現職制服組によると、日本の方針として戦時にはインターネットは禁止する
とのことなので、可能なうちにMLに投稿しておきます。中味から考えて完全な
ガセではないという判断からです。
今週号の「週刊現代」(10/23号）に「スクープ 幕僚幹部が極秘建白！
『自衛隊法改正要求書』をスッパ抜く」という記事があります。制服組の１佐
から３佐（陸海空の幕僚部所属）と地方の佐官級の十数人がまとめた「有事法
制研究」、もう少し具体的に言うと、これまで政府が研究すると言ってきたが
公表されていない「所轄官庁が明確でない」緊急事態規定（いわゆる有事研究
の第3分類）を、かくすべきだという具体的提言です。
１９６３年に暴露された「三矢研究」と似ていますが、こちらはもう少しメ
ンバーも小規模で「私的な」性格のもののようです。つまり防衛庁「背広組」
の指示を受けたわけでなく、若手将校？の「決起」という雰囲気です。この記
事では、文書の紹介だけでなく、これを作成したメンバー（自衛隊幕僚）２人
にもインタビューしています。
防衛庁の公式の有事法制研究は、三つに分類されており以下のようになって
います。
分類 対象 「研究」結果
第１分類 防衛庁所管の法律 ８１年中間報告公表
第２分類 他省庁所管の法律 ８４年中間報告公表
第３分類 省庁が明確でない法令 公表なし
第１分類は自衛隊法など、第２分類は道路交通法などですが、第３分類は住
民の「避難」などを取り扱うためにいわば「戒厳」的な規定に近いものがどう
しても出てくる。また他省庁を防衛庁の「統制」下に置くため、調整ができず
先送りになっています。
この「建白書」？はそれに業を煮やした制服組が、この「有事法制研究」に
ついて改正事項を列挙したものです。「現代」誌の報道では、「第３分類」に
ついて以下のような項目が上がっている。
（1）部隊の移動・輸送
（2）電波使用の規制
（3）船舶運航統制
（4）防衛上の特定水域設定
（5）気象情報管制
（6）拿捕した船舶・搭載物件の取扱い
上の項目について、これを作成した自衛官「B氏」がインタビューで「解
説」しているところによると、例えば（２）に関して「作戦上で支障をきたす
恐れがあるので、携帯電話は発信停止。インターネットも敵側が利用する可能
性があるので使用禁止です」。
（３）では、「民間の船は、釣り舟を含めて自衛隊の運行統制に入ります」。
（５）では、「有事には天気予報の公表はいっさい禁止です。生活は不自由に
なるでしょうが、ガマンしてもらうしかありません」とのこと。
「他省庁との調整」どころか、ご覧のように中味はいわば戒厳令なので、実
施するには改憲どころかクーデターが必要です。世論というより、政治家に直
訴したいということで週刊誌にリークしたのでしょう。
昔から自衛隊の制服組は、防衛庁の「内局」つまり文官の官僚に頭を押さえ
られて欲求不満だと言われてきましたが、こういうことを公にするということ
は風向きが変わったという読みがあるのでしょう。中味は「軍事的合理性」，
つまり軍隊に都合よくするとこういう要求になるという見本のようなものです
が、ホントはもっと包括的なものであるはずです。インターネットを禁止する
なら、当然報道管制は不可欠ですがそれは言っていない。軍事法廷の設置もや
らないと「軍事機密」がもれてしまう。ユル褌の「建白書」かパフォーマンス
でしょう。
日本の軍部は現代では全く政治的な力がないので、これがそのまま通ること
はありませんが、政治家の方が何しろ「真空」ですから、こういう主張がジジ
コー内部に浸透して、いくらかの時間をかけて、「文民統制」を自ら捨て去る
方向へ行く懸念は大いにあります。
何しろ野党の「リベラル」な指導者が「有事には徴兵制を」と言うので、自民
党の保守派が焦って「これじゃこちらは学徒動員とでもいわんと客を取られる」
と悔しがっているという、そんな時代ですから。
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青木雅彦
btree@pop06.odn.ne.jp
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