[TO: aml, keystone]
島川です。
以前に話題になった「自衛隊の土地使用」の問題です。
[aml 11797][keystone 1307]
At 0:13 AM +0900 99.4.12, M.Shimakawa wrote:
> 自衛隊は「国又は地方公共団体」の、「国」の機関ですから、「平時」に
> 自衛隊基地を作るために「手続き」を踏んで時間をかければ土地収用がで
> きる、また「戦時」には、即時に(時間のかかる収用手続き等抜きに)土
> 地の「使用」ができる、ということでしょう。
> 後者は、「有事立法」必要論の場合に、敵が攻めてきても現行法では土地
> 所有者の許可がなければ塹壕も掘れないではないか法的に不備である、と
> いうような言い方でよく持ち出される論点ですが、現行自衛隊法でも民有
> 地で塹壕を掘ったり戦争をしたりすることを想定しているわけですね。
某図書館で参議院内閣委員会調査室『日米防衛協力のための指針(ガイドライン)
関係資料集』(同調査室刊 1997.11)というものを読んでいたら、防衛庁「有事
法制の研究について(昭和59年10月16日)」という文書が入っており、そこに自衛
隊の戦時の「土地使用」についての言及がありました。以下は「2
第2分類で
検討した事項と問題点の概要」の中にある、「土地使用」の項目です。
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(2)土地の使用について
部隊は、国土の利用について海岸、河川、森林などの態様に応じて「海岸法」、
「河川法」、「森林法」、「自然公園法」等の法令により、国土の保全に資する等
の観点から、一定の区域について立ち入り、木竹の伐採、土地の形状の変更等に対
する制限が設けられ、土地を使用する場合には、原則として法令で定められている
手続が必要である。
部隊があらかじめ陣地を構築するために土地を使用する場合においても、法令に
定められた許可手続に従い又は許可手続の例により行うほかなく、侵攻の態様によっ
てはそれらの手続をとるいとまがないことが考えられ、また、法令によっては「非
常災害」に際しての応急的な措置について、手続をとらなくても一定の範囲内で上
地を使用し得るとされているものもあるが、これも当たらないとされている。さら
に、構築される陣地の形態によっては、これらの法令上許可し得る範囲を超えるこ
とも考えられる。
したがって、有事に際しての自衛隊による土地の使用等については、「海岸法」
等に関して特例措置が必要であると考えられる。
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この文書の前に出ている「有事法制の研究について(昭和56年4月22日)」では、
「公共の用に供されていない土地等の通行」とか「その土地にある工作物の撤
去」についての規定が必要であると言い、「自衛隊法103条の政令に盛り込むべ
き内容について」という別紙では、「公用令書関係手続き」や、「損失保証、
実費弁償等」などが3頁にわたり列挙されています。
例示としては陣地構築を挙げていますが、「公共の用に供されていない土地」
を通行し「工作物」を撤去するというのは、翻訳すれば、戦車が民家を踏みつ
ぶして突進するというシーンのほうがリアルでしょうか。要するに、「戦時」
には「使用」の名で何でもできるということです。事後処理は日銀券の増刷で
まかなうということでしょう。
しかし、敵の陸軍が上陸してくるという冷戦期対ソ戦争型想定は、現在は昔以
上に意味はありません。冷戦期の陸自の、米軍の来援まで持ちこたえるなどと
いう勝手な演習想定などではなく、今後どういう戦時を想定しているのかが問
題ですね。やはり米軍の戦争に共同して防衛出動をかける、米軍基地を護るた
めに治安出動をかける、ついには憲法9条を廃止して「ふつうの国」になる、
ということなのでしょう。
政令というのは簡単に出せるものですし、翼賛議会であれば法律も一夜にして
ということになるでしょう。ある日、ある前夜、緊急勅令のようなものが舞い
降りる.....
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島川雅史 mshmkw@tama.or.jp
mshmkw@jca.apc.org
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