太平洋の要塞沖縄では年内にも新基地を日本の費用で作る「合意」が押しつ
けられようとしていますが、似た状況の大西洋のビエケス島では全く異なった
決定が12月を期限として下されようとしています。
プエルトリコのビエケス島の米軍演習場では、現在演習場撤去を求める住民
が射爆場の一部を占拠して使用不能になっています。演習場を他に移転するか、
なんらかの妥協策を打ち出すか、ペンタゴンの特別諮問チームは長官にこのほ
ど勧告書を提出しました。
18日に出されたこの報告書
REPORT TO THE SECRETARY OF DEFENSE OF THE SPECIAL PANEL ON MILITARY
OPERATIONS ON VIEQUES
が
http://www.defenselink.mil/news/Oct1999/viq_101899.html
にあります。
長ったらしくて結論が何なのか実は分かりにくいのですが、国防総省のニュ
ースリリースやペンタゴンでのブリーフィング
DoD News Briefing
Kenneth H. Bacon, ASD PA
Tuesday, October 19, 1999 - 1:30 p.m.
http://www.defenselink.mil/news/#BRIEFINGS
などによって一言でまとめると、「海軍はビエケスでの演習を5年の移行期間
を経て終了する。」ということです。日本流に言えば米政府にとって「苦渋の
決断」ということですが、政府はプエルトリコの代表者や海軍との調整を経て、
大統領が12月1日までに決断を下さなければなりません。
基地反対派からいうと、5年は辛抱せよというわけでプエルトリコの現在の
世論ではこれは簡単に受け入れられそうもありません。しかもよく読むと「5
年間で代替地を見つければ」という条件付きですので、それが不可能な場合
(海軍は不可能だといっている)やっぱり居すわり続けるわけです。
結局はこの5年間を「鎮静期間」として、世論が納まるのを待つという作戦
のようです。というのも、実は20年前にも下院の調査委員会が、「ビエケス
の代替地を見つけるべき」という勧告を行っているのです。これはもちろん実
行されませんでした。
かのヒラリー夫人はビエケス基地からの「即時完全撤退」を主張しているよ
うですが、これは彼女が上院議員に立候補したいニューヨーク州でプエルトリ
コ系の住民が多いためそれを当て込んでいるわけです。しかし動機はともあれ、
大統領に平手打ちを食わせて命令を出せる人は彼女以外にはいないわけで、
「将を射んと欲っせば」ではないですが、彼女に直訴するというのは一つの方
法です。彼女の電子メールアドレスをご存じの方はないでしょうか。
懐柔策とは言え、同時期に"deadline"を迎える普天間移転問題と比べると、
米政府の「低姿勢」は明らかです。沖縄の場合は稲嶺知事の出した「15年間
の期限付き」の基地受け入れさえ、防衛庁は「アメリカが納得しない」として
完全に拒否しているのですから。
可能性としてはプエルトリコの基地から撤退できるというのですから、在沖
米軍基地の撤去も実は可能なわけです。日本の政治家が信念を持ってこの問題
を米側にぶつけない、その根性のなさが日本の悲劇の原因でしょう。
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青木雅彦
btree@pop06.odn.ne.jp
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