Date: Fri, 24 Sep 1999 23:15:39 +0900
From: Aoki Masahiko <btree@pop06.odn.ne.jp>
To: aml <aml@jca.ax.apc.org>, keystone M <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 1908] プエルトリコと沖縄米軍基地
MIME-Version: 1.0
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X-Sequence: keystone 1908
Precedence: bulk
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

 プエルトリコのVieques島の米軍基地問題ですが、本当は8月いっぱいに大統領
の諮問機関がこの基地をどうするか(代替基地に移すかなど)の最終報告を出す
はずでしたが、遅れに遅れています。
 今月22日にこの問題に関する議会の公聴会が開かれました。朝日新聞が次の
ように伝えています。
> 下院の軍事委員会でブイヤー委員(共和党)が「もし米国が自国内の射爆場を
>単に使いたくないという理由で閉鎖したとしたら、外国、とくに沖縄を抱える日
>本にどのような影響を与えると考えているか」と質問。これに対し、証人として
>出席した大西洋海兵隊司令官のペース中将が「他の国は注意深く見ている」とし
>たうえで、「もし米国が、自国の領土内での訓練を許さないなら、(米軍が駐留
>する)他国の国民は、どうして米国はその国での訓練を許すよう求めるのかと問
>うだろう」と答え、国外への影響が大きいとの考えを示した。

 まさにそのとおりで、日本の問題として「注意深く見」たいと思ってこの公聴
会の記録を検索しましたが、とにかくこの「ペース司令官」の証言はありました
(下院軍事委員会の頁)。たぶんこれなのでしょう。
http://www.house.gov/hasc/testimony/106thcongress/99-09-22fallon-pace.htm
 まあ、中味は予想通り他に代替地はない、とビエケスの軍にとっての有用性を
強調するのみで、住民に対しては、現在反対派住民が占拠している射爆場から
「自らの安全のために」退去せよと脅迫的な要求を述べただけ。

 しかし、この記事に引用されている質疑は分かりません。そもそも質疑の部分
まで電子化されてインターネットで公開されているのでしょうか。ご存じの方は
ご教示ください。

 この証言はつまらないのですが、検索の過程で、この公聴会での別の証言を見
つけました。これは名演説で一読をお勧めします。それは、プエルトリコの
Carlos Romero-Barcelo氏の、プエルトリコ住民の立場からの証言です。
http://www.house.gov/hasc/testimony/106thcongress/99-09-22romero.htm
 氏はいわゆるresident commissioner(*註)で、まあ国会議員のようなものです。
プエルトリコの知事も経験しているそうです。

 (*註) 日本語では「駐在弁務官」などと訳されている。プエルトリコから
1名だけ選出される「下院議員」。議論には加わって委員会裁決には参加できる
が本議会での投票権を持たない。非常に変則的な制度で私もよく解ってないので、
ご存じの方は訂正してください。

 一見淡々と、しかしアメリカの恣意的な国防政策の矛盾を舌鋒鋭く指摘します。
 「プエルトリコ人は他の50の州のアメリカ人とともにすべての戦争に参加し
て戦ってきた。しかも大部分の場合、他の州よりも犠牲者の数が多かった。」と
アメリカの国防への貢献を強調した後続けて、「我々は戦争と犠牲において平等
だった。しかし平和と繁栄においては不平等だった。」と、まずこれが先制パン
チ。
 「ビエケスの必要性について海軍の力強い論証(上の証言のことー引用者)を
この公聴会でお聴きになったばかりだが、それによるとビエケスは海軍にとって
最も好都合な場所のようだが、どうも海軍が気にもとめておられないことは、そ
こがビエケスのアメリカ市民にとっては、最も不便な場所であることだ。」と痛
烈な皮肉。
 更に続けて、「コソボの市民はもはやNATOの爆撃を恐れなくてよい。しかし、
ビエケスの住民はこの57年間、年間180日の同様の爆撃にさらされてきたの
だ」と第3撃。
 「問題は海軍がビエケスで演習を継続するかどうかではない。むしろ、なぜ選
挙権を持たないアメリカ市民の一集団が、耐えざる生命の危険をもたらす軍事演
習と国防の重荷を引き受け、一方平時にはこの国の他のグループは同様の重荷を
背負うことを要求されないのかということなのだ」と本質的な問いかけをします。

 氏が強調するのは、このような状態はアメリカの民主主義の理想に反するもの
であり、「過去の幾世紀も続いた植民地主義への逆戻りである」ということです。
「私の目的は、アメリカの伝統である正義、平等、公正の精神に訴えることであ
る」。

 アメリカが恐れるのは、「基地返還ドミノ」でしょう。「戦略的に代替不可能
な」Viequesを手放すことができるとすると、沖縄の基地を維持する理由も机上の
論理になってしまいます。沖縄とビエケスはあまりにも似た立場にあります。日
本で詳しく報道されないのは、単なる不勉強なのか、それとも何か意図があるの
かと勘繰ってしまうほどです。議会記録のサーチ方法など詳しい方はご協力下さ
い。
 

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   青木雅彦
 btree@pop06.odn.ne.jp
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