Date: Tue, 21 Sep 1999 18:26:34 +0900
From: Aoki Masahiko <btree@pop06.odn.ne.jp>
To: keystone M <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 1899] 事態法、基地協議会への説明(下)
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 質疑の部分の後半です。

−−−−−−−−−以下(中)からの続き−−−−−−−−−−−−−−−−
○協力要請の集中化
 問「基地のある地方公共団体は国からの協力要請が集中するのではないかと危
惧する。 国防は国民全体で担うべきであるから、協力要請の配分について、基
地所在の地方公共団体に集中しないよう配慮すべきと考えるがどうか。」
(答)全ての地域に平等にというわけにはいかないと思うが、特定の地域に協力
要請が集中することは想定していない。

○協力要請と許可申請手続きとの関係
 問「許可等に対する申請手続きと同時期に関係行政機関の長から協力要請があ
ることになっているが、市内部の事務処理上、少なくとも協力要請が先行される
べきと考えるがどうか。」
(答)通常は申請手続きと同時期に、協力要請がされるが、場合によっては、申
請手続きが先行し、協力要請が後追いになる可能性はある。

○協力要請時期と準備期間
 問「協力要請の時期と市町村の準備期間がどの程度頂けるのか。要請があって
からどれぐらいの期間で回答すればよいか。」
(答)期間については状況次第としか申上げられない。一般論としての答えは出
来ない。
 ただ、基本計画を作る前の段階からできる限り実質的な調整は始めさせていた
だく。
 基本計画が策定された後の段階で、具体的な協力要請が何日後に行われるのか
は、個々の事態によっても、個々の協力要請の内容によっても違ってくる。それ
を受けて何日以内に対応するのかは、それぞれの法令の中での標準処理期間、ど
の程度の判断を要する内容なのかといったことも含めて決まるのではないか。
問「協力要請が数市に及んだ場合、情報交換を事前に行なって差し支えないのか。」
(答)情報交換しないで下さいという理由は全くない。適宜、情報交換しながら
決められてよいと思う。」

○協力要請への優先対応の度合
 問「協力要請時に、市民、市が使用していた場合にどこまで拒否できるのか。
要請をどこまで優先しなければいけないのか。」
(答)必ず優先しなければならないということではない。
問「地方公共団体の救急澱送能力は、市民の救急搬送を対象として配車されてい
る。米軍・自衛隊等の傷病者を搬送する能力には限界があり、そのことを理由に
協力要請を拒否することは可能と思うが、どうか。」
(答)市民の搬送に不当な影響が出るような場合、拒否できる。

○条例等に基づく協力拒否の可否
 問「基本計画に基づく協力要請について、法律・条例で定める範囲内で協力す
るが、条例等に整合しない場合は拒否できるか。」
(答)現行の法令・条例に基づいて、協力要請が整合しない場合は拒否できる。
問「条例に違反している協力要請があった場合は拒否できるということか。」
(答)国が全く条例に反している協力要請を行うことはできる限り避けなければ
いけない、あってはならないことだと思うが、当然ながら現行法令の中で権限を
行使していただくことであるから、万一そういうことがあれば、「協力の求め」
を踏まえてなされた協力申請が条例に反している場合は拒否される。
 補足として、その条例が合法的なことが大前提である。法令に反している条例
を作られていて、その条例に反しているから協力できないということであれば、
正当な拒否理由にはならない。

○市議会の反対による協力拒否の可否
 問「住民の代表である市議会が、周辺事態安全確保法に対して、反対の立場を
取っている場合は、それが協力拒否の正当な理由となるか。」
(答)協力の求めがあった場合は、法令に従った権限の適切な行使、法的な問題
と政治的な問題であり、市議会の反対、住民の反対が強いなどとは別問題である。

 典型的な例として、法令上の条文として、一定の要件を満たした場合には許可
を与えなければいけない、という規定がある。協力の求めがあって、要件を満た
した許可申請があった場合に、市議会が反対している、住民が反対しているため、
許可をしないということは、法令に違反していることになる。

○制裁措置
 問「制裁措置に関する質問記述で、本法以外の個別法令に違反する場合は、停
止・変更命令等の措置をとることができる旨の規定が置かれているケースがある
と記述されている。そのケースについてわかる範囲で全て提示されたい。」
(答)港湾法の停止・変更命令、地方自治法上の助言・勧告、是正措置要求等で
ある。

○周辺事態に伴う地方自治体の作業量等増加に伴う財政補填
問「協力要請への対応、市民・企業からの相談・苦情など、多大の対応を迫られ
ると想像される。このことに関する自治体負担に関して、法第9条第3項の対象に
ならないと考えられるので、国としてどんな対応を考えておられるか。」
(答)人件費・超過勤務手当も損失の範囲から排除しているわけではない。「協
力要請」への対応で協力と相当因果関係のある損失ならば、第9条第3項の対象に
なる場合もある。
 第9条第3項の対象外の負担については、財源上の措置が考えられる場合もある
だろう。
問「給水時における、水代、それに伴う人件費等の諸経費の請求は何処に請求す
ればよいか。」
(答)契約上の問題で、水代・人件費・諸経費は契約相手に対価として請求する
ものである。
問「救急機送の協力要請に応じて生じる地方公共団体の負担(燃料代、時間外手
当等)への国の財政措置はあるのか。」
(答)大量になれば自治体への対価・負担について検討すべきと考えている。
問「国の要請により地方公共団体が避難民を受け入れた場合、受入れに関する地
方公共団体の出費については、何らかの財政措置を考えているのか。」
(答)避難民が病院にかかる場合、実際には診察代を支払うことが出来ないこと
が想定される。こういうような場合、どういった財政措置を講じるべきか、今後、
検討課題とさせていただく。
問「公立病院に定員を超える患者を収容すれば、当然、医師や看護婦が不足し、
一般患者へのサービスが低下する。この場合、サービス低下を防ぐために臨時的
に雇用した者への人件費は損害となるのか。」
(答)第 9条第2項の「協力の依頼」であり、病院側の判断で決定されることから、
一般患者へのサービスを低下させてまで、協力をする義務が生じるわけではない。
 なお、「協力の依頼」を行う段階で、臨時的に人を雇用することも含めて相談
することは考えうる。

○損害の補償
 問「地位協定により米軍に提供することを約束している施設に対し、第9条第3
項による損金の補填はどうなるのか。」
(答)第9条第3項は、第1項・第2項に基づいて「協力の求め」「協力の依頼」さ
れた国以外の者が、この協力により損失を受けた場合には、その損失に関して必
要な財政上の措置を講じるという規定になっている。そもそも地位協定に基づく
提供施設に関していえば、もともと米軍が使用する権限を正当に保有している。
こうした施設の使用に関して第9条第1項・第2項に基づいて「協力を求め」「協力
を依頼」することは考えにくい。従って、第9条第3項に基づいて、損失の補填が
図られるケースは考えにくい。
問「港湾・空港について、長期間の使用による経済的な影響には、第9条第3項の
適用は考えられるのか。
(答)港湾・空港について、解説(案)の18ページに長期間にわたって独占的に
使用することは想定していないということである。さらに申し上げれば、地方公
共団体が権限を行使される段階で、経済社会上の重大な損失がないように権限を
行使されるんだろうということである。そういう意味で、長期間の使用による損
失が第9条第3項の問題になってくることは考えづらい。

○協力要請を受け入れた場合の命令権者
 問「市長が「協力義務」により、協力要請を受け入れ、職員の動員が発生した
場合、職員への命令権者は誰か。」
(答)第1項であれば通常の権限の行使を、第 2項であれば通常の契約である輪送
や患者の搬送であり、命令系統は通常の命令系統である。

○周辺事整安全確保法第9条の解説(案)の位置づけ
 問「第9条第1項、第2項の「協力要請」にかかる運用として、「解説書」という
手法をとられようとしているが、第12条で政令の施行を予定してある。
 かかる考え方を明確にする為に政令において「用語の定義」で規定すべきでは
ないか。」
(答)周辺事態安全確保法第9条の解説(案)は、法律の条文の解釈。通常、法律
の解釈について政令で規定することはない。
問「解説書作成に当たっては、都道府県並びに市町村の実際の現場担当の意見を
反映することが必要と思われるので、早急に項目ごとの意見聴取を実施すべきと
考える。今回の解説書の発表後も、引き続き地方公共団体から意見聴取を行う予
定はあるか。」
(答)現場の意見をいただいていきたい。一定の期限を設定して、それ以降は意
見を聴かないということはない。引き続き、いろいろな場で意見交換・情報交換
をしていきたい。
問「マニュアルについて全国から出ている要望についてまとめていただけるのか。」
(答)この解説(案)については、さらなる解説・補足等の要望、意見があれば
取りまとめてよりよいものにしていきたい。
問「国がマニュアルを出したので、地方公共団体はどのような対応策を作るのか
と、報道機関より問合せがある。
 例えば、朝鮮半島で何か起きた時に邦人を救出する。そうした場合に、ホテル
や病院はどうするのかといった、具体的な話をしていただきたい。
 公共団体と国との連絡体制について、基本計画を策定する時に地方の意見を十
分聴くとなっているが、具体的に何処が窓口で誰と連緒を取るのか。また、公共
団体に協力要請した時に、国民及び市民に対する広報は何処が責任をもって行う
のか。
 国と公共団体との事務分担をもう少し詳細に示していただきたい。
 港湾の許可申請がなされた場合に、公共団体としては許可するだけで終わるの
かどうか。港に船舶が入港した場合に、どういう使用がされるのか。例えば、避
難民が来た場合、国が全面的に責任を持って対応するのか、現地に来て対応する
のか。地方公共団体の長が協力をしなければならないのか。
 シミュレーションは非常に難しいであろうが、ある程度のものがないと計画を
立てることが出来ない。もう少し具体的なマニュアル作りを国と公共団体が一緒
になって作る必要があるのではないかと思う。」
(答)具体的なということとなると、現時点で何らかの周辺事態が差し迫ってい
る状況ではないので、想像の世界にならざるを得ない。具体的な話をしていくの
は、どうしても基本計画を作る段階で、個々の事態に即してやっていく。具体的
なシミュレーション、予行演習等を行うことは検討しないといけないのかなと思
っている。
 ただ、何処かの国を想定してシナリオを書くと、外交上の問題になるため難し
い部分もあるが、できるだけ具体的に議論ができるやり方を引続き考えていく。

○基本計画の策定について
 問「基本計画の策定にあたって、関係行政機関の意見を聴くのか。」
(答)全省庁の全大臣の参加する閣議で決定する。関係行政機関を含めて政府の
中では一致したものとして基本計画を策定する。
問「基本計画が閣議決定されると、既に施行されている他法令・政令等と整合し
ない場合が想定される。このような場合、基本計画が優先すると考えるが如何か。
 地方自治法第14条では「法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関
し、条例を制定することができる。」とされているが、基本計画の閣議決定によ
り、基本計画の内容次第では、この条例が法令違反となることが懸念されるが如
何か。」
(答)基本計画とは、国が国以外の者に対してどういう「協力の求め」「協力の
依頼」をするのかという、概要を閣議決定することであるため、上記のようなこ
とは想定されない。

○協力の種類及び内容
 問「基本計画策定後に、関係行政機関の長の協力要請が行われ、その段階で具
体的に詳細(施設の使用期間、使用範囲等)が明らかにされることになっている
が、その具体的な内容が分らなければ、基本計画の策定にあたって行われる自治
体との調整の時に、自治体として判断しにくいと思うがどうか。」
(答)例えば公共施設の使用について、基本計画を策定する段階で施設を管理す
る者との間で、どの時期なら施設使用が可能かなど、情報交換も含めて調整をさ
せていただき、基本計画を策定、その後に具体的な協力要請をしていく。

○基本計画の変更
 問「基本計画を変更する場合、必要に応じて所要の連絡をするとされているが、
基本計画の変更は当初の策定と同様に、重要な手続きと考えるが、再度地方公共
団体等に対して協力要請を行うのか。例えば、施設の貸与等、なし崩し的に延長
されては困るが、如何お考えか。」
(答)「協力の求め」による施設の使用許可であれば、特定の使用期間に限って
許可を行う。
 期間が過ぎれば再度申請し、あらためてその時点で判断する。従って、基本計
画が変更されることによって施設の使用期間が変わる等といったことはない。

○情報公開、情報提供
 問「的確な情報提供を当該地方公共団体に行うよう、国に要請する。」
(答)要望があったことを踏まえて考えていきたい。
問「必要な期間、公開を控えてもらうこともあるとしているが、その期間が経過
すれば公開してもよいと解釈してよいか。」
(答)必要な期間と言っているとおり、期間が経過すれば公開することはある。
問「情報公開で、必要な期間、公開を差し控えていただくよう、協力要請の段階
であり得るということですが、議会に対しても該当になるのかどうか確認したい。」
(答)議会に明らかにされた場合は、通常、公表が前提だと思う。公表されない
ような形にしていただきたい。
問「例えば特別委員会など秘密会で行う場合は公開しても構わないのか。」
(答)このケースについては想定してしいなかったため、断定的なことを申上げ
ることは出来ないが、考え方を申上げると、例えば米軍の弾薬等を輸送する場合、
弾薬の輸送量を一般に公開すると、米軍のオペレーション上の秘密・能力が明ら
かになるのは好ましくない。民間の輸送業者に依頼する際には、弾薬等の輸送量
について公表することは控えるよう要請する。ただ、法律上の規制を守るために、
契約者には公開する。
 秘密会に関しては、個々のケースによって異なろうが、例えば、米軍の弾薬等
の輸送量を明らかにするために秘密会で公表することは、秘密会のもともとの趣
旨とは違うのではないかと考える。

○周辺事態への対応措置
 問「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態というのが周辺事態の定
義である。 周辺事態が起こつた時に、我が国がどういう措置をとるのか、更に
米軍・米国がどういう措置をとるのか。
(答)一概に申上げることは非常に難しい。つまりどういった事態が、どういう
規模で、どういうタイミングで、どういう具合に起きたのか、ということを踏ま
えないと実際にどういうことが必要になるのか、日本として何をしなければなら
ないのか、米軍との関係でどういうニーズが出てくるのか、ということは全く変
ってくるため、あらかじめ申上げることはできない。
 米軍の基地には幾つか種類があり、日米地位協定2−1−(a)で規定されている
のは、恒常的に米軍に使用されている基地。日米地位協定2−4−(b)で規定され
ているのは、一時的に期限を区切って米軍に提供される基地。実際に2−4−(b)
に基づいて、現在、共同使用されている施設区域は3件しかない。そのうち公共用
は板付飛行場 1カ所しかない。こういった現状を考えると、周辺事態が起きたか
らといって、急激に 2−4−(b)に基づく基地提供が増えることは考えにくい。
更に、申上げると、これまで米国側から日本側に対して、将来、周辺事態が起き
た時に、特定の港湾・空港について部分的或いは全体的に、 2-4-(b)に基づい
て提供することを検討して欲しいという要請はない。

○日米防衛協力のための指針と市民生活への影響
問「新たな日米防衛協力のための指針によると、平素から日米共同の取組みを行
うとされており、特に基地のある市町村は、周辺事態における米軍機や米軍の配
置並びに自衛隊による後方支援などにより、市民生活に影響を与えることが多い
と想定されるが、どう認識されているか伺いたい。」
(答)日米防衛協力のための指針には、周辺事態が起こった場合、我が国が直接
に武力攻撃を受けた場合、米軍、自衛隊、それぞれがどのような活動をするのか
事前に平素から計画を作ること及び米軍、日本政府の部内の調整要領を規定して
いる。
 具体的な米軍機の配置、自衛隊のオペレーション等を平素から考えておくとい
うことではない。 あくまでも計画を検討、調整の要領を検討するなど、机上で
の準備であるので、具体的に市民生活に直接的な影響があることは考えにくい。

(了)
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   青木雅彦
 btree@pop06.odn.ne.jp
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