Date: Tue, 21 Sep 1999 18:26:26 +0900
From: Aoki Masahiko <btree@pop06.odn.ne.jp>
To: keystone M <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 1897] 事態法、基地協議会への説明(上)
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 成立する前には隠して、法律になってしまってから「あれは実はこういうこと
なんです」と「説明」を加えるというのが周辺事態法の怖いところです。7月以
降、政府は様々な場で自治体に対して説明会を開いていますが、考えれば考える
ほど疑問点が出てきます。

 ここではその説明会の一つ、8月5日に開かれた、全国基地協議会と防衛施設
周辺整備全国協議会の合同の説明会の記録(国がまとめて当該自治体に送付した
もの)を転載します。集まった自治体の担当者180名と言いますから、まるで
政治集会。でもかなり活発に質問が出されました。この質問を読むと、いかに国
会では審議不足であったかがよく分かります。
 すでに仲田さんが投稿の各文書と重複する部分もありますが、この文書で初め
て明らかにされること(例えば、地方議会決議は「正当」な拒否理由になるかと
いう問題)こともありますので、屋上屋にはならないと思っています。

 長いものなので、今回は三部にわけて投稿します。誤字などの訂正にご協力下
さい。なおここで言う「協力」は、周辺事態法第9条第1項の「協力の求め」では
なくて第2項の「協力の依頼」に当たります(この違いのお分かりにならない方は、
転載本文を読んでください)。

−−−−−−−−−以下転載−−−−−−−−−−−−−−−−−−

発 社 第 80 号
平成11年8月5日
全国基地協議会
 会長 横須賀市長 沢田秀男
防衛施設周辺整備全国協議会
会長 福生市長 石川彌八郎
関係市町村長
東京都知事
殿

      平成11年度全国基地周辺対策実務中央研修会
「周辺事態安全確保法第9条に関する協力内容について」の経過について(報告)

 平素、本協議会の運営につきまして、格別のご高配を賜り厚くお礼申上げます。
 さて、標記研修会において、内閣官房担当官から周辺事態安全確保法第9条に関
する協力内容について説明を聴取するとともに、関係各省庁担当官との意見交換
を行ないましたので、その経過につきまして下記のとおりご報告いたします。
 

 記
1.日時 平成11年7月16日(金)午後3時
2.会場 全国都市会館・大ホール
3.出席者 両協議会会員都市町村の担当職員 約180名
4.経過概要

[原内閣安全保障・危機管理室内閣事務官説明要旨〕

 「周辺事態安全確保法第 9条(地方公共団体・民間の協力)の解説(案)」に
ついては、全国市長会、全国基地協議会、防衛施設周辺整備全国協議会、さらに
各市町村に対しては防衛施設局・地方連絡部を通じて7月6日付で配らせていただ
いた。
 解説(案)となっているのは7月6日付でお配りしたこの資料が最終的に確定し
たものということではなく、今後、これをベースに更に意見や質問等を受け、適
宜、補足等を行い整理していくこととしているためである。
 この(案)が取れる時期は、現時点で確定的に決めている訳ではないが、周辺
事態安全確保法の施行が法律の公布から3か月以内に政令で定めるとなっており、
8月27日までに政令で確定される。この法律の施行までを一定の目安として今後の
意見交換をさせていただければと考えているが、あくまでも目安としており、短
かい期間では十分な意見交換が出来なければ、引き続き意見交換をする。
 本日は、「周辺事態安全確保法第9条(地方公共団体・民間の協力)の解説(案)」
の概要について説明をさせていただく。

1.周辺事態安全確保法第9条について・法律における規定 周辺事態安全確保法の
第9条に国以外の者による協力という規定がある。この中にさらに3つの項が設け
られている。
 第1項は、関係行政機関の長から地方公共団体の長に対して、その有する権限の
行使について協力を求めることが出来るとし、第2項では、国以外の者に対して必
要な協力を依頼することができるとしている。
 「協力を求める」となっているのが第1項、「協力を依頼」となっているのが第2
項である。
 第3項は、その協力により損失を受けた場合に財政上の措置を講ずることとして
いるものである。

・規定の基本的な趣旨
 周辺事態に際しては、まず、国として自衛隊による後方地域支援、その他とし
て国として対応措置を取って行く。そのうえで、地方自治体、民間の協力が必要
になる場面が考えられる。協力要請の方法として「協力の求め」と「協力の依頼」
と2つがある。
 「協力の求め」は、地方公共団体の長の有する権限の行使、例えは公共施設の
使用許可など、権限行使について「求め」のあった場合は、「求め」のあったこ
とを前提として、権限を適切に行使することが法的に期待される。これを「一般
的な協力義務」と呼んでいる。
 「協力の依頼」は、権限の行使ではなく、例えば人員・物資の輸送等について、
依頼を受けた者が自らの判断で契約の締結を行う。なんら協力義務を負うもので
はない。
 ここで言う国以外の者は民間の輸送事業者、民間の病院等が含まれるが、民間
だけでなく、地方公共団体がバス事業・病院事業等を営んでいる場合は、民間と
同様に輪送、患者の受入れについて「協力の依頼」をすることがある。この場合
は、相手が地方公共団体であっても第9条第1項の「協力の求め」ではなくて第2項
の「協力の依頼」になる。

・「協力の求めがあった時に拒否ができるのか」「一般的な協力義務とは何か」

 「協力の求め」があったからといって、公共施設の使用について許可を行う義
務が生じるということではない。求めがあったことを前提として現行法令の中で
権限を適切に行使していただく。例えば使用内容が施設の能力を超える場合等の
正当な理由がある場合は協力を拒むことができる。

・「協力拒否に対して制裁的措置がなされるのか」
 本法において罰則規定はなく、法令に基づく対応がなされる限り、制裁的指置
がとられることはありえない。

・「協力の依頼について拒否できるのか」
 例えば輸送と医療機関への患者の受入れ等があるが、この場合、なんら協力義
務が発生するわけではない。例えば医療機関の場合、通常の場合と同様に医療機
関側において判断していただく。
 

2.要請される協力の具体的種頸・内容
(1)地方公共団体の長に対して求める協力項目例
 ○地方公共団体の管理する港湾の施設・空港の施設使用
  競合する民間船舶、民間航空機があった場合、これを強制的に排除するとい
うことではない。ただ、調整を行うことは考えられる。場合によっては、国が直
接民間の船会社・航空会社に第9条第2項に基づいて協力の依頼を行うこともあり
得る。

 ○建物、設備等の安全を確保するための許認可
  具体的な例として消防法・建築基準法に基づく許認可が挙げられる。

 ○消防法上の救急搬送
  広い意味で人員の輸送に含まれるが、消防法上の権限の行使であるので「協
力の求め」の対象として挙げている。

(2)国以外の者に対して依頼する協力項目例
 @民間に対して依頼する項目の例  輸送・廃棄物・病床・物資の貸与・その
他を挙げている。
 A地方公共団体に対して依頼する項目の例
  人員及び物資の輸送・給水・公立の医療機関への患者の受入れ・地方公共団
体の有する物品の貸与等の項目を挙げている。

・「危険な地域への武器・弾薬の輸送を依頼することもあるのか」
 基本的には民間輸送事業者についてのことで、地方公共団体はあまり関係ない
ものであるが、地域としては基本的に我が国領域内である。公海上の輸送も排除
されるものではないが、現に戦闘行為が行われている地域又はそのおそれのある
地域への輸送を依頼することは想定していない。また、安全の確保のために政府
として万全を期していく。
 

3.協力要請のプロセス・基本計画について
 周辺事態安全確保法の全体の仕組みとして、周辺事態において政府が対応措置
を実施する場合、基本計画の中に対応措置の内容等を定めて閣議決定し、具体的
な対応措置を実施していく。
 第9条第1項・第2項に基づく「協力の求め」「協力の依頼」について、基本計画
の中に概要を定めて、法律の条文上の言葉では協力の種類・内容、協力に関する
重要事項を定めて、閣議決定した後、具体的な協力の要請を行う。

・「基本計画の策定にあたって地方公共団体等の意見を聴くのか」
 あらかじめ要請を行う相手方と情報交換、調整を行い、できる限り共通の認識
を持っておくことが非常に重要だと考えている。政府としては、平素から意見交
換・情報交換を行っていきたいと考えている。
 また、基本計画の策定段階においても、できる限り関係者の状況、意見等を反
映すべく意向を伺って調整を図っていく。
 ただ、基本計画は緊急に策定することが想定されるため、案文自体を提示し、
見ていただくことは難しい場合が多いと考える。しかし、実質的な相談はできる
限りきせていただく方針である。

・協力要請について
 条文には関係行政機関の長が協力要請を行うこととなっており、その長が具体
的にどの大臣になるのか整理している。

・「協力要請はどのような形式で行うのか」
 基本的に文書で行う。ただし、緊急的に口頭で行うこともあるが、要請後速や
かに文書で連絡する。
 

4.協力を要請された場合の対応
(1)第9条第1項に基づき協力を求められた場合 現行法令に基づき、権限を適切
に行使することから、協力を強制することではなく、正当な理由がある場合は協
力を拒むことができる。
・「許認可について協力の求めがあった場合、許認可条件の緩和や処理期間の短
縮が求められるのか」
 現行法令を超えて条件を緩和する、あるいは一定の手続き・処理を省略すると
いったことを求めるものではない。
・「公共施設の使用について、一般の使用者よりも・優先することが求められる
のか。」
 必ず米軍や自衛隊を優先して、許可をしなければならないということではない。

・「米軍による公共施設の使用について協力の求めのあった場合、これにより周
辺住民に危害が及ぶと考えられるときは、協力を拒むことのできる正当な理由が
ある場合に当たるのか。」
 米軍は、当然、我が国の公共の安全ということについては、妥当な考慮をはら
って、関係法令を尊重することになっている。周辺住民に直接危害が及ぶという
ことは想定されない。正当な理由に当たるか否かは、個々の具体的事例に即して、
関係法令に基づき判断される。
・「公共施設の使用について協力の求めのあった場合、使用期間が長期間にわた
ると考えられるが、協力を拒むことのできる正当な理由がある場合に当たるのか。」

 第 9条での施設の使用についての協力の求めは、施設の提供とは異なり、長期
間にわたって独占的に使用することは想定していない。正当な理由に当たるか否
かは、個々の具体的事例に即して、関係法令に基づき判断される。

(2)第9条第2項に基づき協力を依頼きれた場合
・「公立医療機関・民間医療機関への患者の受入れについて協力依頼のあった場
合、一般患者を排除しなければならないのか」
 協力に応じる義務が生じるわけではない。
・「公立医療機関・民間医療機関への患者の受入れについて協力依頼のあった場
合、増床しなければ対応ができない場合があると思われるが、どうしたらよいの
か」
 臨時応急に定員を超過して患者を収容する仕組みでの対応はある。

(3)その他(第1項・第2項共通)
・「協力内容について情報公開することは構わないのか」
 前提として、概要を基本計画で定め、その上で「協力の求め」「協力の依頼」
を行う。基本計画は閣議決定であるので当然公開する。具体的な「協力の求め」
「協力の依頼」をする場合、「協力の求め」「協力の依頼」を受ける者には、内
容はすべて提示する。
 「協力の求め」「協力の依頼」を受けた者が情報公開することは基本的に構わ
ない。ただ、協力の内容によっては問題がある。例えば米軍のオペレーションで、
物資の輸送の場合に、物資名・経路が事前にすべて明らかになってしまうと、治
安上の問題が生じてくる。こういった内容は必要な期間、公開を控えていただく
ことがある。協力要請の段階で依頼させていただく。
・「協力要請に応じない場合、どのように対応したらよいのか」
 できる限り応じられない理由その他の状況を連絡していただくことが期待され
る。
 

5.損失に関する財政上の措置
 通常対価が支払われるものについては、正当な対価が支払われることが前提で
ある。例えば輸送について協力をする場合は、輸送契約を締結し、通常の対価に
ついては支払う。
 損失とは通常の対価をもってしてもカバーされない特別な支出や負担のことで
ある。例えば物資の輸送については保険によっても填補されないような損失が生
じた場合に第9条第3項で財政上の措置を講じる。

・「米軍が港湾、空港を使用する場合、地位協定第5条により入港料、着陸料の支
払いが免除されている場合があるが、これは補償されるのか。」
 通常時でも防衛施設庁において、損失補償契約を締結し補償を行っている。周
辺事態においても同様の補償を行うため、第9条第3項に基づいて、別途財政上の
措置を講ずることは想定されない。

・「米軍や自衛隊の違法行為により損害が生じた場合には第9条第3項の対象とな
るか」
 例えば米軍の過失で公共施設を壊した場合でも、損害賠償の法令に基づいて損
害賠償が行われる。従って、第9条第3項に基づいて別途財政上の措置を講ずるこ
とは想定されない。
・「地方公共団体の長が自衛隊や米軍の航空機・艦船に空港・港湾の使用を認め、
この結果、民間航空機・民間船舶が欠航せざるを得なくなるような場合、欠航に
伴う航空会社・船社の損失は第9条第3項の対象となるのか」
 民間航空機・民間船舶を強制的に排除することは想定していないので、強制的
に排除されたことによる損失はない。
 調整により生ずる損失について、第9条第 3項に基づく財政上の措置を講ずるこ
とは考えられる。

・「協力の求めのなされた後、地方公共団体において、許認可事務が増加して職
員が対応に追われることとなった場合、職員の超過勤務手当は第9条第3項の対象
となるのか」
 人件費も損失の範囲から排除されるものではない。第9条第3項の対象になりう
る。
 一方、特定の人についての許認可であれば、通常手数料で回収される。この場
合は第9条第3項に該当すると想定しにくい。

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   青木雅彦
 btree@pop06.odn.ne.jp
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