98年7月24日に三沢基地で起きたF16戦闘機炎上事故の報告書に関する、今年
9月14日の三沢市議による記者発表に「誤りがある」として、第35戦闘航空団司令
官が、9月24日、三沢市議会議長あてに文書を送付し、議長はそのまま、同市議に渡
しました。
これに対し、市議は「真偽をあきらかにしたい」と公開質問状を送り、10月8日回
答を得ました。しかし回答の内容が不明瞭だったため、10月13日に再度質問状を提
出。 そして今回、その理由も不明なまま回答を拒否するとの連絡があり、市議は11
月1日抗議文を提出。
回答のなかで、「最も重要なことは、私供が学校を仮想標的にするような訓練を実施
することはないという事実」を強調していましたが、否定したのが「学校」なのか、
「仮想標的」なのか。再質問状でも指摘していますが、回答では上ノ国町上空のポイン
トを「特定の目標」としています。単なる爆弾を投下するだけの「標的」以外の目標で
あったという意味にもとれるわけです。
いずれにしてもこの間にも、戦闘機の低空飛行訓練は続けられています。
政府では、米軍の飛行訓練は、他国と比べても「我が国にとって特段不利な形になっ
ているとは考えていない」し、その飛行ル−トについても、「詳細等は、米軍の運用に
かかわる問題であり、これらを明らかにするよう米国に求める考えはない」とのこと。
そして、軍隊の安全のために「地元住民への影響軽減のための具体的措置」をとるこ
とを米国に約束しています。
三沢基地周辺の住民は毎日100ホン以上の騒音被害にあっています。
その「航空機騒音対策」のひとつの措置として、中学校を移転させました。落成式に
は、仙台施設局の施設部長が出席しています。これらの措置は北海道などの軍事演習場
周辺でなされていますが、軍隊に追い立てられ、建てられた新校舎に送り出さなければ
ならない保護者、校門をくぐる生徒や教員はどんな思いでしょうか。
以下、三沢市議の抗議文
−−−−−−−−−−−−−−
1999年11月1日
第35戦闘航空団司令官
スティーヴン G ウッド 様
三沢市議 伊藤裕希(印)
三沢市*****
TEL/FAX **********
<抗議文>
米軍三沢報道部を通じて10月27日、米軍側では私の再質問状への再回答を拒否す
る旨を最終的に確認しました。
肝心の質問に何ら答えず、その理由も明らかにせず、再回答を拒否したことに私はあ
なたに大なる不信と怒りをもって抗議の意志を表明します。
私はアメリカという国は議論を大切にする国だと理解してきました。今回の問題はそ
もそもあなたが私を名指しで公的機関に中傷したのに端を発しています。
議論をしかけておきながら、途中で議論から逃げるのを日本では「卑怯者」と言いま
す。
今合衆国で進められている大統領予備選で、もし候補者が相手に対する中傷を「だっ
てそうに違いないから」というだけで議論に応じなければ、どんな判定を米国民から受
けるかは、火を見るより明らかではないでしょうか。
(A) そもそも今回の件は、「三沢市議会の伊藤裕希議員が発表した内容の誤りを正
したい」とのあなたの9月24日付文書から始まりました。
私が名指しで批判された以上、批判される覚えがない私としては、自らの見解を明ら
かにし、己の名誉回復を図ろうとするのは当然のことです。
その手段としてあなた宛に「公開質問状」を出し、その回答は得ましたが、肝心の
「学校仮想標的」の件はあいまいであり、意図的にか質問に答えない姿勢に終始しまし
た。私としては当然のことながらな得できず、再質問状を提出したわけです。
これに対する回答を拒否すると言うことは、特段の理由がない以上、「小学校は仮想
標的だった」と自ら認めたも同然と理解しますが、異議はありませんね。
具体的には
@私が発表したとされる「内容の誤り」の具体的根拠を示せなかった。
A△マークの「特定の目標」は攻撃目標ではないか、に何ら答えられない。
ということが明らかになりました。つまりこのように、答えられないということが
「答」であり、私の発表には誤りはなく、攻撃目標の一つが小学校だったと理解するこ
とに異存はありませんね。
米軍の飛行隊のなかには、ダム爆撃作戦の貫徹を記念して「ダムバスターズ」と呼ば
れる飛行隊があると聞いています。もしあなたが今回の議論から逃げるならば、私を含
めた多くの日本人はあなた方「第35戦闘航空団」を「School bomber」として末永く
記憶にとどめるでしょう。(いっそ配下のF16のティルコードを「WW」から「S
B」に改めたら、との声も出てくるかもしれません。)
(B) さて、この問題は今や私とあなたの関係にとどまらず、日本国内の大きな問題
に発展しつつあります。
さる10月15日には「渉外関係主要都道県知事連絡協議会」(14自治体)がモギ
対地攻撃訓練の中止を求め、さらには10月27日、「北海道東北地方知事会議」(新
潟県含む8自治体)が改めて低空飛行訓練の中止を求めていることからもおわかりのこ
とと思います。
今、あなた方にとってより肝心なことは、これら日本国内の切実な住民の声にどこま
で応えるか否かです。1998年2月に起きたイタリアでの米海兵隊低空飛行訓練によ
る20人死亡のゴンドラ事故が、いつおきても不思議ではないのが日本国内の実態で
す。
私の再質問を無視するだけならまだしも、これらの切実な声もあなた方が無視するよ
うなら私や関係自治体はもちろん、多くの日本国民の不信と怒りを増幅させるだけでな
く、イタリア事故以上の大惨事は不可避であることを最後に申し添えておきます。
このような現状を許しているわが日本政府の情けない政策を根底から変革することが
大前提であることを承知のうえで、あなたの私に対する不誠実で傲慢な対応に腹の底か
らの不信と怒りの気持ちを消せないというのが今の正直な心境です。