone@jca.apc.org
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Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

 以下は、「心に届け女たちの声ネットワーク」の浦島悦子さんが『インパクション
 116』(10月28日配本)にお書きになった文章です。浦島さんおよびインパ
クション編集部の許可をいただきましたので転載します。

 (『インパクション 116』の目次は [aml 14598]に)
 

 本土に住む私たちは、この沖縄の声にどう答えるか??

==================================================================

 なお、沖縄米軍基地の県内移設に反対する集会が、次のように予定されています。
 詳細は、集会案内をご覧ください。
http://www.jca.apc.org/~kaymaru/Meetings/Meetings.html
 


 沖縄県内での基地のたらい回し、新たな基地建設を許さない!
   米軍普天間基地の県内移設反対! 11・16集会
  19:00〜 中野商工会館 大会議室
  主催:沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
 

■ 
 沖縄米軍基地の県内移設反対!
   11・30 戦争協力を許さないつどい
  18:30〜  日比谷野外音楽堂
  連絡先:沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロックなど
    
======================= 転載ここから ==================================

  沖縄便り 20  浦島悦子

      「県外移設」
         ――あなたへのラブコール
 

 まず、次の文章を読んでみてほしい
 

 普天間基地の「県外移設」を訴えます!

 九五年秋のあの事件から四年が経ちました。基地あるがゆえの被害を受けた少女の
勇気ある告発に促されるように、私たちは自らを縛っていた鎖を振りほどき、全県民
が心をひとつにして「もうこれ以上我慢できない」と立ち上がりました。基地の整理
・縮小・撤去を求めて八万五千人(全県では一○万人以上)が結集した県民大会は県
民投票へと引き継がれ、普天間基地返還に伴う代替基地の候補地とされた名護市では
市民投票が行われて、基地のない平和な島を求める県民、市民の意志を内外にはっき
りと示しました。

 あの時の県民大会で壇上に立ち、私たちと心を一つにしていたはずの稲嶺恵一氏が
県知事に就任するや、県民ではなく日米両政府と一体となって、基地の「返還」とは
名ばかりの県内移設=老朽施設の近代化、再編・強化の片棒を担いでいることに、私
たちは激しい怒りと大きな悲しみを感じずにはいられません。

 「SACO合意」と称する県内移設の動きは県民どうしを敵対させ、候補地とされた地
域住民の間に楔を打ち込み、耐え難い苦痛をもたらしました。政府の総力をあげた圧
力や妨害にも屈せず、血のにじむような苦労の結果、名護市民が示した「基地ノー」
の意志がその苦痛を終わらせるかに見えたのもつかの間、稲嶺県政によって移設候補
地は県内各地に広がり、より多くの県民を新たな苦しみと争いの中に追い込もうとし
ています。誰もが予想しなかった二○○○年サミットの沖縄開催が、サミットを利用
して県内移設を押しつけようとするものであることは、今や誰の目にも明らかです。

 半世紀以上にわたって宜野湾市民を苦しめてきた普天間基地は一刻も早く撤去すべ
きです。市民の我慢は限界に来ています。同様に、どこに持っていっても危険な基地
を何がなんでもこの小さい鳥のどこかに移設しようという日米政府の意図にのせられ
て、県民どうしが誘致派、反対派に対立させられ、争わされているこの状況も、もう
我慢の限界に来ています。
 
 コバルト・ブルーとエメラルド・グリーンに輝くサンゴの海に囲まれ、緑したたる
亜熱帯の森を抱えたこの美しい島を私たちはこよなく愛しています。豊かな自然に育
まれたいのちあふれる島、文化の香り高い島を私たちは子どもたち、孫たちに引き継
いでいきたいと願っています。私たちにとって危険で、破壊的であるばかりでなく、
銃口の先の人々を殺し、生活基盤を破壊する基地は、私たちの願いを真っ向から踏み
にじるものです。

 沖縄の島々のどこにも新たな基地はいりません。普天間基地をただちに宜野湾市民
に返還し、この島の外に、県外に持っていくことを強く要請します。
 (心に届け女たちの声ネットワーク〉
 

 宜野湾からの問題提起

 「県外移設」という言葉にギョッとされた向きもあるだろう。現時点で、これはま
だ公に出されてはいない。文章を書いたのは私である。といっても、もちろん個人的
なものではなく、みんなで論議した内容を私が文章化したものだ。「心に届け女たち
の声ネットワーク」(以下、「女たちの声ネット」)は、新たな基地建設にはっきり
と「ノー」の意志を示した一昨年の名護市民投票の結果を裏切って比嘉鉄也・前名護
市長が基地受け入れを表明したことに憤った女たちが、名護をはじめ県内各地の女性
グループを網羅して結成したネットワークである。大田昌秀・前知事に直接会って県
内移設反対の決断を引き出したり、百人以上の女たちが「東京行動」を行って政府や
都民に訴えたことは、この連載の中でも報告した。

 ここ一年ばかりはそれぞれの運動に戻っていた女たちが、再び一堂に会して語し合
いを始めたのは、小休止状態だった普天間基地の県内移設問題がサミットがらみで急
速に動き出したからだ。「基地問題が「解決」(!)しなければ沖縄(サミット)に
は行きたくない」とのたまったというクリントン米大統領の意を受付て、日本政府と
沖縄県当局は「年内決着」をめざすという。この時期に自分たちに何ができるか相談
しようと、女たちは宜野湾から、名護から、基地の誘致運動と反対運動が同時に起こ
っている与勝(与那城・勝連)から、また那覇や南部から集まったのだった。

 「今や『県外移設』をはっきりと打ち出すべき時期だ」と口火を切ったのは宜野湾
の女たちだった。日米間で合意された普天間基地返還が、県内移設条件付きが仇にな
って三年以上たっても見通しが立たないことに苛立つ宜野湾市民の気持ちを見透かす
ように、これまで「早期返還」に反対していた自民党が「早期返還」と言い出した。
彼らの言う「早期返還」とは、すなわち「県内移設」の推進である。

 選挙の時も市長になってからも「県内移設反対」の姿勢を守ってきた比嘉盛光・宜
野湾市長に揺さぶりをかけようと、自民党を中心とする市議会野党は県内移設容認の
決議案を議会に提出し、夜を徹した大混乱の審議のあげく、賛否同数、議長採決で採
択した。市長の姿勢が容認へと微妙に傾く中で、これまで基地に反対する側の言葉だ
った「返還」がかすめ取られ、「早期返還・県内移設」とセットで使われ、それが一
定の市民権を得つつあることに、宜野湾の女たちは大きな危機感を抱いていた。「そ
れに対して『県内移設反対』ではたたかえない」「「県内移設反対」と言うと普天間
基地の固定化と受け取られ、市民の共感が得られない」
 

 「県外移設」をめぐって

 この問題提起を受けて論議が始まった。

 何としても沖縄の中に基地を封じ込めようとする日米政府に対して、沖縄の外へ持
って行ってくれ、と言うのは当然。
 基地はなくすべきものであって、どこであろうと「移設」すべきものではない。
 自分たちの痛みをよそに転嫁したくないと思ってきたが、それでは沖縄の状況は全
然変わらない。本土の沖縄への関心は急速に冷めている。
 「ショック療法」として「県外移設」を言うことは有効。ドキッとした人は考えて
くれる。
 「移設」と言うと、基地を認めていることになる。「無条件返還」「全面撤去」で
いいのではないか。
 それも、「県内移設反対」と同様にこれまでさんざん言ってきた。現実味に乏しい
し使い古されて衝撃力がない。
 「県外移設」は沖縄の人のエゴと受け取られ、孤立してしまうのではないか。
 それは逆。全国の人々に自分たちの問題として考えてほしいから言うのであって、
それは必ず受け止めてもらえる。私は信頼している。
 「県外移設」と言っても、本土へ持って行けと言っているわけではない。沖縄には
もうこれ以上造らせないということであって、できれば本国に持ち帰ってほしい。
 私は「本土移設」を言ってもいいと思う。日米安保は必要と言いながら、基地は引
き受けたくないという日本人こそ、わがままだ。

   …………

 以上は、真夜中まで何度も何度も論議を重ねた中で出された意見や思いのごくごく
一部である。論議を元に文章をつくることになった私は、「県外移設」とワープロで
打つ時、思わず手が震えた。越えてはならない一線を越えてしまったのかもしれない
という気もした。

 前記の文章を提案して、また論議した。その次の会合で、私は前のものにさらに次
の文章をつけ加えて出した。
 

 もとより私たちは、県内のみならず、この地球上からすべての軍事基地および軍隊
を一日も早くなくしたいと願っています。そして、「県外移設」という表現が「本土
移設」と受け取られたり、基地を認めるものだと誤解されるかもしれないことも、ま
た、これまでに「本土移設」された米軍基地が、沖縄県民の負担を減らすのではなく
、いっそうの基地機能強化・拡大と移設先住民の苦痛をもたらしたことも知っていま
す。

 しかしながら、私たちのあずかり知らないところで決められた日米安保条約に基づ
いて全国の米軍基地の七五パーセントが半世紀以上も沖縄に固定化され、いままた、
私たちのまったく合意していない「SACO合意」なるものによって、何としても沖縄県
内に基地を押し込めようという日米政府からの締めつけがますます強まる中で、私た
ちはぎりぎりの叫びとして「県外移設」の声をあげました。それは、この島々のどこ
にも新たな基地は絶対に作らせないという私たちの強い決意の表明であると同時に、
県外の方々に、この問題を自らのこととして考えてほしいという呼ぴかけでもありま
す。全国の全世界の人々がそれぞれ自分たちの地域に軍事基地はいらないと押し返す
なら、地球上から基地も軍隊もなくしていくことができるでしょう。私たちの叫ぴは
その第一歩なのです。

 気持ちはみんな同じ

 女たちの声ネットの構成団体の一つである「基地・軍隊を許さない行動する女たち
の会」は、最後まで「県外移設」に反対した。文章の中身については共感するが、「
県外移設」という言葉はどうしても受け入れられないという。九五年の米兵による少
女暴行事件以来、基地および軍隊がもたらす女性や子供への人権侵害に一貫して反対
し、国際的なネットワークを確実につくりあげてきている「女たちの会」にとってそ
れは当然の意見だと、他の人々もうなずいた。「女たちの会」から文章の対案も出し
てもらった。しかし結局は、私の書いたもののほうがみんなの気持ちを表していると
いうことになった。平行線の論議を長時間続けたあと、今回の文章に関しては「女た
ちの会」は女たちの声ネットから抜け、それ以外のグループで出すことになった。も
ちろん、次の行動では合意できるならまた一緒にやるし、おたがいに足りないところ
を補いあおうと確認した上でのことだ。

 どんなに論議が白熱してもケンカにならないところは、女たちの良さかもしれない
。というより、やり方は違っても、気持ちはみん同じだというのがおたがいにわかる
からだろう。「県外移設」について最後まで意見は合わなかったけれど、「女たちの
会」の高里鈴代さんが現在の沖縄を、今まさに、孤立無援の中で強姦されそうになっ
ている女性に例えた表現が忘れられない。ナイフを突きつけられて、「自分で脱ぐか
、さもなくばこのナイフで服を引き裂くぞ」と脅されている女。もちろん、脱ぐのも
脱がされるのもイヤに決まっている。しかし、命を失いたくなければ自分で脱ぐしか
ない。「今の沖縄はそこまで追い込まれているのかもしれないと私も思う」と彼女は
言ったのだ。
 

 ためらいつつ、ためらいつつ

 「女たちの会」が抜けて文章はすんなり決まるのかと思いきや、そうはならなかっ
た。出入り自由の会だから、前回来なかった人が来てまた同じ議論が蒸し返されたり
、「あれからいろいろ考えたけどね……」と、前回の自分の意見と逆の意見を言う人
がいたり、夜も眠れないほど悩んだという人もいた。論議の中で出た一見相反する意
見や思いのどれもが私のそれでもあるように、みんなも私と同じく行きつ戻りつして
いるのがわかった。

 ほんとうはこんなことをしている場合ではないのだ。文章をつくったのは、宜野湾
市や県内移設の候補地にあげられている市町村や沖縄県に対して要請行動をするため
であり、私たちの思いを多くの人々に知らせるためだ。内部で論議だけしていて行動
ができないのでは、何もやっていないのと同じではないか。せめて、早くチラシにし
て撤きたいと焦りも出てきた。もう一度だけ、もっといい表現がないか、それぞれが
考えてこようということになっている。

 ためらいつつ、ためらいつつ、やはり「県外移設」を言おうと、いま私は思ってい
る。問違っているかもしれないし、これからも思い煩うことだろう。しかしながら、
沖縄にこれだけの基地を居座らせ、人々の意に反してますます強化しようとしている
のは誰かを考えると、私は、自分が沖縄に住むヤマトウンチュであることを思い出さ
ないわけにはいかない(普段は忘れていることも多いのだが)。

 宜野湾や名護の女たちがなぜこんなに悩まなければならないのか。基地を持ってき
たのも持ってこようとしているのも彼女たちではない。沖縄の米軍基地をなくすこと
は沖縄だけでできることではない。全国の人々がほんとうに自分のこととして考えな
ければ基地はなくせないのだ。

 「県外移設」という言葉は県外に住むあなたへのラブコールだ。私はあなたにボー
ルを投げる。しっかりと受け止めてほしいと願って。沖縄から投げられたボールをあ
なたはどこへ投げるのだろう。まさか沖縄へ投げ返しはすまい。「国外」ヘ、アメリ
カヘ?一緒に押し出そう。あなたも私たちと同じように悩むだろうか。その時には一
緒に悩みたいと思う。
         (九九年一〇月七日)

======================= 転載ここまで ==================================
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 MARUYAMA K.  kaymaru@jca.apc.org
 2GO GREEN (JCA-NET)
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